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10涙と雨と春とパリ 3月19日

春の息吹が感じられるパリで、3月19日を迎えます。この日、共に旅をしていた仲間たちは一人また一人と、それぞれの目的地へと旅立っていきました。幸い、前夜にしっかりと睡眠を取ったおかげで、体調もすっかり良くなっていました。

ロビーでは、昨夜遅くまで涙を流していたEさんも、今は元気に旅支度を整えて立っていました。彼女はこの日の夜行でスペインへと向かう予定です。私たちはチェックアウトを終え、それぞれの目的地へ向かうために出発しました。Eさんとの別れは、強い握手と笑顔で印象づけられました。

私は、途中で書店に立ち寄り、トーマス・クックの「ヨーロッパ列車時刻表」を購入しました。この時刻表は、国際的な旅行者には欠かせないアイテムです。各国の主要な列車の時刻や、乗り継ぎ情報が網羅されており、地図や路線図も詳細に記載されています。最初は複雑に見えたこの時刻表も、じっくりと眺めるうちに読み解くコツが掴め、やがては旅の強い味方となりました。

時刻表を脇に抱え、ふと見かけたパン屋でクロワッサンを購入することにしました。店のショーウィンドウで窓を拭いている人形のような店員が、実は本物の人間であることに気付き、私は思わず息をのみました。彼女は、人形のように可憐で、パリのパン屋さんによく見られる美しさを湛えていました。日本人留学生がこうした店員さんと恋に落ちる話が納得できるほどです。もし私が学生としてパリに留まっていたら、きっと彼女と恋に落ちていたことでしょう。

しかし、私の旅はまだ始まったばかりです。定住することなど考えられず、心を鬼にしてクロワッサンを手に、「オ・ルボワール」とフランス語で告げ、メトロに乗り込みました。

この短い滞在で感じたパリの魅力は、これからの旅の中での思い出として、私の心に刻まれるでしょう。時には涙と雨が交錯するが、それもまた旅の一部です。春のパリは、訪れる者の心に、いつまでも残る特別な場所であります。

パリで初めて買った書籍はトーマスクック社「インターナショナルタイムテーブル」これはこれからの度に欠かせない旅人必携の書です。

補足情報:パリの国際列車が出る主要駅

パリからの国際列車は主に以下の駅から出発します:

  1. ガール・デュ・ノール(Gare du Nord): ヨーロッパ最大の駅の一つで、イギリス(ロンドン)、ベルギー、オランダ方面へのユーロスターが出発します。駅内には多数のショップとレストランがあり、利便性が高いです。

  2. ガール・デ・リヨン(Gare de Lyon): スイス、イタリア、スペイン南部へ向かう列車が発着します。建築が美しいことで知られ、歴史あるレストラン「ル・トラン・ブルー」が駅内にあります。

  3. ガール・モンパルナス(Gare Montparnasse): 主にフランス西部やスペイン北部へ向かうTGVが出発する駅です。近代的な設備が整っており、ショッピングエリアも充実しています。


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