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狭霧 織花
2022年12月18日 23:24
「むせ返るような、匂いが嫌い」 その言葉に、何も返すことができなかった。 祈りの言葉は今も届かず、空に彷徨っている。 きっと。――― 今年も秋は巡ってきて、金木犀の華はチラチラと舞う花びらよりも その薫りを誇るように強く振りまいている。 いつのまにか人の背丈ほどの大きさになって、枝葉を広げたその木を見上げて、「どうして、こんなに匂いが強いんだろう」 文句のように言葉がこぼれ落ちた