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健康食品のパーセプション〜その商品はだれのもの?〜

こんにちは、チャボです。
8月1発目のnoteは、最近感じている健康食品業界での動きとそのベースにある考えについて感じたことを書いてみようと思います。

今年からXでも本格的に活動してるのですが、今週は特にSNSで新商品の動きがありました。以下本当に一部ですが、印象に残ったものです。

●ユーグレナ 子供向け成長飲料市場に進出
●C COFFEE 粉末烏龍茶発売
●YOUR MEAL 「YOUR BREAD」※完全栄養食パンみたいなもの

そしてこの動きを見つつ感じたことを、健康食品・サプリメントの「パーセプション」にフォーカスして書いてみようと思います。

①現代の消費者心理=「だいたいなんでもいい」

まず大前提、現代の消費者のモノ選びは「だいたいなんでもいい」になっています。
具体的に言うと、物が溢れていて選択肢に困ることはない、SNSやネットを探せばだいたいなんでも出てくる、ECの発達で欲しいもの見つかる&大体すぐ手に入る。

こういう時代になっているので、よほどのブランド力・愛着がない限り一定のラインはありつつも「だいたいなんでも良い。」という判断になるのはわかる気がします。(健康領域に関しては、小林の問題や先週あった食中毒のニュースなど、食の安全に関わることが取り上げられると慎重になる層もいます。それでも「ある一定の有名メーカー+知ってる企業の売り場で販売する=まぁ大丈夫だろう。なんかあったら対応してくれるだろう」というのが日本の大多数の消費者心理になっている印象です)

②企業活動として「認知獲得だけの限界」

こういった世の中であることからも、企業活動も転換が必要になってきます。過去と現在を比べてみましょう。

〈過去〉とりあえず認知獲得を行って伸ばす(知られてれば一定売れる)

2010年前半くらいまでは、市場での認知No1を取ることが重視されており、企業活動ではCMや新聞など認知策と店頭を組み合わせて顧客を獲得することに重きが置かれていました。
特にサプリメントについては40代以上が購買の中心であり、ここの主要な認知チャネルがTVであることから大手メーカーを見る限り、大型品はとりあえずCMを軸に組まれるのが勝ちパターンだったように感じます。(サントリー、DHC、アサヒ、ファンケル・・・など各社)
以下22年のデータですが、年代によって差はあるもののTVがやはり年代が上がるとともに高い水準となっています。
ただ50代を下回るとWEB利用が一部上回るような構造となってきてます。
そのためTVが主要チャネルになる時代も、これからはどうなるかわからないですね。

「2022年 生活情報を得ているメディア利用率の年代別」WEB担当者Forumより引用
https://webtan.impress.co.jp/n/2023/01/27/44176

〈現代〉認知していても、それは元彼・元カノの関係かも

では現代はどうなっているかというと、だいたいなんでも商品がある、SNSなど情報元も広がっている時代であることから、単純に「知っている」を獲得することは容易になってます。しかしそれだけでは価値になりにくい時代になっています。
物が溢れて色々選べる時代になってると、「知っている」に加えて「それが自分にとって何をしてくれるか」という要素も重要となってきます(ここで重要なのは、「認知」は確かに重要で、それを否定するわけではないです。ただ、それだけではダメという観点が重要です)

1つわかりやすく例を挙げてみましょう。
年代によって例の出し方が変わりますが、30代前後だとわかりそうな例として「ウコンの力」をあげます。

ウコンの力

このブランドは結構な人が知っているのではないでしょうか?一度は飲んだことある方多いと思いますし、市場認知はかなり高いと考えられます。
しかし、実際の購買行動で商品が並んでいるときにこれらを手に取る方は全体のうちどの程度いるでしょうか。取る人もいるでしょうし、知ってるけど買わない、ヘパリーゼを買うという人もいるでしょう。ここの差はどこにあるのでしょう?

ここからは、私が新卒で入った時のマーケティング研修であった内容で当時聞いた話をうろ覚えで記載します。なので的外れかもですがご容赦ください苦笑

この商品ですが、2015年頃に市場での伸び悩みを見せます。
当時ヘパリーゼの参入が加速してきており市場で奪い合いがあったのも要因の1つでしたが、当時のWEB記事で年代により評価が割れていたという内容を見た記憶があります。
結論、当時のウコンの力は「夜の仕事や、働くおっさんの飲み物」として認識されていたそうです。なので、自分ごとしやすい層ももちろんいますが反面、そうでない客層も一定いたと考えられます。
そのためその他競合は、そこを見ながらPRの展開をすすめ広告投下を行ったことで市場拡大を進めたとされています。当時ヘパリーゼは「肝臓疲れ」も交えた展開で、味の素はやや女性の飲む場を意識した展開でした。

これは「おっさんの飲み物は自分向けじゃない・買いたくない」という心理が消費者の購買選択に影響を与えたのだと考えられます。なのでウコンの力も星野源を起用してPR一時期実施していた記憶があります(若年に向けたCMなども行ってました。DRINKING DANCEみたいな曲も出していて、あれはちょっと消費者団体から色々あったと聞いてますが・・・苦笑)

このように、「生活者が企業や商品・サービスに対して、どのような価値があるのか、どんな存在なのか」を言語化したものを「パーセプション」と呼びます。(いわゆるカタカナでカッコいい系のマーケ用語ですね笑)

この例をもとにパーセプションを言語化すると以下のような違いでしょうか。市場ボリュームは上の方が大きそうですが、3つ目は明らかに違うポジションを取りに行ってますね。
ウコンの力:飲み会を助ける王道ドリンク
ヘパリーゼ:医薬品で力強く肝機能にも効きそうなドリンク
ノ・ミカタ:こじゃれたパーティーで使うお守り

③消費者起点で価値の言語化:パーセプション

このパーセプションについては、消費者起点で価値を言語化する上で重要な概念です。特に現代では顧客起点というワードをよく見るのと、戦略検討において各社「顧客インサイトを捉える」「n=1を考え抜く」ことにフォーカスを置いてます。

このパーセプションの代表例は、森永のラムネの話です。

シンプルに説明すると
●従来の認識:ラムネは「子供のおかし」(顧客価値)
→しかし「ラムネ=二日酔いに効くこと」がSNSでバズる(新たな価値)
●ここを軸に新商品・マーケ活動。結果、ターゲット&売上も拡大。

こんなストーリーがありました。このパーセプションは「企業が能動で生む場合」と「世の中の動きやトレンドで生まれる場合」があり、後者を逃さないのが中小規模の活動では重要です。

ただ、ここまで書くと「でもそれって消費財に限った話でしょ。サプリメントなんて薬みたいに飲むだけだからそんな転換できないじゃん」
と思う方いらっしゃるかもしれません。ここからは自分が、「あ、こうやって価値転換したのか」と感じた各社の事例を記載します。
これが正解かもわからないですし、異論があるかもしれませんが、考えの種や事例として参考になれば幸いです。

④具体的なサプリメント各社のパーセプションチェンジの事例

A- DHC 推し活✖️速攻ブルーベリー

まずはわかりやすい事例です。DHCの速攻ブルーベリーの商品について。

この商品ですが発売以降「ブルーベリーの中でも効きそうなサプリ」という顧客認知を持っていました。
(ちょっと話逸れますが、「速攻」って名称は健食法規から見てもうまいやり方だなと思います(音だけで行くと「即効」と一緒なので「そっこうブルーベリー」って読み上げると摂っている人の気持ちも効きそう感も上がりますし。しかもエビデンスは溶出スピードのことでPKG近接位置に書いてること含め人試験しなくても担保できるという絶妙さ))

この商品の転機は2010年後半に訪れます。ジャニーズファンがSNSで「これを飲むとライブで推しの子が見える!」という発信があり、それ以降推し活界隈でトレンドになりました。

このトレンドは一時的だったのですが、近年の推し活ブームもあいまり、今は企業が積極的に推し進めています。

一時期DHCのSNS広告

わかさ生活も一時期やってましたが、「速攻」という名称の強みもあってこれはDHCに軍配が上がりましたね。これは先ほどの事例で言うと、消費者の認知を以下のように転換したといえるでしょう。

「すぐ効きそうなブルーベリーのサプリ」→「推し活の応援サプリ」


B- サントリーウエルネス 本質の健康✖️DHA

これは転換か?と聞かれると、やや強めたに近いかもしれません。世の中のトレンドをとらえて、商品のポジションをしっかり置きに行った事例といえるでしょう。
以前、コロナ以降で、消費者の考えが「本質的な健康のあり方」にむき始めた。という話を以前のNoteでも紹介しました。

その中でサントリーはDHAEPAセサミンを、「基礎健康力」と題し、PRを20年コロナ真っ只中にぶち立てました。
今までも「健康のために摂ろう」「ただのDHA補給サプリではなくサントリーの叡智の結集」のようなPRでしたが、この辺は一部、企業主体のメッセージだったように感じます。しかし、上記記事のようなトレンドも相まって「本質的な健康とは?」を消費者が考えるようになっていった。そのためその消費者のリテラシのシフトに合わせたメッセージ発信だったのでしょう。

サントリー 基礎健康力のメッセージ

そのため、以下のような転換?進化がされたのかもしれません。

売上No1のすごいDHA⇨現代の健康土台を作るパートナー

ここから学ぶべきことは、商品が一緒だとしても「消費者や世の中のトレンド」に合わせて認識をチューニングすることで売り上げは伸ばせるという点です。もちろんサントリーのブランドイメージのバックアップと、大規模な投資資源があるからこれだけ早く浸透したと言うのはありますけどね・・・(どれだけお金かけたのか想像もつきません。。。)


C- リポソームC リテラシの転換✖️リポCという素材の特徴

これはどこの会社?というわけではないですが直近の事例として紹介します。

数年前から、リポCが少しブームになりつつあります。田中みな実さんが紹介してから特に美容界隈では小さなトレンドが続きつつ、別の会社ではロートさんが現在DGSでも展開しています。(この前他社さんと情報交換で話してましたが、爆売れ中らしいです)

特に今の時期がすごい売れているらしいです。おそらく美白・紫外線対策と絡んでいると思うのですが、なぜ普通のビタミンCではダメなのでしょうか?ビタミンCでもできることは一緒では?と思う方は一定いると思います。

実はリポCについては美容家界隈で2つのメッセージを核にその重要性が語られています。それは以下の2点です。

●夏はビタミンCをたくさん消費する
●ビタミンCはとってもすぐに流れ出てしまう

シンプルですが、この2つの認知が消費者にあることで「吸収されやすくて体内に留まりやすい」というリポCの特徴と当てはまり、この商品である必要性が強化される&綺麗なタレントさんが愛用している(→あの人みたいになれるかも)という掛け合わせによって単純な補給するVC市場の近くに新たな市場が形成されました。

この事例で言うと以下のような認知転換かと思います。

吸収や体内に留まりやすい新しいビタミンC⇨夏の美肌を内側から支える新しい肌ケア
※「消費しやすい時期&摂っても流れ出てしまう」という消費者認知が生まれることで認知を取りやすくなった事例

ただ、この方法はおそらくどのメーカーでもできる手法なのでいずれ価格競争で淘汰される戦い方になると思います。実際にもう低単価商品も少しずつ出てきているのでSINTOやリポCなど市場を作った企業がブランディングを頑張らないと縮小し続けるでしょうね。。。

終わりに

いかがでしたでしょうか。
個人的にこの事例集、書きながらすごい楽しい時間でした笑
また事例や思いついたら書いてみようと思います。

直近販売された商品も、この辺を意識してコミュニケーション・転換されていくのかなと思うと楽しみですね。それではまた。

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