利益最大化を目的とした自動オペレーション導入とUX面での弊害
「UX(User eXperience)」=ユーザー体験とは、
主にIT企業、マーケティング業務やデザイン業務でよく聞く言葉である。
昔は似たような言葉で「ユーザビリティ」というものもあったが、
UXはそれよりも意味合いが広い。
先日とある病院で体験したことを例に今回は話をする。
①とある病院が導入していた自動予約システム
最近、妻の紹介でとある病院を受診した。予約必須の病院だった。
初診予約はネットからできて、サイトのデザイン的に
少々思うところはあったものの、簡単に予約ができた。
初診予約に必要なのは、「個人情報」「診察内容」「予約日・時間」など、
必要最低限の情報のみ。自分はPCから予約したが、スマホからも予約できるようだ。予約時間は30分刻みのスケジュール。予約完了時と予約日直前にメール通知と、予約専用サイトから自分の診察番号と予約日などの確認ができる仕様になっていた。
ここまでは一般的な自動予約システムである。
ところが問題なのはこの先だった。
②何の目的にした自動予約システムなのか
問題は受診日当日。予約した時間よりも前に病院に到着。
自動発行されるQRコードを受付に掲げることでチェックインできる。
あとは予約時間まで待合室まで待つだけ。
と思いきや、予約時間になっても呼び出されない。
多少の時間は仕方ない。ところが待てど暮らせど呼び出されない。
気づけば1時間半近く待っている。
待合室にはその後も予約患者が訪れ、中には「いつまで待たせるの?」
と受付にクレームを入れる人も。結果的に予約時間から約2時間遅れで
呼び出された。
これには流石に何のための予約なのかと疑問を持たずにはいられなかった。
③自動予約システムによって病院が解決しようとしたこと
おそらく電話予約やサイト予約の予約漏れを解消しようとしたこと。
また、自動予約システム導入によって、患者の予約ストレス軽減ができる。
さらに、予約のみの受付に絞り、予約時間を分散することで、
待合室にゆとりを持たせるという効果も期待していたのかもしれない。
ところが、「予約」という行動のUXが良くなったとしても、
病院運営がこのような状況だと、クレームにつながるのは否めない。
個人ページには、待ち時間の表示があるが、こちらの待ち時間も流動的で、
元々表示されている予約時間から伸びることもある。
問題は、予定の待ち時間よりも、実態は多く待つ必要があるという点。
今の運営方法だと、待ち時間の乖離が発生している。
結果的にUXが悪くなり、客離れが起きてしまう可能性がある。
何か解消する方法はあるか考えてみた。
④UX視点で解決するなら
方法はいくつかあると思う。
・診療スケジュールの延長
→現在、診察予定時間が30分に設定されている。これが実態と異なるため、待ち時間という乖離が生まれている。よって、診察予定時間を1時間に延長することで、待ち時間の軽減を測る方法。
・診療時間の圧縮
→医者ではないのでこれができるかわからないが、単純に医者が診療時間を短縮する方法。
・外で時間を潰せるような方法を考える
→現在発生している待ち時間を有効に使えるようにする。希望者には受診時間の5分前にワンコールするなどの方法で、近隣施設への外出ができ、無駄に待つ必要がなくなる。
これ以外にも色々と方法はあるはずだ。
実際にこの病院のリピーター数などの数字を見たわけではないので、
この悪いUXによってどれだけ損失が出ているのかはわからない。
もし、売上などの数値に影響が出ているんだとすれば、
ぜひ、病院スタッフに伝えて改修したいところだ。
⑤ところが、売上で考えると…
ここから先はあくまで推測の域を出ない。
現在病院内で小さなクレームは起きているにしても、
とても繁盛している病院に見えた。
待ち時間の乖離が発生していて、UXが悪いのにもかかわらず、
患者が減らないどころか、増えている印象すらある。
それだけ医者の評判がいいのだろう。
選ばれている以上、現状のやり方を変える必要はそこまでないし、
UX面のデメリットが売上などに影響がないのなら、
無視しても運営上は問題ないのだろう。
UX向上のための案として、診療時間を30分刻みから1時間刻みにすることを提言したが、これを行うと予約母数が減ってしまうため、
むしろ売上には悪影響が出てしまう。
別案の診療時間の圧縮については、診察の質が下がったなどの悪い口コミにつながるかもしれないので、これも売上に悪影響が出る可能性がある。
いずれにしても、自動オペレーション導入によって、導入していないところよりもコストが増えているため、売上から目を背けることはできない。
だからといって、UXを疎かにしていると、時に急激に売上が減少してしまうこともある。
自動オペレーションを導入している企業は、導入することによって起こるUX面での弊害として、頭の片隅に入れておく必要はあるのではないか。
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