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狭霧 織花
2023年2月25日 22:04
「……………薔薇?……」 小さな、やっと蕾をつけ、ほころび始めた花びらを懸命に空へと向けている。 小さいけれど優美な線を描く茎には同じく小さなとげ。そして小さくとも質感を持った何枚もの紅色の花びら。 生き生きとした花びらと、まとった氷のかけらが光る。 それは、生命の輝きだ。 周りの静寂が、凍ったように止まった気がした。魅入られたように、動けない。 けれど惹かれるように指先はその小さな
2023年2月19日 21:58
寒さに耐える花の美しさを、彼は見た事があったろうか。 一面に降り積もった雪に埋もれる世界の中、凛と誇らしく咲いていたことを、私は忘れない。 そして、彼に教えたいと思ったことを。 彼の幸せを、願ったことを。… … … … … … … … … … … その花は、真冬に一厘だけ、ぽつりと咲いていた。「そろそろ、外に出ない?」 何度目だろうか