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D2C関連の注目のニュースと最新動向

CEREAL TALKで毎週お届けしている海外トレンドの中から、D2Cの戦略やD2Cを取り巻く潮流についてまとめてご紹介。

ナイキの真逆を貫く、Allbirdsのグロース戦略

Allbirdsは2020年9月に$100Mの調達を発表し、時価総額は$1.7Bへと跳ね上がった。しかし、Nikeのフットウェア売上の$24Bやadidasの$15Bといった実績にはまだまだ程遠い。
特にトップスニーカーブランドであるNikeにAllbirdsはどう対抗できるのかが業界では話題になっている。Nikeの熱狂的な人気の秘密は、「スニーカードロップ戦略」だろう。新作から既存モデルの復刻版、そしてコラボレーションなど、毎年100種類の新しいスニーカーをドロップし続けている。カジュアルファンからするとお手頃の値段で購入できると共に、二次流通市場で値段が跳ね上がるためスニーカーファンにも愛されているブランドだ。そんな中、Allbirds共同創業者のティム・ブラウンは、このNikeの戦略を真似する予定はないと宣言。
「Allbirdsでは、何百種類と作るモデルではなく、靴を最もシンプルなフォーマットとして削り込めるかに注力している。新商品ではなく、店舗数の拡大とより広いオーディエンスにアピールして成長したい」とブラウン氏は語る。
実際にAllbirdsの商品展開は、ランニングシューズが3種類、カラーはそれぞれ10色のみ。コラボ商品も2020年は3つにとどまっている。Nikeのオンラインとオフライン店舗の売上の割合は半々だが、Allbirdsのオフライン売上(グローバル含む23店舗)はまだ全体の25%以下であり、店舗数の増加による売上規模の拡大が期待される。

TargetがD2Cブランドと連携し大衆市場向けラインを発表

https://www.retailbrew.com/stories/2021/03/01/target-now-carries-dtc-apparel-diffusion-lines

Targetは、大手小売企業の中でもD2C領域の攻め方に関してトップクラスだ。D2Cブランドとの提携や自社ブランドの立ち上げに積極的に取り組むTargetが、また新しく興味深い取り組みをスタートした。
それは、他社D2Cアパレルブランドのダウンマーケット(大衆市場)商品をTargetが作り、販売すること。マタニティブランド「Hatch」と下着ブランド「Lively」でこの取り組みを始めた。
Hatchのマタニティー服は高いものだと$400だが、Targetで販売するライン「The Nines by Hatch」では、すべて$40以下。LivelyもTargetで販売するライン「All.You.Lively」では$25とお手頃価格。Targetとしては、様々な顧客のニーズを応えるために毎回自社のプライベートブランドを作らずにすみ、D2Cブランド側は、今までリーチ出来なかったアメリカのミドルクラス以下の層にリーチできる。
大衆向けの商品を出すことでブランドイメージに影響しないかが気になるところではあるが、LivelyもHatchもネガティブな影響は出ていないと主張している。Hatchは、5年間のコミュニティフィードバックからダウンマーケットの需要があったそう。Targetは、ディスカウントストアでありながらポジティブなイメージを持つ人が多いかなりユニークな立ち位置を築き始めている。

便利なはずの定期便EC、解約を防ぐ”タイミング”

ペットフードやワイン、カミソリ、サプリなどのサブスク市場が過去5年で100%の成長を見せている。安定性の高い定期便はブランドとユーザーにとても便利なはずだが、利用者の40%がサブスクプランをキャンセルしているという。
解約する理由は大きく2つ。1つはプロダクトが欲しい時に来ないこと、2つ目は消費する前に新しいプロダクトが届いてしまうこと。その離脱率を下げるために、多くのD2CブランドはSMSやメールにてサブスク管理ができるようにしている。これまでサブスクの設定を変更するには、ブランドサイトへ行き、ログインをして変更するというステップだった。最近では、SMSやメールで簡単にスキップしたり、他のプロダクトの提案やディスカウントを提供するブランドが増えている。
例えば、タンポンブランドの「LOLA」は寄付のオプションを提示していたりもする。「Repeat」というスマート補充サービスは定期購入ではなく、プロダクト毎の消費パターンなどを研究して補充する最善なタイミングでSMSを送れるようにしている。そしてユーザーのアクション(購入する、スキップするなど)に応じてパーソナライズされた補充通知を送るようにしている。他にも「Bottomless」はコーヒーのサブスクと一緒に天秤のお皿を提供して、コーヒーの消費量を計算して良きタイミングに合わせて再注文の通知を送っている。

新興ビジネスウェアブランドはコロナ禍をどう生き残ったのか

Ministry of Supply」はMIT出身のエンジニアたちが創業したビジネスウェアブランド。特殊素材や技術的優位性がある生地やアイテムを作り、2018年から40%成長して2019年には年間で$14Mの売上を達成した。2020年はさらにアクセルを踏み、当時は6つの実店舗も運営していた。
そんな中、新型コロナウィルスが流行。夏には売上が急減し、方向性を考え直さなければいけなくなった。5店舗を閉鎖し、46人いた従業員も今では16人しか残っていない。彼らは、8月にビジネスを完全にピボットさせ、「リモートやハイブリッドな仕事環境の時代」に合わせるために方針転換した。
ただ、通常は半年前から商品の仕入れを行っているため、方針転換によって既存商品のみならず、直近で販売する予定の商品も作り直さなければならなくなった。
そこでブレザーに使う生地でスウェットパンツを作ったり、仕入れ中の商品にゴムをつけて履きやすくすることでこれまでのビジネススタイルをリモートワークにも合うように調整した。それまで商品開発には4〜6ヶ月かかっていたがリモートワーク向けの商品開発は30〜45日間で行われた。
サイトに載っていた200商品の写真も全て撮り直し、商品説明に「オフィス」という文脈をすべて削った。写真のルックスや名前も、よりカジュアルに見えるように変更。こうした努力の結果、2020年は赤字ではあったものの$12Mを売り上げ、なんとか生き残った。これから資金調達に動くMinistry of Supplyが投資家の目にどう映るかはまだわからないが、コロナ禍でも素早くピボットして底力を見せつけた力を持った企業であるのは間違いない。

ファウンダープロダクトフィットの大切さ

「Founder-Product-Fit」の重要性、つまり創業者とプロダクトのフィットが大切だということがD2Cブランドでは特に言われている。
良いコンテンツマーケティングではオーセンティックなブランドを作ることが大事で、それを作るのにFounder-Product-Fitが必須になっている。逆にFounder-Product-Fitが無ければ、ブランドのストーリーはただのコピーライティングにしかならない。
これを達成している企業として知られているのが低アルコールドリンクブランド「Haus」とHaus創業者夫婦のストーリーだ。
妻のヘレナ・プライス・ハンブレヒト氏は、Airbnb、Dropbox、Facebookなどでクリエイティブなプロジェクトを担当したり、写真家として活動していた。一方夫のウッディ・ハンブレヒト氏は、家族が元々ワインを作っていて、自分の農園を持っていた。そんな二人が、ベルリンの旅行中に、異なる飲みの文化があることを気づいた。彼らは酔うために飲んでいるのではなく、関係性を深めたり「今を生きる」ために飲んでいた。そして飲むのは食前酒、特にアメリカーノが多かったのに気づいた。
Hausはヨーロッパの伝統的な食前酒にモダンなテイストを入れ込んでいるプロダクト。Hausのプロダクトとヘリテージを感じさせるウッディ氏とは別に、ヘレナ氏はブランドのバリューコミュニケーションと顧客アピールに強みを持っていた。Haus以外にRecessRowing BlazersTopicalsなども創業者のストーリーがあるからこそ、ブランドのコピーやデザインが響くようになっている。今の顧客は消費するプロダクトに対して真実を求めている。ちょっとカッコいいデザインではなく、10年後もサポートできるブランドを探している。新しいブランドは歴史がない中で、創業者にそのヘリテージが求められる。それを見せるのに最も適しているのは自分たちのオーセンティックなストーリーである。
CEREAL TALKのポッドキャストでもファウンダープロダクトフィットについて解説しているのでぜひ聴いてみてほしい。

D2Cブランドがウォルマートと提携する理由

小売大手のWalmartやTargetに行くと、実はD2Cブランドがよく並んでいる。中間業者を省くことで直接顧客と繋がるコンセプトで立ち上がったはずのD2Cブランドだが、オンライン広告の値段が上がっている影響で、最近オフラインでの販売が増えているのだ。自社店舗を立ち上げるブランドもいれば、ポップアップや大手リテーラーと提携してオフラインで商品販売を行うブランドも出てきている。
Targetは2016年にHarry'sと提携してから、今ではFunction of BeautyLivelyNativequipなど様々なブランドと提携。さらにカテゴリー別のリテーラー、特にWest ElmCrate and Barrelなどホームインテリア系のリテーラーはD2C企業と提携するケースも増えている。West Elmは観葉植物D2CのBloomscape、Crate and Barrelはベッドシーツなどを販売するParachuteやクックウェアブランドのCarawayと提携。
一方のWalmartは、過去にD2Cブランドの買収を多く行なっていた。結果として買収したブランドを売却したケースもあったが、社内にデジタルマーケティング戦略やノウハウを取り入れるのが非常に重要だったと思われている。また、大手はノウハウ以外にD2Cブランドが抱える若手層の顧客のトラフィックを獲得できるのも大きな提携する理由となる。
そして特にTargetは自社のプライベートブランドをD2Cのように見せているため、そこに顧客を誘導させるためにD2Cブランドと提携しているとも思われている。TargetはAwayと非常に似ているOpen Storyというスーツケースブランドを立ち上げたり、若手層が好む明るい色合いのプロダクトを使って初年度で$1Bの売上を達成したアクティブウェアブランドのAll in Motionを店舗内でプロモーションしている。Walmartも直近ではプライベートブランドの立ち上げに注力している。

Glossierの映画予告風マーケティングが秀逸だった

https://www.marketingbrew.com/stories/2021/03/26/glossier-used-empty-movie-theater-marquees-site-latest-campaign

コスメブランドGlossierが、自社プロダクトのマスカラ「Lash Slick」のキャンペーンを実施。サイトに寄せられた良かったレビューをストーリーの元とした映画予告風動画「Lash Slick:The Movie」を公開した。面白いのが、映画のポスターをニューヨークやロサンゼルスなど9つのインディーズ映画館のポスターボードや看板で野外広告を出したこと。コロナ禍で営業が厳しい映画館に対して、ポジティブな動きとしても注目された。2020年第4四半期の米国野外広告協会(OAAA)の調査によると、米国の成人2,058人の45%がパンデミック以前よりも野外広告に目を向ける人が増えたそうだ。

Adidasはどうやって2025年までにD2C売上を50%まで持っていくのか

Adidasが投資家向けの発表会の際に、D2Cチャネルからの売上を2025年までに全体の50%までにすると発表した。実現するためにAdidasがデータアナリティクス、ロイヤリティプログラム、そして5つの重点カテゴリーにより投資とフォーカスを入れると宣言。実際にNikeとアンダーアーマーも似た戦略を行なっているので、Adidasは遅れてD2C戦略を行なっていることとなる。Adidasがこの戦略を実施するためにプロダクトラインアップおよびデジタル投資が必要と言われている。アメリカでAdidasがNikeにシェアを失っている最大の要素はNikeのスニーカー市場の強さと言われている。2020年では最もアメリカで売れたスニーカーのトップ10のうちAdidasのものはたった一つだった。さらにアスレジャー領域のアパレルの品揃いも少ないので、セレブとのパートナーシップなどでそこのラインアップを増やすのが大事と言われている。さらにデジタル戦略への投資が必要で、2021年には1,000人テック採用を行うとAdidasが発表している。Modernr Retailの記事では、そして今150万人いるロイヤリティプログラムのメンバー数を5億人まで増やしたいと語っているそうだ。そうするためにはNikeやLululemonのようにアプリとサイトなどデジタルアセットと店舗連携がより重要になってくるだろう。

コロナ禍を乗り越えた、Rothy'sのプロダクトのネーミング

シューズブランド「Rothy's」は、パンデミックを乗り越えたブランドのひとつだ。Rothy'sはコロナ流行によりすぐに、中国の自社工場でマスクの生産をし始め、当分の間は家での生活時間が増えると理解しそれに合わせたプロダクトを開発。『Mordern Retail』の取材によると、「Rothy'sは自社工場を持っているおかげで、通常だと新商品を市場に出すために2ヶ月かかるプロセスを2週間で行っている」とRothy'sのマーチャンダイジング担当者が語っている。
元々の人気商品だったフラットやドレスアップ・仕事用から、履きやすいスリッポンに注力し、新しい柄や色を出したおかげで2020年春はかなり好調らしい。パンデミックになる直前に発売した新カテゴリーのハンドバッグも、スマホの充電器が入れられたり、旅行中のユースケースを推していたが、デザインやブランディングを変更して家でビューティープロダクトを収納しやすい「バニティバッグ」として販売したのも秀逸だ。

コカ・コーラのサブスクを支える企業、増えるD2Cのアウトソース市場

コロナ前、ほとんどの既存ブランドはD2C化していなかった。今までのオペレーションをD2C化するには、流通面での課題が大きかったからだ。そのため、D2C化するには3つの選択肢があると『The Hustle』の記事でこう記されている。
1つは、Amazonなど第三者のリテーラーを活用すること。2つ目は、自社のD2Cオペレーションをゼロから構築すること。そして最後は、D2C企業にオペレーションをアウトソースすること。実は、多くの大手ブランドは3つ目のオプションを活用して、「The Hut Group(通称THG)」という会社にD2Cオペレーションを任せているそうだ。TGHのプラットフォームではサイト制作、倉庫保管、マーケティング、配送業務などをすべてまとめて行なっている。2019年には1,000社以上の大手ブランドと提携していて、彼らが製作したサイトは合計6.1億人以上が訪問している。顧客である「コカ・コーラ」は、コロナでスタジアムや映画館などリアルのチャネル販売売上が28%落ちたため、THGを活用してオンライン店舗を作り、コカ・コーラのサブスク事業「Your Coca-Cola Store」ローンチ。コカ・コーラ以外にネスレ、P&G、ディズニー、マイクロソフトなどがTHGのクライアントで、D2Cのアウトソース市場は2023年までに$156Bになると推定されている。

コロナで成長したPangaia、次の一手は”素材”

次のAllbirdsと言われているサステナブルなスエットを販売する「Pangaia」は、2020年には$75Mの売上を達成し、黒字となった。Pangaiaは自社開発し特許も取得しているサステナブルな素材を開発し、ファッション業界の著名人を創業メンバーとして抱えているため、オシャレで社会的意義があるブランドとしてパンデミックの最中、人気ブランドとなった。
『BoF』の独占取材によると、Pangaiaは、素材メーカーとしてB2B事業での成長を考えているという。特許の他に技術名に商標登録もしているため、Gore-tex、Lycra、Nylonなどの素材ブランドと似たポジショニングを目指しているようだ。今現在30ブランドほどと話しているとPangaiaは語るが、まだ公にしている取引先はない。直近ではサステナブルな素材メーカーのBolt ThreadsやMycoWorksが人気なため、Pangaiaと提携したいブランドや買収したい会社がいてもおかしくないだろう。
今後の彼らの課題は、B2B事業は時間がかかる一方でB2C事業であるスエットの人気が徐々に落ちているため、このまま会社がスケール出来るのか、さらに似た素材も出てきたなかで素材業界で優位性を作るのかといった点にあると言えそうだ。

Everlaneの次なる進化

「Radical transparency(徹底した透明性)」を2017年に商標登録までした「Everlane」はD2Cの代表的なブランド。ミッションファーストなブランドとして生まれたブランドだが、ここ数年では批判の声が多くなっている。サステイナビリティにフォーカスすると言いながら、目標に対してのアップデートも少なく、中のオペレーションとマーケティングのメッセージに矛盾があるのではないかという声が広まっている。そして元々オフラインの店舗は一切出さないとCEOが言及していたが、今では売上の大部分を実店舗に頼っている。業界のファーストムーバーだったにも関わらず、最近では遅れたブランドに見えてしまっていた。
そんな中、もう一度信頼を取り戻す動きが出ていている。2020年9月にはLVMH配下のL Cattertonから$825Mの時価総額で$85Mの出資を受けた。そして同時にナイキの経営メンバーをCMOとして採用、ユニクロのグローバルクリエイティブディレクターも採用した。『BoF』の記事では、L Cattertonのパートナー曰く、Everlaneをアメリカを代表するアパレル事業にして、10年後には$1Bの売上を超えたいと目標を立てている。そして直近では環境問題の目標設定のアップデートや社内プログラムの制度を強化して信頼を取り戻している。それが売上にも影響しているように見える。4月にEverlaneは水着ラインをローンチしたが、売上計画を90%超えたヒット商品となった。これはEverlaneとしては過去最高の女性商品のローンチ実績となった(過去の最高女性商品のローンチはデニムで初日に$1.2Mの売上を達成)。2021年の売上計画は2020年から25%増。こうした結果は、Everlaneの次なる進化を表しているのかもしれない。

DTCブランドのホールディングス「Pattern」60M調達、新たにGIRを買収を発表

Harry’s、Warby Parker、Everlaneを始めとした有名DTCブランドを手掛けきたクリエイティブエージェンシー「Gin Lane」が、ブランドのホールディングス企業「Pattern」に転向して2年。当初は3ヶ月から半年ごとに新しいブランドをローンチすることを目指し、実際にキッチン用品のEqual Partsのローンチから間を空けずに収納用品のOpen Spaceをリリースしましたが、ここに来て大きな戦略変更を行う。キッチン雑貨ブランドGIRの買収とともに報道されたのは、今後はゼロから自社で事業を立ち上げていくのではなく、既に数多あるブランド(特に200万以上あるShopifyストア)からPatternにフィットするところを買収するというもの。『Modern Retail』の記事では、過去のPatternのピッチデックが公開。買収検討の指標として、売上1,000万ドル以下で黒字、できればVCが入っていない会社に売上の0.5-1.5倍の値段をつけ、商材の種類や主力の商品数、NPSスコアなどかなり細かい指定を設けていた。

Lululemonが買収したMirrorに隠された次世代ウェルネスブランドの可能性

ちょうど1年ほど前に「Lululemon」はホームエクササイズ企業で鏡型デバイスを提供するMirrorを買収したが、実は重要な事業となっていると『Retail Dive』で報じられている。MirrorはLululemonとは別事業として扱っているが、シナジーは明らか。Lululemonからすると家で顧客とより強い関係性が作れて、ウェルネスにフォーカスしたライフスタイルブランドに進化できる。そしてLululemonの今後の戦略は特許申請を見ると理解できる。2021年以降の特許申請を見ると、アパレルデザインの申請、新しいヨガマット、そして顧客のウェルネス状態をスコアリングする申請を行っている。そのウェルネス状態はユーザーの感情を記録したり、ストレスレベルの分析、行動をトラッキングして改善するためのレコメンドが出来る特許申請となる。このリアルタイムなフィードバックを得るためには、Lululemonはおそらくバイオセンサーの領域に入り込むはず。実際に3月にセンサー付きベルトの特許申請を行った。そこでは体温や心拍などバイオメトリックスを測るセンサーと一緒に使われる可能性があると記載されていて、そのセンサーは特定の服に付け加えられるようになっている。もちろん特許申請をしたからLululemonがこの方向性に進むとは限らないが、Mirrorの買収を見ると、バイオセンサーなどを使ってよりテクノロジーベースのDTC企業になるのは自然な流れに見える。

DTC業界で$1B以上の売却エグジットが少ない理由

ユニリーバがDollar Shave Clubを$1Bで買収してから約5年、未だに異例なエグジットのままだ。コロナの影響でEC率が上がり、レガシーブランドから新しいDTCブランドのマーケットシェアが増えても$1B以上の買収事例がDTC業界では数少ない。『The New Consumer』の記事では、一部の理由はトップティアのDTC企業はVCなどから資金調達が出来ているので、エグジットの必要性を感じていないからであると紹介している。彼らが述べるには、同時に上場(直接上場やSPACも含める)してエグジットするパターンも増えているが、結果はかなり二極化している。Casperは2019年に最後にVCから調達した時価総額が$1.1Bだったのに、今は$350M以下の評価となっている。Him & Hersは2021年1月にSPAC経由で上場したが、今の株価は2月のピークから約半分になっている。Pelotonはコロナの影響で株価が急増したが、最近のリコール問題などで1月の株価から約40%下がっている。
そもそも買収想定できる会社も限られている。テック企業のFacebookやGoogleは興味がないし、最近ではAmazonやWalmartもブランド買収を行っていない。Targetは提携はするが、自社のプライベートレーベルの立ち上げの方に興味を持っていて、ナイキも買収をしない。Shopifyも中立な立場を保つためにブランドを買収していない。どちらかというと、CPG系の大手企業が買収するイメージがあるが、最近各大手CPGリテール企業が自社のDTC事業を検証している中、インフラづくりのためにDTCブランドの買収を行っているように見える。この流れを変える可能性があるとすればHarry's。$1.4Bで売却するはずだったHarry'sはアメリカのFTCに止められ、そのままプライベート企業として残ったが、Harry'sは今積極的に買収する動きに入っている。元々インハウスでブランドのインキュベーションを行なっていたが、Harry's創業メンバーはもう少し大きめなブランド名を買収候補として探していると語っている。Harry'sももしかしたら、複数のブランドを支えられるプラットフォームを作り、大手企業に挑戦できる、マルチブランドで優秀な起業家が集まったDTCスクワッドが誕生するかもしれない。

D2C企業の体験談: 大手リテーラーで販売するタイミング

D2C企業はダイレクトにユーザーと取引やコミュニケーションをするため、関係性が深まり、ユーザーの課題をより理解して改善を他社より早いスピードで対応できる。そんな重要なデータを取得できるのはメリットだが、引き換えに全米での認知度を獲得するのにより時間がかかるケースが多い。あるタイミングで卸事業を検討するのが必要になってくる。『Thingtesting』によると、CasperはTarget、Walmart、Macy's、Harry'sはTargetとBootsなど、それ以外もFunction of Beauty、Dirty Lemon、Acid Leagueなど様々なブランドが大手リテーラーで販売をはじめているという。反対に卸をするリスクも実際にある。Targetの1,800店舗に在庫を用意するのにかなりのキャッシュが必要なのと、そもそもリテーラーのバイヤーが選んでくれる確信もない。すぐに外される可能性もある。実際にTargetでの販売をやり遂げたHilmaはTargetのバイヤーを二人違うアプローチで説得したと説明して、説得する際にはHilmaのピッチや優位性を理解させるのが大事だと言っている。さらに交渉中に資金調達を実施できたのが安心材料にもなったと言う。ビューティーブランドのThree ShipsはIndie Beauty Expoというカンファレンスでバイヤーを探していたときに、ネームバッジを隠してた女性と話した際に、その女性がたまたまWhole Foodsのバイヤーだったそうだ。結果数ヶ月間ブランドの素材やソースしている工場などのディテールを共有した後、Whole Foods 45店舗で販売することになった。

多くのD2C商品のデザインや開発は実はアウトソースされていた?

ペットファーストの犬小屋をデザインするFable、キッチンウェアのGreat Jones、ベビーチェアのLaloなどは実は同じ会社が商品開発を行なっていた。その会社がDoris Devについて『The Strategist』の記事で紹介されている。Doris Devは、プロダクトデザイン、開発、素材のソーシング、製造などを担当する代理店であり、2017年から多くのVCやデザインエージェンシーなどからの紹介でD2Cブランドと提携している。D2C起業家の多くはマーケティングやブランディングが得意だが、製造やプロダクト開発のノウハウを持っているわけではない。プロダクトカテゴリーによっては製造設備を自社で行うには数億円かかるため、既にサプライチェーン企業とネットワークがあるDoris Devと組むのは合理的ではある。Doris Dev以外にもAwayやCarawayなどの商品開発を行なったBox Cleverも人気。

プロダクト開発などのアウトソーシング自体は昔から行われていることだが、今までは多くのエンドユーザーは自社で素材のソーシングから開発プロセスを細かくブランドの創業メンバーなどが理解していると勘違いしていたかもしれない。ただ、プロダクト開発が外注されていれば、実際にどれだけ創業者は自社のミッションを信じて、本当に信頼できるブランドを作れるのか疑いが生まれる可能性もある。例えばAwayの最初のスーツケースは他のスーツケースブランドが開発されていた施設が作っていた。今後はよりサプライチェーン周りを可視化する需要が生まれるかもしれない中で、ブランディングだけではなく、商品開発も厳しく見られるだろう。

D2C企業のマーケティングトレンドは「パートナーシップ」

最近多くのD2Cブランドは他のブランドと提携したパートナーシップマーケティングを行なっている。プロダクトをバンドル化したり、コラボ商品を出す会社が増えている。『Modern Retail』で紹介されている事例は、レンタル家具のFeatherと飲食のサブスクサービスのDaily Harvestと提携して、Featherのアウトドア家具をレンタルする最初の100人のユーザーにDaily Harvestのボックスを無償で提供するキャンペーンを行った。オリーブオイルなどを販売しているBrightlandは水耕栽培キットなどを販売するLettuce Growと一緒にプロモーションを出した。Lettuce Growで特定の水耕キットを購入すると、Brightlandが選んだ野菜の苗とBrightlandのオリーブオイルがおまけでつくようにした。FacebookやGoogleの広告単価が上がり、ユーザー獲得コストが上がる中、パートナーシップは新しい獲得チャネルとなっている。

D2Cブランドが語る、飲料領域で目立つ方法

コロナの影響で次世代飲料ブランドのOlipop、Sunwink、SwoonなどがWhole FoodsやKrogerなど卸事業に展開出来たが、『Modern Retail』によると、コロナ明けして競合が増えている中でより大きめなマーケティングキャンペーンを行ったユーザー獲得とリピート率を増やそうとしている。Olipopは今までスパークリングウォーターが好きなユーザー層をターゲティングしていたのを、直近のコマーシャルでより広い層を狙うのが明らかになった。直近のマーケティングキャンペーンではPepsiの過去のコマーシャルをリファレンスしたレガシーブランドに対抗するヘルシーな商品を提供しているポジショニングを行なっている。さらにSMSキャンペーンをスタートして30分以内で$30,000分の売上を作れた。無糖の飲料メーカーのSwoonは夏の期間中にサンプリングイベントを行なってユーザーを獲得する予定。リテーラーだけではなく、ジムやフィットネスセンター内でもサンプルを提供して、サンプルに載っているQRコードを活用してSMSでユーザーとコミュニケーションを取る予定。このようなパートナーシップをうまく活用するスタートアップが飲料スペースに入り込んでいる。直近だとGatoradeのヘルシーオプションとしてブランディングしているBarcodeがバスケリーグと提携した。競合が増えている中、初回購入だけではなく、多くの飲料ブランドの課題となるのはロイヤリティが高いユーザー層を作ること。どういう風に毎日のように飲んで購入してくれるブランドになれるかを各ブランドが考えなければいけない。

目標はレストラン売上を50%に、名物シェフが目指すD2C事業

Netflixの『アグリー・デリシャス』などに出演したことでも有名なシェフのデイビッド・チャンが経営するレストラン「Momofuku」は、コロナの影響で売上で一気に減ったことで、新しい事業展開を決意した。『Modern Retail』によると、レストランからクッキングブランドへとシフトすることを決めて、目標としてはレストラン以外の売上を全体の50%にすることだった。彼ら以外にも、CarboneやBubby's and Blue Stripesも自社のCPGプロダクトをローンチ。未だにコロナの影響を感じているレストランからすると、生き延びるためにはこのような進化が必要だった。Momofukuに関しては2020年秋にソースを販売していて、そこから調味料などを販売。当時は自社サイトのみで販売していたのが最近ホールフーズやターゲットでも販売が確定。さらに8月にローンチした麺は7万人のウェイトリストを達成して、ローンチして2日で完売。

レストラン企業からするとCPGは今までとは違う課題を解決しなければいけないことになる。良い見た目のパッケージや卸のネットワークを作らなければいけない。そんなレストランの商品を一般消費者に提供するGoldbellyなどは今年の5月時点で850社をオンボーディングしている。特にこれから人材不足でレストランスタッフの採用が難しくなっている中ではD2C事業に展開するのが重要になってくるかもしれない。

ホールディングス化するD2Cブランド

今まではWarber ParkerやBonobosなど独立ブランドとして運営するのが普通だったが、最近は複数ブランドを一つの会社の配下に入れるトレンドが出てきている。これによってリソースとノウハウを統一して効率的にスケールを目指そうとしている。Harry'sはメインブランド以外にFlamingo、Headquarters、Cat Personなど複数ブランドを持っていて、4月の$155M調達ではブランドを自社ポートフォリオに追加すると発言している。Very Greatという会社は買収ではなく自社でブランドをインキュベートする方針になっていて、最初にW&Pをローンチしてから今は犬向けのブランドWild OneとホームテックブランドのCourantをローンチ。最近調達したPatternは自社でOpen SpacesとEqual Partsを作り、今後は買収でブランドを増やしたいと言っている。その他にこのような取り組みをやっている会社はWin Brands。

ホールディングス化する一つのメリットは統合されたオペレーション。人事やロジ周りを配下にあるブランドが共通で使えるようにすると、効率的になる。Win Brandsはカスタマーサポート、プロダクトソーシング、配送周りなど12部署で複数ブランドをサポートしている。各ブランドにはプロダクト開発とコミュニティ開発に注力してもらうようにしている。さらに複数ブランドを抱えているとより大手リテーラーとの関係性作りがうまく行ったり、同じグループ内のブランドがすでに開拓しているチャネルにも入りやすくなる。今後も$10M〜$20Mぐらいの黒字化している事業がどんどん買収されるかもしれない。

ところで、D2C企業のエグジットはどうなってるの?

『Retail Dive』がD2C企業のエグジットについての特集をしている。過去10年間流行ったD2C企業がようやく大型ビジネスになり、会社としてエグジット(上場か売却)するタイミングに入った。大体5〜10年のブランドだと少なくとも$40Mの売上になっている。2016年〜2020年では毎年100社ぐらいがエグジットした中で、大手リテールブランドなどがD2Cブランドを買収するパターンが多かった。今までだとJet、Supreme、Dollar Shave Clubなどがユニコーンエグジットをしている。ただ、最近では大手D2C企業は上場市場、SPAC経由での上場、PE企業からのバイアウトする会社が増えているよう。2021年のD2Cブランドのエグジットを見ると、66社が売却、38社がバイアウト、19社が上場申請している。

カテゴリー支配を考えるD2Cブランド

2016年にローンチしたD2Cブランドは当時2種類のプロダクトしか販売しなかった。5年後の2021年では未だにその2つのプロダクトが人気商品のままだが、Rothy'sはその2つのプロダクトを活用してプロダクトのラインアップを拡大した。2018年に子供向けの靴に展開、2020年にはハンドバッグ、2021年にはアクセサリーとメンズ向けの靴を販売。2020年だけで新規プロダクトを30個販売しながら黒字化を保てた。Rothy's以外にも1つや2つのプロダクトからスタートしたD2Cブランドの多くはライフスタイルブランドへ進化した。Awayはスーツケースからトラベル領域のプロダクトへ、Casperはマットレスからシーツやベッドフレームまで、Starfaceはニキビパッチからスキンケアプロダクトへと展開。

『Thingtesting』は、一つのプロダクトからライフスタイルブランドになる理由について話している。まずはよりユーザーが色んな形でブランドと接する機会を与えると認知される。Rothy'sは2020年に50万人の新規顧客を獲得したが、多くは新しいプロダクトのローンチで入ってきたとのこと。今年上場したAllbirdsもブランド認知を上げるために新しいプロダクト展開をすると言っている。

D2Cブランド…?よくみると大手企業

2021年11月初旬にあるヴィーガンチーズブランドがローンチした。ビーガン用の「牛乳」を作るPerfect Dayを活用した「Bold Cultr」は今風のD2Cブランドっぽい見た目やスローガンを抱えているが、サイトをよく見ると大手食品会社General Mills配下のブランドなのが分かる。General Millsでは自社ブランドの育成チーム「G-Works」がこのように若者層へのリーチと会社として新しいマネタイズチャネルを見つけようとしていると『Thingtesting』で伝えている。General Mills以外にもP&Gはインスタ映えするお掃除ブランドNBD Cleanを2020年にローンチしたり、CloroxはサプリブランドObjective Wellness、ColgateはZ世代向けの歯磨き粉ブランドCOをローンチ。今まではWarby Parker、Glossier、Awayなどがオンライン上で販売するノウハウを持っていたのが、ようやく大手ブランドが追いついてきた。大手ブランドからすると良いプロダクトを開発するのではなく、どういうパーソナリティをブランドにアサインするかが一番の課題になる。P&GのNBD Cleanは社内で10週間かけてローンチ、Colgateのイノベーションチームでは1年で7つのプロダクトをローンチする勢いで動いている。

D2Cモデルへシフトする大手リテールブランドが増えている

10年前はデパートがイケてるアパレルを購入する場所になっていたのが、今はブランドは自社で販売するだけで十分と気付き始めている。ナイキの2010年の売上を見ると、D2C売上はたったの15%しか占めてなかったが、2020年ではD2C売上が全体の35%を占めていて、直近の決算発表ではD2C売上が全体の40%を占めるようになった。ナイキとしては卸パートナーの数を減らして、自社店舗とデジタルチャネルにフォーカスしたのが理由だが、ナイキ以外にも大手ブランドが卸に頼るのを頼るのを止めようとしている。特にスポーツ系のブランドはこのシフトをリードしていると『Retail Dive』が伝える。もちろんまだFoot LockerやDick'sなど特化型な大手リテール店舗は重要視されているが、デパートなど幅広い商品カテゴリーを扱っている店舗ほど提携しなくなっている。ナイキは特に特殊な体験を提供しない店舗との関係性を切っていて、直近ではUrban outfitters、DSW、macy's、Zappos、Dillard'sなどが含まれる。Adidasは2025年までに売上の半分をD2C事業から来ると目標を立てていて、それに対応するサプライチェーンや在庫管理の準備を行なっている。そしてUnder Armourは2,000〜3,000卸店舗との関係性を閉ざすと発表して、2020年Q4ではD2C事業が11%成長した。

今まで90%〜95%の売上が卸だったブランドも徐々に自社店舗を出したりしている。Wilsonはポップアップを過去何回か試していたが、今年からリアル店舗をオープン。Crocsも売上の半分以上がD2C事業からきていて、Levi'sもD2C事業を次の10年で売上の6割にしたいと語っている。もちろん飲食系のブランドやパーソナルケアブランドなどは卸に頼る姿勢を示しているので、カテゴリーによって変わるが、業界によってはD2C化するブランドが多くなっている。

D2C業界のトレンド in 2022

去年はコロナやサプライチェーン問題があった中、多くのD2Cブランドが上場。『Retail Dive』では、2022年の6つのトレンドを考察している。ひとつは、エグジットとD2C企業のトレンド。去年にはSupergoopBeyond YogaSweaty BettyBillieなどが買収された。D2Cブランドが成熟する中でエグジットの数も上がると予想される。同時に上場企業が増えた中でより黒字化やエコノミクスにフォーカスするべきプレッシャーをブランドが感じる年になると思われる。そしてD2Cブランドとはスタートがオンラインだけかもしれないが、オフライン展開が必須になってくるのが当たり前になる。リアル店舗は一つのマーケティングチャネルとして見られる。そのためD2Cチャネルだけではなく、卸チャネルのミックスがより要求される年にもなる。大手企業のNikeやアンダーアーマーは卸からD2C事業を強化、D2Cブランドは卸チャネルを強化する形になりそう。ブランドも成熟するとともにコンソリデーション化してPattern、Win Brandsなどホールディングスグループするトレンドも続くと思われる。最後にブランドとして成長するためのマーケティング戦略が劇的に変わらなければいけない年になる。

Shopify・D2Cコマースの今後の課題

https://spreecommerce.org/hard-times-ahead-for-dtc-ecommerce-and-the-rise-of-a-dropshipping-marketplace/

D2C業界全体のバロメーターとなるのはShopifyと言っても過言ではない。そんなShopifyを見ると、2021年では多くのテック企業と同じように株価がかなり上がったが、過去半年間で52%下がって、2020年5月の株価と同じぐらいになってしまった。株価が落ちた大きな要因となったのはコロナ期間が終わりそうなこと、そしてインフレによっての消費者行動の変化の恐れ、そしてマーケティングコストの増加。特に最後のマーケコストの増加はShopifyとしてかなり痛いことと『spree』が伝える。平均的なShopifyブランドのGMVは年間で$50Kあたり、月次だと$4,000ぐらい。利益率が10%〜20%と考えると、マーケコストの変動によって事業にかなり影響する。D2CブランドからするとShopifyは恐らくどのプラットフォームよりも優れているのは間違いないが、大きな課題を同時に抱えている。それがディスカバリーがないこと。Shopifyブランドは基本的に自社でユーザーを引き寄せないといけない。Shopifyの株価はある程度Metaの株価と相関している一部の理由は、FacebookやInstagram広告のパフォーマンスや価格によってShopifyブランドの成功・失敗が影響されるから。そんなShopifyはディスカバリー要素を強めるためにTikTok、Facebook、Googleなどと提携してトラフィックをShopifyブランドに誘導させるために力を入れているが、ここのブランドのユーザー獲得問題は完全に解決されない。今後GoogleがAppleと同じように広告制限を行うと、さらにShopifyブランドは影響される。逆に半分以上の商品検索シェアを抱えるAmazonはディスカバリーの強みをここで活かせている。もしかしたら今後より多くのブランドはAmazonなどマーケットプレイスでのドロップシッピングを行うかもしれない。

D2C企業の調達とスケールの壁

2021年7月にGlossierは、$80MのSeries E調達を発表してから自社のPoSや技術開発やディストリビューションチャネルにフォーカスしすぎて、直近でGlossierが3分の1の従業員を切った。一方で同じタイミングでSavage x Fentyが$120M調達、Skimsが$240M調達を発表している。3社とも今のD2C企業がスケールするための課題とトレンドを象徴している。ビューティー業界では徐々にブランドのECサイトからマーケットプレイスサイトにシフトし始めていると『2PM』が特集している。Walmartは100社以上のビューティーブランドと提携してサイトで販売。SephoraはKohl'sと提携して、UltaはTargetと提携している。逆にGlossierは自社のブランド体験をコントロールするために提携を避け、2018年と2019年にはGlossier CEOのエミリー・ワイスは「AmazonではGlossierを販売しない」と断言していた。それが今ではアメリカのAmazonに行くと、複数のGlossierプロダクトを購入できるようになっている。

Glossierと同じように自社のカスタムプラットフォームを開発していたSavage x Fentyだが、パートナーシップや提携に関してはGlossierよりオープンな姿勢を見せている。Amazonと一緒にファッションショーを行なった。Skimsはオリンピックでアメリカ代表向けの下着を開発したり、Fendiなどともパートナーシップを提携している。各ブランドは色んなチャネル戦略を今後試すはずなので、成功するとは思われるが、今後ブランドがどのようにスケールするべきかが課題として残る。今までAllbirdsやWarby Parkerなど大きめな上場は出来たがまだ赤字なのが懸念されているブランドもいる。逆に最近$1Bの時価総額で調達したAthletic Greensは$200Mの売上run rateまで調達せずに成長した。今後の評価軸がマーケットシェアなどではなく、黒字化しながらスケールできることになりそうだ。


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