今週末、母親にパンダのスニーカーを履かせる話
今日、私は黙々とスニーカーを手洗いしました。
スニーカーを洗っているのか、ぬいぐるみを洗っているのかは定かではないけれど。多分履くものだからスニーカーで合ってると思う。
週末のとあるイベントに向けて、洗い清めています。
そもそもこれは何?
このスニーカーはアメリカの鬼才ジェレミー・スコットとadidasがコラボした限定品で、10年程前にファッション好きの間で爆発的にヒットした商品です。タンの部分がクマやパンダ、ゴリラのぬいぐるみになっていて、有名タレントがこぞって履いていたことで話題になりました。
かなり入手困難だったのですが、色んなサイトを血眼になりながら探して、3万円台で購入したような記憶があります。
よく人に声を掛けられるスニーカー
購入当時、まだ若かった私は、意気揚々とこのスニーカーを履いてお出掛けしていました。そしたらまぁ道行く人に声を掛けられること。子どもに指を差されるのは勿論のこと、おばちゃんたちの反応が大きくて。「それは何?」「一体どうなっているの??」と尋ねられては「ぬいぐるみがくっついてるんです!」という会話をすることが定番になりました。そりゃこんなデカい靴が歩いてきたら目立つわな。
実家に履いて帰ったら…
私の実家はど田舎です。ある日の帰省でこのスニーカーを履いて帰ったところ、両親からは「またアンタは変なのを履いて帰ってきたね…」と呆れられました。ある意味、期待通りの反応。そして、そのまま母親と共に祖母のところに遊びに行った際、思ってもみなかったことが起こりました。
祖母の反応
私の祖母はとても穏やかで優しい人。そんな祖母のもとに、パリピスニーカーを履いた孫娘が突然現れる事態になったわけですが…。
「あははははは!!!!!」
…え、ばあちゃん、めっちゃ笑うじゃん。
「何ねそれは!」「漫画じゃが!!!」
もうね、笑い過ぎて身体をよじらせながらヒーヒー言ってる。これには私も、実の娘である母でさえも呆気に取られて。
帰り道は母と二人で「あんなばあちゃん、初めて見たね…」と話しながら家路に着いたのを覚えています。
(数年前の祖母からのメールを発掘しましたので、貼ってみます。)
そんな祖母の今
祖母は身体が不自由で、あの当時から施設に入居をしていました。母曰く、介護歴は24年ほどになるのだとか。
そんな中、新型コロナウイルス感染症が世界中で猛威を振るいました。
日本各地の入居施設でも集団感染が発生し、祖母の施設は今年の3月以降、面会が原則禁止に。
そんな祖母を。
認知症が襲いました。
電話での会話がおぼつかない。食欲が落ちている。表情がなくなった。あんなにしっかりしていた人なのに。
面会が出来ない分、進行がやけに早くて。
憔悴しきった母は、祖母の認知症の進行状況に一喜一憂する日々を送るようになりました。「もうダメかも…」と落ち込んでは「今日は電話に出てくれた」「ちょっと笑うような表情が見られたみたい」と気持ちを持ち直したりとか。
国内での新型コロナウイルス感染症の流行から半年以上が経過した今は「月に2回まで」「一度に2名まで」の条件のもと、施設内での面会が可能になりました。今週の土曜日には、母と叔母(母の実姉)の2人で面会に行くことが決まりました。
さあ、出番ですよ
今週頭、母と姉、私の3人で「ばあちゃんに何をしてあげられるだろうね」とLINE会議。まずは姉と私のメッセージ動画を撮影して母に送り、祖母に見せてもらうことにしました。
その中で私が「またパンダのスニーカーを履いて帰ろうかな」「写真だけでも見せる?」と呟いたところ、母が「それならお母さんが履いていくわ」と。
パンダちゃん、10年ぶりの出番が来ましたよ。
お清め、そして出陣へ
永いこと履いていないスニーカーは汚れていたので、今日は入念にもみ洗いをしました。
ばあちゃん、このスニーカーのこと、思い出してくれるかな。笑ってくれるだろうか。ちょっとでもキレイにして会おうね。静かに、祈りを込めながら。
少しでもふわふわになるように、柔軟剤もかけたよ。
若気の至りで買って、もう履くことは無いと思っていたスニーカー。それがまさか、母に履かせる日が来ようとは。取っといてよかったとしみじみしています。
今日からしばらく天日干しです。大きいから乾くのにも時間がかかるのよ。
心なしか「任せてー!」「頑張るよー!!」と言ってくれてるような気がします。祖母の笑顔を連れてきてね。頼んだよ。
…この記事には、後日談が。コチラからご覧ください。
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