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【脱北者のつぶやき】精神科を受診できる幸せ♡ #51

先日、児童精神科のクリニックで4歳の息子に自閉傾向があると言われました。

数ヶ月後、詳しい検査をして診断が確定とするとのことです(検査ができる年齢は5歳から)。

かつて自閉症は、自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー症候群などと区別されていましたが、現在は自閉スペクトラム症(ASD)という診断名に統合されています。

「スペクトラム(spectrum)」とは、「連続体」あるいは「範囲」と訳される言葉で、光学や物理学で使われる用語です。 基本的に境界線・範囲が明確ではない状態が連続しているさまを表現する場合に使われています。 例えば、虹は色のスペクトラムを形成しており、一つの色が次第に別の色に変わっていきます。

コペルプラスより引用

「自閉」という字面だけを読むと「自分だけの世界に閉じこもる」といった意味で捉えがちです。
しかし、近年ASDの症状はとても幅広く、多様であることがわかってきています。社会生活に大きな困難を抱えるケースから、はた目にはわからないほど症状が軽いケースまで様々です。

息子は36週5日の早産で生まれました。
生育過程において、ハイハイはしなかったものの、同年代と同じくらいに歩いたり、表情も豊かで目を合わせるとにっこり笑ったり、初めて出会うもの(特に虫や石)に関心を示し、散歩に出かけると外の世界に興味津々の様子でした。

しかし、バイバイする時に手が表裏逆さ(逆さバイバイ)だったり、言葉が遅かったりと、心配な点はちらほらと。3歳になるまでほとんど会話はありませんでした。
そういったいきさつで、3歳3ヶ月ごろから週一で療育に通うことになったのです。

療育に通いはじめた効果か、彼は著しく言語能力を伸ばすようになります。4歳になった頃には問題なく会話が成り立つようになりました。
先日、保育園の先生が面談で「保育園では問題行動は見られない」、「言葉はもう問題ない」と言ってくれました。

息子は言葉(音声)よりも文字に対する興味が強く、(特にがんばって教えたつもりはないですが)言葉より早く文字をマスターしていきました。

もうすぐ5歳になりますが、ひらがな、カタカナ、アルファベットに加えて漢字と英単語もある程度は読むことができます。
最近は足し算、引き算も少しできるようになりました。

こういった息子の様子を見ていた私たち夫婦は、医療者(夫は精神保健福祉士、私は看護師)であったこともあり、比較的早い段階で自閉的な兆候を感じ取っていました。重度とはいえないものの、いわゆるグレーゾーンだろうという話を折に触れてしてきたものです。

そして、このまま成長を見守るか、それとも医療機関の門を叩くかについても多く議論しました。

今現在、生活に支障はありません。
しかし、早い段階で息子の発達に関する傾向を知り、彼の特性に合わせて成長を支えていきたいと考え、小学校に入学する前のタイミングでの精神科受診を決心しました。

おそらく何らかの診断が下るだろう。そう予想してはいたのです。

心の準備はしていてもやはり、いざ医師から「ASDかも?」と告げられたときは、現実を突きつけられ、少し落ち込む自分がいることに気がつきました。
そこから改めてASDと向き合う時間がはじまります。

私の場合、ASDについては看護学校時代(約10年前)に学んでいたのですが、その診断を受けた人に出会う機会がなかった(出会ったことに気づかなかった?)ため、詳細な知識はないに等しい状態。まずは精神科医が書いた本を読むことにしました。

人と仲良くなりたいと思っても、自分から話しかけたり雑談を交わしたりするのが苦手という人が増えています。
音やにおいなどに対して敏感で、騒々しい場所や人ごみがダメだという人も少なくありません。潔癖で、自分の決まったやり方やルールにこだわりがあり、いつも通りでないと不安に感じたり、不機嫌になったりする人もいます。
自分の興味や視点にとらわれ、相手の気持ちや都合に気づかなかったり、融通が利かなかったりすることも珍しくありません。極端な考えになりやすく、少しでも嫌だと思ったものは受け付けず、仕事や対人関係が長続きしないケースにもよく出会います。
ここで挙げた様々な問題、対人関係やコミュニケーションから、感覚や認知、関心、行動の仕方などの様々な特性には一つの共通点があります。それは自分以外、あるいは自分が慣れたもの以外を受け入れられないということです。そうした特性を、精神医学的に表すのが、「自閉的」という用語です。

「自閉スペクトラム症『発達障害』最新の理解と治療革命」から引用

少し長い引用になりましたが、このような状態で悩んでいる人は意外と多いのではないかと思います。

私は上記の文面を読み、自分が”生きづらさを感じてきたポイント”をかいつまんで紹介してもらったように思えて、目を疑ったほどです😅

もしお母さんがいれば「私ってどんな子だったの?」と聞きたいところですが、今はそれも叶わないことので、自分の幼かった時の思い出を必死に掘り起こしました。

今も覚えているのは、小さい時に母が思い切って購入し、大切に使っていた日本製の保湿クリームの思い出です。

私は母とハグする時に、いつも香るその保湿クリームの匂いがとても不快で頭が痛くなりました。

北朝鮮において日本の化粧品はとても高価で希少なものです。せっかく母が喜んで使っているため、幼い私は母に「使わないで」と言うことはできませんでした。

北朝鮮で日本製の同じ品物を再度手に入れるのは難しいことが多く、大事に使っていた母の保湿クリームもそのうちなくなってしまいました。
私が喜んだのは言うまでもありません🤭

もう一つ、私は小学校高学年から中学校の2〜3年まで体調不良で学校に行くことができませんでした。疾患として特定されたものはありませんでしたが、学校に行くとお腹や頭が痛くなる、脱力してしまうなどの症状がありました。

北朝鮮において、長期間に渡り学校を欠席することは、理由の如何を問わず許されません。もしそういう子がいたら、クラスメイトが授業そっちのけで欠席者の家を訪ね、必ず連れていきます😱

しかし、私の家は比較的、経済状況に恵まれていたため、先生たちにたっぷりと賄賂を渡していました。
こういった(両親の)日頃の行いのおかげで、クラスメイトの訪問も受けない私は、幸か不幸か学校を堂々と休むことができました😎
日中は家でゴロゴロ、母がいる時は母と遊んで、午後になると学校から帰ってきた友達と遊ぶなどやりたい放題でした。

振り返ってみると、不登校以外の何ものでもありませんね😆
もし私が日本に住んでいたら、精神科の医療機関を受診する展開になっていたことでしょう。

家でゴロゴロしていた頃からずいぶんと時が経ちましたが、私は小さい時と変わらず嗅覚が過敏です。
そして、息子の一件を経験し、自身に関する分析を通してわかったのは聴覚も過敏であり、こだわりが強いということ。

ASDの特徴的な症状として、「社会的」な相互作用の障害が挙げられます。これらは「人」だけではなく「物」や「音」などの関係性も苦手であることを意味します。

例えば、カバンの下に半分隠れている絵本があるとすると、ASDの人はそれが絵本だと気づかないケースがあります。すべてがあらわになっている時の絵本の形状と違うためですが、物との関係性が苦手である一例です。

そして、私たちの脳は日常生活において、様々な音の中で必要な音は大きく、必要でない音は小さく感知する仕組みを持っています。
しかし、ASDの人はそういった機能に障害があるため、すべての音が同じような大きさで聞こえるため、耳を塞ぐなどの行動が見られます。

私も聴覚が過敏で、ビニール袋のカサカサとする音が我慢できなくなったり、カフェなど周囲が騒がしい環境で会話すると内容が聞きとりづらくなったりすることを多く経験しました。

ASDについて勉強する中で、自分自身についての新たな発見や考え方の変化がありました。

どうして他の人はできるのに自分だけできないんだろうと思った多くの部分が、もしかするとASDと関係があるのではないかと考えるまでになりました。

北朝鮮には精神科施設はあっても精神科病院はありません。
精神科施設は重度の統合失調症などで明らかな異常行動が見られ社会生活が不可能なため診断を受けた人々を社会から隔離・監禁する目的で存在し、そういった施設に入った人は人生を終えるまで外に出ることはないのです。

平壌の大きい病院には外国人向けの精神科があるかもしれませんが、一般の人は利用することができません。
ストレスや鬱、ASDなどの様々な精神科疾患を認めたら、政府の強制力を拒む理由になるため、統治が成り立たなくなることが大きな理由の一つではないかと私は考えています。

そのためにも、北朝鮮政府は軽い精神疾患を認めるわけがありません。ナチス統治下のドイツでも、障害を持つ人々は徹底的に弾圧された歴史があると聞いたことがあります。

精神科医療について考えることができるのは、民主主義国家に暮らす人の特権かもしれません。そう考えると、息子のことで悩める状況がとても幸せなものに感じられます😭

最後に今回書いた内容を踏まえて、やろうと思ったことを一つ。

自分の傾向を詳しく知った上で、今後の人生をもっとエンジョイするために、息子と同じく心理検査(大人版)を受けてみようと思うようになったのです。

息子よ、人間は凸凹があって当たり前。得意なところは重点的に伸ばし、不得意なところは可能な範囲で克服して、今後も試行錯誤しながら共に生きていこう。

ありがとうございました。

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