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クイズでパーソナライズのためのゼロパーティーデータを収集する「Octane AI」

サイトに訪れると、「好きな色は?」「よく見るNetflixの番組は?」といった質問が現れ、答えていくと自分にあわせた商品がレコメンドされる。そんなクイズ形式のコンテンツを体験したことがある人も多いだろう。

たとえばつけまつげブランドのDoe Lashes(ドー・ラッシェズ)のサイトに訪れると、自動的にクイズが表示される。

これらの質問に回答し終わると、結果を送信するためのメールアドレス入力を促されたあと、おすすめのつけまつげが表示される。

こうした簡易的なクイズや診断コンテンツを手軽に作り、ECサイトに埋め込めるサービスを提供しているのがOctane AI(オクテン・エーアイ)だ。

「ゼロパーティデータ」の収集を目指すOctane AI

アメリカのD2CがOctane AIをはじめとするクイズプラットフォームをECサイトに取り入れ始めている背景には、「ゼロパーティデータ」の重要性が上がっている点にある。

ゼロパーティデータとは、顧客が自ら積極的に企業と共有するデータを指し、好みやライフスタイルについて回答したアンケートや、最新情報を得るために登録されたメールアドレスといった情報が含まれる。

これまではGoogleやFacebookといったプラットフォームを通した広告配信がD2Cの成長を支えてきたが、消費者のプライバシー保護の観点からユーザーがトラッキング拒否ができるようになり、広告のパフォーマンスが悪化するようになった。

こうした変化によって、顧客が自ら情報を提供するゼロパーティデータへの注目が高まっている。

CEREAL TALKのnoteでも以前紹介した「Fairing(ファイアリング)」(旧・Enquire)も、同様の背景から注目されているサービスだ。

クイズを通して、商品提案をパーソナライズ

さらにOctane AIが提供するクイズプラットフォームは、買い物のエンタメ性を上げ、顧客の商品理解が深まるといったメリットがある。

たとえばOctane AIのブログによれば、冒頭で紹介したDoe Lashesではクイズ回答者のうち4.6%が商品購入に進み、顧客単価も11%以上高くなったという。

特に商品の種類が多く、好みの商品にたどり着くまでに時間がかかるジャンルの場合、簡易的なクイズを通しておすすめ商品を提案することで、顧客が欲しい商品を見つけ、購入しやすくなる。

パーソナライズのロジックは、管理画面から自分たちで自由に設定ができる。

ロジックは大きく分けて二種類あり、「すべてを満たした回答者にはこの商品を出す」「どれかひとつでも満たした顧客にはこの商品を出す」の2パターンで設定ができる。

Octane AIのデモ画面。左カラムで指定した条件を満たすと、指定した商品が表示されるロジックを組むことができる。

たとえば上記のケースでは、「What is your main hair goal?」に「Volume」もしくは「Hydrate」と回答した顧客のうち、35〜44歳の顧客に商品が提案される。

一方で、下記のケースでは「How does your scalp feel?に「Dry」と回答するか、「What is your gender?」で女性と回答すると製品が表示されるロジックになっている。

「All」か「Any」かで商品表示ロジックが変わる

これらの設定は商品ベースで行う仕組みのため、その商品をおすすめしたい属性を設定すればロジックをつくることができる。

Octane AIはクイズを通して商品のレコメンドをする目的で作られているため、選択肢や商品レコメンドページで写真やイラストが見やすく、ロジックも商品レコメンドを前提に作られている。

さらにページに訪れたタイミングだけではなく、サイトから離脱しそうなタイミングでポップアップを出すといった設定も可能だ。顧客が欲しいものを見つけられずに離脱しそうなときに、クイズというエンタメ性の高いコンテンツを提供することで、離脱を防ぐこともできる。

Klaviyoとの連携で顧客データベースを強化

Octane AIの強みはパーソナライズだけではなく、クイズを通して顧客が自ら情報を提供してくれることで「ゼロパーティデータ」が蓄積される点にある。

特にマーケティングツールとして人気の高い「Klaviyo(クレヴィヨ)」と連携させることで、Octane AIを通して得た回答内容をベースに、個別にメールを送ったり顧客対応に活かしたりすることができる。

たとえば、Octane AIをKlaviyoと連携させるとKlaviyoの顧客プロフィール上で下記のように回答内容が表示される。

KleviyoでOctane AIの回答が表示される際のイメージ。

さらにKlaviyoはメールマーケティングツールでもあるため、Octane AIを通して取得したメールアドレス向けに商品情報を送るなど、メールマーケティングにつなげることも可能だ。

たとえば、前述のDoe Lashesではクイズ回答後に「おすすめ結果をメールで送る」という名目でメールアドレス入力画面を設定している。

クイズ回答後に表示されるメールアドレス入力画面。

これによってクイズの結果をメールで自動的に送るのはもちろん、その後も新商品情報を送ったり、初回購入割引のキャンペーンを送ったりと潜在顧客へのアプローチができるようになる。

このように、クイズプラットフォームであるOctane AIは、EC上でパーソナライズされた提案をするだけではなく、クイズを通して顧客のライフスタイルや好みをデータとして蓄積していくところに強みがある。

今後はさらに、Octane AIやFairingのような顧客が自主的に情報を提供する「ゼロパーティデータ」を収集するツールが注目を集めていきそうだ。

▼Octane AIのShopifyアプリストア

(Cover Photo:Doe Lashes official

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