読書感想「生きるように働く/ナカムラケンタ」
12月のなかばに繁忙期が終わり、働き方についていろいろ知りたくなっていた。
今の仕事に疲れたからでなく、仕事がどんどん楽しくなってきたからだった。
「組織に所属しながら、もっと自由に、いろんな仕事がしたい」という漠然とした思いがあり、本屋に行くとそういうテーマの本がたくさん並んでいるコーナーがあった。
はじめは「フリーランス」「パラレルワーカー(副業)」などといった見出しの本をぱらぱらめくっていた。
何かしら役に立つ情報はあるけれど、これじゃないなと感じて本を戻す。
最後に手に取ったのがナカムラケンタさんの「生きるように働く」という本だった。
「日本仕事百貨」という求人サイトを運営している方とあり、この本ならいろいろな働き方が書いてあるかもしれないと思って買って帰った。
帯には有名な会社やお店で活躍されている方々の名前も並んでいたので、その人たちへのインタビューや対談の本なのかな、と思ったが違った。
まず著者のナカムラさんの生き方、人となり、社会に対するとらえ方というものがいちばんに伝わってくる。そしてまるで落語のような話はこびで、今まで取材でお話しした人たちとの会話がはじまっていく。自分もその場所に行ったように、風景と人が浮かんでくる文章。
最初は「こんな気持ちのいい文章を書ける人がいるのか」といちいち感動してしまったが、読み進めるうちにこの本の主題である「働いている時も休んでいる時も、生きている間はすべて自分の時間」という考え方が自分の中なかに入ってきた。
心に残ったところを3つだけ紹介しようと思う。
①2つのスタート
・「自分ごと」=まだニーズはないけど、自分がやりたいと思ってはじめたこと
・「贈り物」=誰かに求められたことに応えること(求められる以上のことを返す)
自分ごとが贈り物になることも、贈り物から自分ごとが生まれることもある
②「いい場所」をつくるには建築や不動産だけでなく、場所と人を結びつけること
・提供者と受け取る側が区別されているものではなく、ソーシャルとかコミュニティみたいなものが自然と存在しているところ
・一緒につくっていくときに大事なのはフェアであること
③対抗せず 依存せず 共存できるもの
・インターネットの便利さはもちろん利用するけれど、そこにしかないもの、手間がかかって真似できないものを考える
①は自分がなんとなくやりはじめていることに重なる内容で、②はこういう空間を育みたいという気持ちがより強まった。
③は「自分という仕事」を考える上でのヒントになった。
本っていうのは人におすすめするのはむずかしい。どんなにいい本も、そのときの状況によっては自分のなかに入ってこないから。本屋に行って自分に話しかけてくる本を見つけて読むのがいちばんいいと思っている。
でもこの本は、読んでほしい人がたくさん浮かんできたから、数冊買って贈ろうかしら、と思っている。
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