読書感想36冊目:王妃になった魔女様は五人の王子に溺愛される/宮野美嘉著(小学館文庫 キャラブン!)

注:感想を書き連ねる間に重要なネタバレをしている可能性があります。ネタバレNGな方は読み進めることをおすすめしません。苦情については一切受け付けません。また、感想については個人的なものになります。ご理解ご了承の上、読んでいただくことをお願いいたします。

ここから本文

「可哀想な…… 
 俺の
 魔女様」

「愛」を知らない孤高の魔女にそれを教えるのは果たして誰か?

帯より

 宮野先生の最新刊。今回はいつもほどはドロドロしていない感じ……?でさらりと読める作品。
 リンデンツ王国の北の森に棲んでいた、悪い魔女。しかし十年前に前王妃が亡くなると、魔女は王宮に乗り込んで、新たな王妃の座におさまった……らしい。

 魔女ナユラ。それが、北の森に棲んでおり、元引きこもり現リンデンツ王国の王妃。
 見た目は十八歳ほどの美女だが齢三百歳の化け物。
 そんな彼女は王国を牛耳って思うがままにふるまっているかと思いきや、どちらかというと振り回されている様子。
 彼女を振り回す存在は、王と前王妃との間に生まれた五人の王子様。
 その五人の王子様方といえば、どの王子も見目麗しく、なんらかの能力に秀でていて、国の令嬢の憧れの的……
 という立場でありながら、彼らが愛するのはただひたすらに義母であるところの北の魔女現王妃のナユラのみ。

前王妃が遺した五人の王子は魔女に操られて結婚すらできない」

カバー裏あらすじより

 国民には、そんな風に囁かれているが、実際のところはどちらかというと魔女を心底愛するがゆえの行動に、ナユラが困らされているという状況。
 そんな彼女は、王子たちを守ってほしいという愛する王の願いを叶えたいと思う毎日な訳で。
 もちろんナユラとて、頼まれたからだけでなく、夫の子どもたちのことを憎いどころか可愛い、愛しいと思っているが、どうやらその「愛」は平行線。
 そういうわけでかどういうわけだかで、王宮内では召し使いたちにほ逆に王子のことをなんとかできるのは魔女様であると嫌われもせず、王妃の悩みはもっぱら妃を迎えない五人の王子のお嫁さん探し。
 口の悪い従者と共に王子様方のお嫁さんを探すことにしたナユラ。果たしてその結果は……!?

 というのがざっくりとしたあらすじ。
 王道の話ならば、なんやかやと縁談がまとまっていく感じがするところです。
 ほら、王子様の変態なところを理解してる同士とか、幼馴染みとか、引っ込み思案のご令嬢の大変身とか。
 そういう、ときめきかつらぶでこう乙女チックな……!!!

 安心してください。

 忘れてはなりません。

 この作品の作者は宮野美嘉先生です。

 普通であるはずがないでしょう。
 (もちろんいい意味で)普通のときめき乙女チック展開を期待しては行けません。

 もう一度言います。
 安心してください。
 安定の、頭おかしいキャラが盛りだくさんです(めちゃめちゃ誉めてます!!!)

 主人公が一線を画しているのにも関わらず、どいつもこいつも張り合うほどの個性とエピソードを展開してきます。
 むしろおかしな、異端であるがゆえに話の要となるべき主人公を食う勢いで。
 五人の王子様はそれぞれ違った個性や能力、考え方や行動が見られるので、本編もその五人に沿ったお話が中心です。そして王妃であるところのナユラ自身にも関わってくる事柄も。
 ただ、忘れてはならないのは根底に広がる中心軸は、「」です。忘れてはなりません。
 これは、本編における最重要のテーマです。
 心に愛を置きながら読み進めると、いろんな愛のかたちが見えてきます。
 本編はもしかしたら続きそうな気配がするので、その根幹テーマが少しずつ深堀りされていくのかなと思うところなので、今回はそれぞれの紹介的な一冊なのかもしれません。
 それでも。
 ナユラの非常識さの中にある不思議な感情の揺れかたや、王子たちの考え方に触れながら「愛」を考えると、興味深くも感じるのです。
 ただ、好きだ愛してると迫るだけが良いことじゃない。
 深いとか浅いとか、そういうことでもない。
 そんなことを考えさせてもくれます。

 ただ、とりあえず、いちばん忘れちゃならないのは。
 
 タイトル通りのお話です。

 それだけ。


公式紹介ページはこちら

 ここまでお読みいただきありがとうございました!


この記事が参加している募集

#読書感想文

189,831件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?