書籍の要約ライターを副業に選んで2年。本家が出版したので要約してみた
『本の要約サービス』使ったことありますか?
フライヤーは1冊10分で読める時短読書サービス。ビジネス書だけでなく、『君たちはどう活きるか』や『夢をかなえる象』といった本もあり、読む前にどんな本か知りたい人にはうってつけです。
そんなフライヤーでかれこれ2年要約ライターをしてきたのですが、フライヤーの編集者 松尾美里さんがこのたび本を出版されたと聞き、いてもたってもいられず、さっそく読んで要約してみました。(ちなみにフライヤーで要約するときの作法とはずいぶん違います。もっと忠実で網羅的です)
インプットとアウトプットを分けない
フライヤーの要約ランキングには『聞き方の一流、二流、三流』『頭のいい人が話す前に考えていること』『人は話し方が9割』といった本が並ぶ。
「聞く」「まとめる」「言葉にする」をひとつひとつ分けて解説しており、専門的に学べる本だが、そのつながりに焦点をあてたものは見当たらない。(「読む」を解説した本がない、というのも気になる。。)
文献調査とインタビューをして、資料にまとめてプレゼンする。そうした業務の流れをひとつのプロセスとして習熟すること。それが本書のテーマ。
「読む・聞く」ための共感と俯瞰
書籍の要約のライティングをこれまでの2年で60冊ほど経験したが、著者は約850冊の要約制作に関わっているプロフェッショナル。信頼しかない。
目次や帯から「見取り図」をつくり、好奇心と問いをもって「宝探し」をするという読み方(詳細は本書)は、「聞く技術」にも共通するものがある。
上司・部下の1on1。相手に寄り添い共感することで「私のことをわかってくれている」と思えることも大事ですが、落ち着いて、より広い視野で物事をみて「社会や会社、私たちのことをわかってる」と思えることも必要です。
どちらかに偏りがちな人は、もう一方を意識すると、これまでとは違うものを読み取れたり、違う反応が返ってくるかもしれません。
想いを聞き出すテッパンの問い
読むときは感じない、聞くとき特有の抵抗感。それは相手から情報を一方的にもらうことの申し訳なさ。相手にとってメリットになる話ができるといいけれど、そうはいかないときのおすすめが「想い」を聞き出すこと。
情報はだれに聞いても同じですが、想いはその人に聞かないとわかりません。「想いを聞く」対話が一度でもあると「この人は心から理解したいと思ってくれている」と思ってもらえ、信頼関係を築きやすくなる。
とはいえ、想いを聞き出すことは聞き方次第では相手が不愉快な思いをするかもしれない繊細な高等スキル。著者のテッパンの問いが役立つはず。
時期 「いつ頃から〇〇を始められたのですか?」
影響を受けたもの 「人生や価値観に影響を与えた本を教えてください」
行動・意思決定 「私なら〇〇と思いそうですが、(そうではなく)〇〇に決めたのはどんな想いからでしたか?」
経営学者の入山章栄さんに経営理論のインタビューで2.の質問をしたときの返答が、テッパンの問いの威力を物語っている。親近感がもてるお話。
タイトルにはない「メモする」習慣
読む・聞く、まとめるの間にある「メモする」習慣が本書では紹介される。
自分の考えをメモして客観視することで内省をしたり、メモを組み合わせて新しいアイデアを思いついたり。インプットの蓄積だけでなく、アウトプットの起点にする材料としてメモをする習慣の効用を教えてくれる。
『知的生産の技術』という書籍の「こざね法(こざねとは小さな短冊状の板のこと。小札)」がおすすめされている(詳細は本書)。アウトプットの前にインプットの素材を下準備しておくことで、ポイントを絞り込むことは頭の整理になる。
「わかりやすく」して納得と共感を生む
まとめるときにはまず「伝わる論理」の組み立てが肝心。伝わる順序をつくって、論理関係をはっきりさせて、最後に納得してもらえる流れになっているか確認をする。
まず取りかかるのは「伝えたいことを1つに絞る」こと。本質や根拠を問答し、違いや変化に注目する。そのうえ伝わる型に並び替える。結論→理由→結論というよくあるパターンはシンプルでわかりやすい。問題提起→前提共有→意見という流れは、課題意識にばらつきがあるときに向いてそうだ。
相手に伝えて、わかってもらうということはそもそもなんだろう。
相手の負担を軽くするを意識すると、伝え方の磨きぶりが変わりそうだ。
次に納得して、共感してもらうには効用・信頼・親近感が鍵になるという。
実は本書も効用・信頼・親近感で構成されている。1章 良い言語化の秘密で5つのメリット(効用)を伝え、2章 インプットの習慣で著者の経験(要約ライティング260冊、編集590冊)を語り、入山さんのインタビューのお話で『HUNTER×HUNTER』が出てきてぐっと身近に感じられる(親近感)。
ひとはメリットがあることに興味をもち、信じられることに心を開き、親しみがもてることが心に残るのだろう。
フライヤーへ。感謝を込めて
『おわりに』にあった著者の情熱のルーツ。
わたしは生きてる人の本を読むことが好きで、読者の話を聞くことが好き。根っこにあるのは「挑戦する人の物語を、まのあたりにするのが好き」だ。
本と人をつなぐ場をつくっているのは「これから挑戦する人の門出を見送り、帰還を心待ちにするのが好き」だからだろう。
著者の情熱と好奇心に共通点をみつけ、あらためてフライヤーに関われていることの幸運と必然性を感じた。2年前の自分の選択は間違ってなかった。
どうぞどうぞこれからも。3年目もよろしくお願いします。