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【昔話】ガムとテーブルの裏側とノスタルジー

今からずーと昔、学生の頃、私はイギリスの小さな町のスターバックスでバイトをしていた。

スターバックス・コーヒーなのにコーヒーより紅茶が売れていたあの店で。

登校前にイケメンの中学生男子(推定)が、立ち飲みで、エスプレッソを飲んでいたあの店で。

どこぞのアメリカの企業の支社が近くにあって、昼休みになると、一回り大きなアメリカ人の団体が、アメリカのスタバカードで支払いをしたいとゴネてきたあの店で。

そんな素敵なお店で、毎回シフトに遅れてくるくせに、来て早々洗い場で優雅にアフタヌーン(売り物のお茶とスコーン)をはじめるイギリスの同僚達。

彼らが優雅なティータイムをおえるとまずすることは、レジ打ちでもなく、ましてやバリスタエリアへ行くことでもなく、ヘラと紙袋をもちフロワーにでる。

フロワーに出た彼らはその瞬間、瞳の輝きがかわる。それは、さながら遠い狩猟民族の祖先が取り憑いた様に。

ひとたび彼らが、ヘラを動かと、テーブルの裏側を確認するわけでもないのに、大量にガムが落ちてくる。そして狭い店内を一周するころには、袋いっぱいガムのごみがたまっていた。

まるで、彼らが特殊能力がある様に描いてしまったが、なんてことはない、イギリスのお店のテーブルの裏側は、いつも、びっちりガムのゴミがはりつけられていた。

小宇宙。

なぜ、彼らは、ガムのゴミをテーブルの裏にくっつけるのか?しないと、罰せられる法律があるのか?ガムを包んでいる紙に丸めて捨てるとおもっていたが逆にガムのそれが正しい捨て方なのか?

自分の常識を揺さぶる現実。

そして時は流れ子どもができ、はじめて彼らがガムをかみ、食べ終わったあと、そのままガムのゴミを私の指につけてきた時、ずーと昔のあの懐かしいお店のテーブルと友人達の顔がまぶたの裏にうかんだ。

 






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