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湯屋に詠う-舞浜ユーラシア-

政府は緊急事態宣言の再発令を検討しているようだ。

友人が贔屓の店を週末の20時から予約してくれていたが
今日メッセージが届いた。

「難しいかもしれませんね」

仕方がない。

スパ&ホテル舞浜ユーラシア

まだ湯屋の楽しみも知らなかった若いころ、
自宅から近いこともあり何度かは訪れたことがある。
湯屋の楽しみを知らないのだからお金を払って
わざわざ外で風呂に入ることは殆どなかった。

東京メトロ東西線の浦安駅で降り、無料送迎バスに乗る。
乗客は3人。まだ正月休みの方も少なくはないはずだが
自家用車で行かれる方も多い施設だ。

やなぎ通りから新浦安を経由して30分ほどかけて運んでくれる。
一大テーマパークを中心としたリゾートエリアの一角にあり
目の前の浦安マリーナがあり、
艇置場には並ぶヨットやクルーザーを見上げると
一生、縁がないかもしれない気がしてくる。

受付で支払いを済ませ館内着とタオルを取り、更衣室へ。

リストバンドと同じ数字が書かれたそれを探す。
着丈が幾分長い上着でも収めることのできるロッカーは
冬場には特に重宝する。

(そうそう、こんな感じだった)

洗い場、露天風呂、サウナに水風呂、
前回訪れたのがいつ頃だったかはすぐに思い出せないが
確かに来たことがある。

身体を一通り清め、内風呂で少しばかり温めるのがいつもの流れ。
ここの内風呂には40度前後のものに、30度前後に設定された冷や湯、
マッサージバスがあり、露天に面した大きなガラスからは
大きく光が入りそれはそれで気持ちが良いのだ。

先客は露天風呂も含めて、各浴槽に数人程度。
混雑を覚悟していたが、それほどでもない。
浸かれる場所を探すほどではないことが大事だ。

今日はここでのんびりする予定。
先ずは一通り楽しみたい。早々にサウナへ向かう。

サウナと水風呂は内風呂の奥に位置し、
ケロサウナ、フィンランドサウナ、スチームサウナの3種類。
これらサウナの入り口前には立派な掛水処が鎮座する。

布製のサウナマットを手にケロサウナへ。
ソーシャルディスタンスのガイドが出ていて10人が定員だが
先客は3人ほどで十分。一番高い3段目の端に腰かけ、すぐに思う。

(そうか・・・ こんな良いサウナがあったのか・・・)

薄暗い照明に12分計・室温計くらいの掛けもの、
サウナストーブはレンガで囲まれ、ベンチは実に味のある風合い。
中温に設定された室内でゆっくりと温められていく。

目を瞑り10分ちょっと失礼することにする。

明美に詠う

そういえば浦安には明美が住んでいる。

明美とは15年ほど前、
当時流行っていたSNSで知り合った。

北海道の大学を出て、大手商社に就職したそうだが
その頃には既に退職し、別の会社に勤めていた。

どうやって距離が縮まったのかもう思い出せないが、
時折、大好きな浦安のテーマパークに彼女は訪れ、
私も都合が合えば食事をし、そのパークに付き合ったこともあった。
細身な体は170cmに近い身長で、清楚な身なりに品の良い喋り方は、
同い年ながら自分とは何処か根本的に違うものを感じていたように思う。

その後、お互いに恋人ができ、仕事に夢中になり、
御多分に漏れず、自然に疎遠となったのだが、
5年ほど前、結婚するという連絡を貰って以降、
年始や誕生日など、年に1度か2度、近況を伝え合うのだ。

今年の元旦も明美から新年の挨拶が届いた。

最後に会ってから10年近くが経っており

「お変わりないですか?」
「仕事は順調ですか?」
「誰か大事な人は出来ましたか?」

年に数回のメッセージは毎回似たような会話になる。

それでも年に数回、気に留めてくれる人がいるというのが
素直に沁みるほど独り身が長くなった。

地元北海道で出会い、結婚した旦那の転勤に伴い
数年前に浦安へ移り住んだ明美はその後、子宝にも恵まれた。

子供もそろそろパークを楽しめる歳になっただろう。
家族三人、この地で幸多くあることを心より願う。

サウナから出て掛水処の水を被る。
しっかり冷えた良い水だ。

その後、深さのある水風呂に浸かり、
露天風呂エリアでの外気浴をする。
身体から出る湯気と心拍が落ち着いたころを目安に
次のサウナ室で再び身体を温める。

フィンランドサウナ
スチームサウナ
再びケロサウナ

サウナトリップを終え、
源泉かけ流しの露天風呂で夜空を見上げた。

良い湯屋だった。また来よう。


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