見出し画像

リテール業界におけるWeb3、DAO関連ニュースまとめ

CEREAL TALKで毎週お届けしている海外トレンドの中から、Web3やDAO、メタバースにまつわるニュースをまとめてご紹介。

低価格デジタルファッションの可能性?

『BoF』によるとMetaは2022年6月に、バレンシア、プラダ、トム ブラウンのデジタルスキンの販売を開始。同社の新しいMeta Avatars Storeで1着8.99ドルで購入できる。Metaのマーク・ザッカーバーグとファッション・パートナーシップ担当ディレクターのエヴァ・チェンが先週金曜日にこの動きを発表したとき、多くの人が議論した。

ラグジュアリーのトップブランドは、ファッションやアクセサリーだけでなく、化粧品のような低価格で量の多いカテゴリーにまで商品を広げ、オートクチュールを頂点に、既製服、革製品、眼鏡、香水、化粧品へと広がる商品のピラミッドを形成し、数十億ドルのグローバルビジネスを構築してきた。10万ドルのクチュールガウンは一般の人には手が届かないが、その分、高級感や品質の高さを印象づけ、口紅などの低価格帯の商品を数百万人の消費者に販売し、高い利幅を稼ぐことができる。加えて、近年ではストリートウェアを商品ピラミッドに加え、若い消費者へのアピールによって成果を上げている。ここでキーとなるのは、この商品ピラミッドの中でデジタルスキンがどの位置付けになるかということ。デジタルスキンやNFTのような資産は、創造性とデジタルクラフトマンシップに彩られたものであり、顧客の心をつかむ可能性を秘めている反面まだまだ未知な要素も多い。

懸念点は、デジタルスキンを大量に販売することで何千万人もの人たちが、そのバーチャル・ルックを身につけたとして、ラグジュアリーブランドは魅力的なのかと思ってもらえるかどうか。ソーシャルメディアと同じように、顧客データの管理をMetaのようなプラットフォームに委ねることは、ブランドにとって意味があるのかというところ。

今や、デジタルグッズのチャンスは広告以上であるというコンセンサスが高まっている。ただ、ラグジュアリーのビジネスモデルのどこに当てはまるのかは、各ブランド色んな視点からやり方を模索している最中。最終的には、ラグジュアリーブランドはより幅広いデジタルグッズを開発するかもしれない。

Virtual Fashion for $8.99 Isn’t the Answer

GucciのRoblox展開の進化

Gucciはどのラグジュアリーブランドよりもゲームやバーチャル世界に対して前向きに動いている。2021年5月に一時的なRobloxでポップアップ体験を出したあと、ZEPETO、どうぶつの森、Simsなどでもバーチャルアイテムや体験をローンチした。そして直近ではRobloxに常時体験「Gucci Town」を出した。ビンテージバッグのデジタルバージョンの購入をするためにGucciが開発したミニゲームや宝探しゲームに参加しないといけない。そして徐々にGucci Townの体験は進化するようになっている。
Gucciはさらに年末あたりにWeb3メタバースプラットフォームThe Sandboxでもバーチャル空間をローンチする予定。Gucci CEOのマルコ・ビッザーリ氏は「Web3はただデジタルスニーカーを売るためのものと思う人は可能性を見過ごしている」と語る。初めてデジタル上で本当のコレクタブルの概念が作る可能性を感じるからこそ、GucciはRobloxや様々なプラットフォームで積極的に体験を作っている。

When it comes to Roblox, Gucci is not playing around

メタバースのリアリティを支える嗅覚テクノロジーとは

Nikeの買収や村上隆コラボのCloneXなど昨今話題の尽きない、CEREAL TALKではおなじみのデジタルファッションブランド「RTFKT」が、高級香水ブランドのByredoと共同開発するメタバース用フレグランスの構想を発表した。これに関連して今週は、仮想現実メタバースにおける嗅覚へのアプローチを紹介したい。
人の記憶や認知と嗅覚情報は深く結びついている、それゆえバーチャル世界への没入感を演出するうえで、匂い香りを重要な要素と考える企業は少なくない。例えば、米国はバーモント州に拠点を置くOVR Technologyは、VRヘッドセットに後付できる嗅覚再現デバイス「ION(イオン)」を開発。カートリッジにセットされた9種の成分の組み合わせを変え、数百種類あまりの香りを生成する事ができる。現在、この技術は医療の現場で試験利用されており、2023年の一般消費者向けの販売を見据えている。
一方、これまでも嗅覚に着目した類似企業が取り沙汰されることは多々あったが、劇的な普及に至った例が未だないのも事実だ。はたして「リアル」であることの条件とはなんなのだろうか。現実をバーチャルに置き換える上で、これまで当たり前に感じていた物事を再定義するこうしたプロセスが面白い。

Meet the companies trying to bring smell to the metaverse

モノのメタバース?マイクロチップを使って物理的な商品をNFTに変換して販売

『Fast company』によるとAmericana Technologiesは、マイクロチップを実在するブランド品やアート作品などに埋め込むことで、ブロックチェーンの力が加わってNFTとして販売。商品ごとに所有権の証明、公的記録として所有権の全過程を提供するデジタル台帳が付けられる。同社は690万ドルのシード資金調達ラウンドを終了したばかりでまだローンチしていないが、夏に公開予定。
これは、自分がインターネット上で購入した商品の信用度を高める方法になると思うが、それ以上に機能的な役割も果たす。例えば、アートコレクターの分野では本物であることの証明となり、作品の偽物を販売する犯罪ネットワークを阻止することもできる。ラグジュアリー市場では、偽物の流通を食い止めることができる可能性も。GUCCIのバッグやKAWSの作品を見知らぬ人から買っても、それが本物であることが仲介者なしでわかるようになる。ブロックチェーンの利点の他にも同社のNFTAユニバーサルチップは、リアルタイムのGPSデータでWeb 2.0レベルのセキュリティを提供するという。
Americana Technologiesによると、このチップには仲介者を介さずに所有権やロイヤリティを移転する方法も含まれているそう。イーサリアムブロックチェーンのみ対応しているが、ソラナや他のチェーンも検討中。現在ウェブサイトには、Gap x Kanye Westジャケット、ポケモンカード、パブロ・ピカソの絵画「海辺の人物像」などが掲載されている。これからはアート、デザイナーズ家具、限定ストリートウェア、車などジャンルの幅は違えど、熱烈なコレクター層をターゲットに設定するそう。
IoTがもたらした革命から、Web3ではそれがMetaverse of Thingsへとどう変わっていくのか過程が期待される。

Physical objects turned into NFTs with blockchain microchips

RTFKTとNikeのデジタルスニーカー「Cryptokicks」

Nikeが2021年に買収したデジタル版SupremeのRTFKTと初のデジタルスニーカーをローンチ。Nike Dunkスニーカーをモデルとして、「Nike Cryptokicks」と呼ぶ。RTFKTが2021年にローンチしたNFTアバタープロジェクト「CloneX」所有者に対して2022年2月にMNLTHという箱のようなNFTを無償で提供したが、そのMNLTHを引き換えにCryptokicksをもらえるようになる。Cryptokicksとしてはベースになるスニーカーだけではなく、そこに組み合わせられる8つのデザインがある。各スキンはさらに進化できるようになっていて、今後RTFKTの取り組みなどに参加するとおそらくポイントをもらえて、そのポイントでスニーカーをアップグレードできるようになると思われる。直近ではNikeはクリプトウォレット、オンラインコミュニティ用の仮想通貨、クリプトアセットをメンバーにあげられる技術、オンラインの宝探しゲームなどの商標登録も行なっているので、今後よりメタバース展開を期待できそう。

Nike and Rtfkt take on digital fashion with first “Cryptokick” sneaker

GUCCIがクリプトを受け入れた

GUCCIが、米国の一部の店舗でビットコイン、イーサリアム、Dogecoinなどのデジタル通貨による支払いを受け入れることになったと『BoF』は伝えている。GUCCIは今月末から、米ドルにペッグされた5つのコインとともに、ビットコイン、イーサリアム、ドージコインを含む10の暗号通貨での支払いを受け入れると発表した。パイロットプログラムでは、マイアミ、ロサンゼルス、ニューヨーク、アトランタ、ラスベガスの一部の小売店に限定される予定。この動きは高級ブランドがブロックチェーンやメタバースに関連するツールの実験に取り組んでいることに影響を受けたもので、話題性の高い分野の開拓を目指すとともに、技術の早期採用者のコミュニティ間でGUCCIの知名度やそこでの仲間意識を高め、個々が保有する暗号通貨の価値を高めることを狙ったもの。
しかし、コインの変動性、従来の通貨に戻す際の取引手数料、トークンの作成と転送に必要な環境を配慮した体制づくりへの懸念、受け入れに対する警戒などの要因により、他ブランドはこのテクノロジーの採用を控え続けているという一面も。暗号通貨による支払いを受け入れることは話題性はあるものの、これらのリスクを上回るメリットがあるのかどうかがキーになりそう。

Gucci to Accept Cryptocurrency

日本でもRobloxを試すべきなのか?

2004年にローンチしたRobloxは今となっては若者層が集まる場所となっている。2018年では1,200万人のDAUがいたプラットフォームだったのが上場した2020年では3,110万人、そして2021年末では4,550万人まで成長した。54%のユーザーが13歳以下だが、Gucci、Nike、Forever 21など多くのブランドがRoblox上で体験をローンチしている。今後重要になってくるのはただの店舗体験を提供するだけではなく、よりゲーミフィケーションなどを組み込んだ、リテンションが高まる体験。Forever 21は「Forever 21 Shop City」をRoblox上でローンチしたが、ユーザーは自分のデジタル店舗を運用するコンペに参加できる仕組みだった。コンペ型にすることによって、毎日ブランドとインタラクティブに過ごすユーザーが増えた。さらにVansやForever 21だとリアルで商品購入もできるようにしているので、ブランドとしては認知だけではなく、実際に売上を作れるチャンスにもなる。

Should more retailers be on Roblox?

MeUndiesのNFT展開の批判について

多くのブランドがNFTやWeb3展開をローンチしているニュースが流れているのを見ると、NFTがメインストリーム化して需要がかなりあると思い込んでしまう可能性がある。
2022年1月末にD2CブランドのMeUndiesはNFTトレンドに乗って人気NFTコレクションのBored Ape Yacht Clubにジョインしたと発表。Bored Apesは有名セレブやテック業界からかなり支持されていて、MeUndeisはその流れで自社のTwitterプロフィール写真をMeUndiesのロゴを含めたBored Apesアバターへと変更した。数時間以内にそのツイートが263リツイート、1,000以上の返信があったが、ほとんどが批判コメントだった。環境に優しい素材を扱っているMeUndiesがこのようなことをするのは矛盾しているのではないかなどのコメントが集まる中、最も人気だったコメントはMeUndiesサブスクのキャンセル方法を教えるツイートだった。NFTは環境インパクトが悪いのではないかと言う人もいたり、コミュニティを経済化することによって汚すことが特に批判されやすい。MeUndiesとしてはTwitterプロフィールを元に変更して、NFTについてその後話していない。

‘Huge disappointment’: Inside the customer backlash to MeUndies’ NFT announcement

アメリカD2C業界がWeb3に注目しはじめたきっかけ

去年末からアメリカ中ではNFTなどWeb3がバズったが、これは金融業界だけではなく、アメリカのD2C業界の起業家やVCも影響されている。シナボンなど飲食店を複数持つFocus Brandsの元COO、ユニリーバに買収されたデオドラントブランド「Schmidt's Natural」元CMOのクリス・カンティーノなど多くの業界のインフルエンサー的な存在のアバターを見ても、NFTアバターになっている。去年初めには、クリス・カンティーノはTwitter上でD2C業界のtipsや戦略をスレッドとして紹介していたのが、今ではほとんどのツイートがWeb3関連になっている。彼がWeb3にフォーカスし始めた一つの理由としてはC向けブランドの投資がかなりレッドオーシャン化されたからと『Modern Retail』の取材で語る。誰でもShopify経由で店舗を作れる中で、CPGブランドへ投資するのはよりリスクが高くなっている。それと比較してWeb3領域は人気だがまだ競合が少ない。そしてWeb3サービスのマージンの方がCPGブランドより良いケースが多い。
ブランドとしてはWeb3領域のコミュニティ要素を見るべきとよく言われる。NFTやブロックチェーンを活用したロイヤリティプログラムやメンバーシップ機能を作ることを検討するべき。ブランドエバンジェリストのコミュニティを作り、ユーザーがオーナーシップを持ってブランドプロモーションしてくれる世界を作る戦略が大事なのかもしれない。そう考えると、Web3のカルチャーはここ2〜3年のD2Cトレンドと変わらず、ブランドのカルチャー・コミュニティ作りにフォーカスするブランドが勝つことを示している。

Why DTC Twitter pivoted to Web3

ファッション業界に進出するDAOは何をもたらすのか?

テックやメディアの文化批評を扱う人気ニュースレター「Dirt」が先月DAOを立ち上げた。彼らは、課金や寄付金を集めるのではなく、独自NFTを販売し、購入者にアートワークはじめ編集方針などの議決権を与える形で運営。このように出資だけでなく、能動的なコミュニティとして機能する自律分散型組織のDAOは、ファッションの舞台でも資金調達、生産方法等に変化にもたらすと『BoF』は伝える。
デジタルファッション領域への支援をする「Red DAO」では、2021年11月の発足以来、ドルチェ&ガッバーナのNFTコレクションの購入を皮切りに、デジタルファッションハウス「The Fabricant」など投資を積極的に行っている。このDAOも専用トークンを購入することで投資検討やリクルーティングに対する議決権を獲得できる。Red DAOのメンバーであり、Magnetic Capitalのマネージングディレクターのミーガン・カスパーは、「デジタルファッション領域において一人が単独でできることはそう多くないが、50人以上が集まることで大きな影響力を持ち得る。」と話す。
また、若手デザイナーのジェレミー・カール、ユージン・アンジェロが所属するデザイン・製造DAOでは、スマートコントラクトを通じてサプライチェーン全体を管理することで、製造と調達の透明性を担保しているだけでなく、クリエイターが製造部門に対してより大きな裁量権を持つことを可能にしている。
一方で、法整備が未熟であるがゆえのリスクが依然あることも事実だ。DAOを通じて知り得たNFTを、投票が完了する前にメンバー個人が先んじて購入してしまうといったケースも考えられる。中央集権でないことや、人材の流動性はDAOの強みであると同時にリスクをはらむ弱みであることも理解しなくてはいけない。

DAOs Are Coming for Fashion. What Are They?

メタバースファッションウィーク、ハイブランドvsデジタルデザイナーの構図に

メタバースに出現した2つのファッションウィークは、新しいデジタルクリエーターに応えるものとファッションの守旧派にスポットを当てるもので、異なるアプローチをとっている。『GLOSSY』によると、この分裂は、メタバースにおいても業界の構造を変えることの難しさを示しているという。
Crypto Fashion Week」では史上初のメタバースファッションイベントとして2021年にスタートし、パンデミック中にデジタルファッションの可能性を見出した多くのデジタルデザイナーのスキルと才能にスポットライトを当てた。一方でDecentralandと分散型ネットワークBoson Protocolが運営する別のメタバースファッションイベント「Metaverse Fashion Week」では、ドルチェ&ガッバーナやエトロなどメタバース展開に取り込んでいる。ブランドにとって、メタバース界への参入は従来のファッションイベントから角度を変えてどう魅せるかを思考することが求められる。そのうえでDAOのサポート、没入型体験のために作られた専用ワールド、デジタルデザイナーへのさらなるフォーカスといった機能はこれからもさらに重要視されるだろう。

As 2 metaverse fashion weeks take shape, it's luxury brands vs. digital designers

Web3 x コマースの未来

Web 2.0のブランドがWeb3化するときによくあるユースケースはロイヤリティプログラムや商品の認証などだが、Color Capitalのクリス・カンティーノは、他にもユースケースがあると『Forbes』で語る。一つは、店舗内の購入をインセンティブ付けさせるためにNFTを一緒に販売すること。例えばGAP店舗で購入するとYeezyのNFTがエアドロップされるなど。さらに顧客のコホート型のNFTも便利かもしれない。Nikeなど新しいコレクションや商品をドロップしたときに最初に購入したユーザーに対してNFTを提供すれば、そのコアユーザーにポイントやNFTなど何年にも渡って報酬を提供できる。さらにユーザーがより購入データや持っているNFTデータが公開されて集計するとニッチコミュニティなどが立ち上がり、そこに対してのターゲティングされた販売なども可能になる。まだこれからWeb3 x コマース事例は増えると思われるが、同時に課題はいっぱいある。環境問題やセキュリティー問題は改善されているが、オンボーディングやワークフローの改善がまだ必要。進化し続ける中、ブランドがどのタイミングで入るべきか考えるのは重要。

The Future Of Commerce + Web3: A Convo with Chris Cantino

来るべくして来た Nikeのメタバース

Nikeは常に新しいイノベーションの最先端に立っている。もしそうでないとしたら、自社の強みであるマーケティングをうまく活用して勝ち抜く戦略を抱えている。そのおかげでNikeはNBAからスケボーまで幅広いスポーツ領域でトップブランドになっている。NikeほどWeb3とメタバースに準備していたブランドはいなかったかもしれない。『2PM』では、ブランドパワー、セレブやスポーツ選手との関係、とてつもなくロイヤリティが高いファン、そしてSNKRSアプリなどを通してデジタルプレゼンスを上げてきたNikeはこの瞬間のために準備をしてきたと紹介している。
例えば、卸事業を小さくしてD2C化したのも、ミドルマンを外すWeb3的な考え方。2021年11月にはRoblox上でバーチャル世界を立ち上げて、12月にデジタルファッションブランドの「RTFKT」を買収。Nikeはメタバースでの先端を切るための買収であり、メタバースの中では今までNikeが行ってきたブランドの作り方、プロダクトの作り方が変わる・進化すると理解していたからこそ行った買収だった。今後も買収などは続けるかもしれないが、Nikeはどのブランドよりも一歩リードした状態でメタバースに踏み込むことになる。

Crypto Kicks and the Metaverse

ブランドのメタバース展開を支えるある代理店の学び

去年末のNikeのRTFKT買収、GucciやVansのRobloxのバーチャル世界の展開によってどのブランドもメタバース的なことを試すプレッシャーを感じ始めていると『Vogue Business』が伝える。そんなブランドのメタバース展開を支援している「メタバースエージェンシー」が出すアドバイスとしてはフィジカルな物を再現することを考えないこと、長期的にやり続けること、そしてNFTなどを顧客関係構築ツールとして考えること。メタバースではモールというフィジカルでは当たり前だった概念が覆される。ブランドとしてThe SandboxやDecentralandのバーチャル土地やCyberなどの新しいスペースを理解するのが必要。長期的に、プラットフォームネイティブに考える必要があるため、代理店「Virtual Brand Group」などはブランドのメタバースライセンスを取得している。Virtual Brand GroupはForever 21のRoblox世界をローンチしたり、Forever 21のサイトでRobloxアイテムを販売するようにしている。重要なのはこれを一時的なトレンドだけとして見ないこと。次の世代はRobloxなどバーチャル世界で多くの時間を過ごしているため、ブランドとしてはNFTなどバーチャルグッズ・世界などを通して顧客と出来るだけ深い関係性を築くことを心がけないといけない。

Navigating the metaverse? The new agencies talk what to watch


クリニークのコアファン向けたNFTキャンペーン

スキンケアブランド「クリニーク」がNFTを公開。しかし、それを販売するのではなく、ソーシャルキャピタルとして提供することを考えていると『Vogue Business』が伝える。クリニークのロイヤリティプログラム参加者が、InstagramやTikTok、もしくはTwitterで、キャンペーンのテーマでもある「オプティミスト(楽観主義者)についてのストーリー」をシェアすると抽選でNFT「Meta Optimist」をもらえるかもしれない。NFTをもらった人は人気商品「Black Honey」など10年分もらえるのだ。ロイヤリティプログラムに参加しないと、NFTをアクセスできないことによって、登録を増やし、さらにNFTを金銭的な物ではなく、ユーティリティがあるものに変えるのは非常に魅力的だ。ここ最近ではジミー チュウやHUGO BOSSなどフィジカルなプロダクトに繋がるNFTを販売し始めたが、さらにブランドとしてより重要になり始めているロイヤリティプログラムと結ぶ戦略は今後増えてもおかしくない。クリニークとしては、NFTの値段設定をしないことが重要だとEsteé LauderのCIOが語っている。

Clinique’s first NFT ties to loyalty and products as uses expand

2030年までにラグジュアリーへのデジタル需要は$50Bに

モルガン・スタンレーによると、ファッション・ラグジュアリーブランドへのデジタル需要は今後も伸びて2030年までに業界の市場規模を$50B増加と予想。今までのラグジュアリーブランドのデジタル売上は大したことなかったかもしれないが、それはこれから変わると思われる。メタバースを開発するには何年もかかるかもしれないが、NFTとソーシャルゲーミングは短期的に売上を作るチャンス。今だとRobloxでは5人に1人がアバターを毎日アップデートしているので、多くのラグジュアリーブランドはゲームやメタバースプラットフォームとの連携を検討している。Dolce & Gabbanaの直近のNFT販売では$5.7Mの売上を達成。特にプレタポルテ、レザーグッズ、靴などを販売するソフトなラグジュアリーブランドの方がメタバースとの相性が良いそうだ。

Metaverse: A $50 Billion Revenue Opportunity for Luxury

Gucciの最新デジタルストア「Vault」

「Vault(ヴォールト)」という言葉が大好きなGucciクリエイティブディレクターのアレッサンドロ・ミケーレは、Gucciの新しいコンセプトストアにそのままVaultという名前を付けた。Vaultのコンセプトは「タイムマシーン、アーカイブ、図書館、研究室、出会いの場所」。マルチレイヤーで過去、現在、未来の自己表現をしようとするVaultはGucciの初期を思い浮かべるビンテージ商品などを含む、過去の物に2回目、3回目の命を与えるようにしているとミケーレさんは『BoF』の取材で語る。そんなビンテージ商品をミケーレさんなりにリミックスしようとしている。彼曰く、自分はファッションデザイナーではなく、シェフであって、過去の商品の具材を新しい形で組み合わせているだけ。さらにVaultでは「Conversations」という次世代デザイナーを紹介するプラットフォームにもなっているのと、詩やショートストーリーなどが含まれた「Library」セクションも存在する。

Decoding Gucci’s Latest Digital Experiment

サンプリング用にデジタルファッションを活用するブランドが増えるかもしれない

ブランドがデジタルファッションに興味を持ち始めている中、特に注目されているのはインフルエンサーとのサンプリング施策が『Vogue Business』で紹介されている。今まではインフルエンサーにサンプルを配送して商品を着てもらっていたが、デジタルファッションを活用すれば大量のサンプルを出す金銭的なコストと環境コストがなくなる。すでに似た施策でデンマークブランドのHan KjøbenhavnはARフィルターを活用してジュエリー商品のローンチをプロモーションした。そして最近Farfetchが大手リテーラーの中で初めてデジタルサンプルを試した。Farfetchは色んなインフルエンサーの写真を集めて、そのインフルエンサーにBalenciaga、Off-White、Dolce & Gabanaなど著名ブランドのデジタルサンプルを着させた。Farfetchはアパレル商品をデジタル化する際にDressXと提携して、アクセサリーのデジタル化はThreediumと提携した。そしてインフルエンサーに対してポーズやデジタルサンプルを着させやすくするための指示・ガイドラインを提供。今後はSnapchatやDressXなどの技術が発展すると、新しい商品をブランドがリリースする際に必ず3D・デジタル化する時代が来るかもしれない。

Influencers are wearing digital versions of physical clothes now

ラグジュアリーはゲームからNFTへの投資と進化していく

2年ほど前から本格的にブランドはゲーム領域へ投資し始めたが、それがデジタルファッションやNFTの世界へも入り込むようになった。Burberryは8月にBlankos Block Partyと提携してNFTをローンチ。同時にLouis Vuittonは200周年のためにゲームを開発して、そのゲーム内でNFTを獲得できるようにしていた。既にゲーム業界と繋がりが強くなり始めているラグジュアリーブランドはNFTを検証する最適なオーディエンスに既にリーチできていると『Vogue Business』は伝えている。ゲームが好きなオーディエンスはデジタルアセットを評価しているので、NFTの購入もよりオープンに考えてくれる。Burberryは限定商品をいくつかの決まった価格で販売し、販売されたり二次流通で販売されると一部の利益をBurberryがもらえるようになっている。逆にLouis Vuittonの場合は30個無料のNFTをゲームで獲得できるようにしている。まだNFT市場がどうなるか決まってない中でLouis Vuittonはより自社で体験や環境をコントロールして、値段がボラタイルに動いてネガティブな評判になるのを避けた。そんな中でもバーチャルインフルエンサーのSUPERPLASTICは二つのNFTドロップを実現して、どちらともすぐに完売し、その売上が$5Mを超えたと言われている。SUPERPLASTICはNFT化された商品の開発及びブランディングが強いため、ラグジュアリーブランドが提携する意味がある。最終的にはNFTもフィジカルな限定商品と同じように、今のカルチャー的にイケているかをブランドは見抜かなければならない。

Why games became luxury fashion’s NFT on-ramp

コカ・コーラが初のNFTコレクションを公開

コカ・コーラが初の取り組みで4つのNFTを販売。アバターやバーチャルコンテンツを提供するTafiと提携してコカ・コーラの代表的な1956年の自動販売機を再現している。それ以外に昔のデリバリーのユニフォームにインスパイアされたジャケットなども作った。コカ・コーラは昔から限定商品を開発したので、その一環でNFT領域に入り込むのは自然な流れだった。デジタル世界がよりカルチャー化する中で、リアルと同じような商品ではなく、デジタル上でしか体験できないNFTの開発を考えた。『Forbes』では、コカ・コーラ以外の大手ブランドのNFTについてもまとめている。たとえば、スープ缶で有名なキャンベルはアーティストソフィア・チャンとソーシャルコマースアプリNTWRKと提携してNFTコレクションを発表したり、タコベルもNFT化されたプロダクトをリリース、ドルチェ&ガッバーナまでNFTコレクションをリリースしている。ブランドとして気をつけないといけないのは、今だとブランドよりセレブや個人が推したNFTを購入したがっているので、ブランドや面白いアセットや文化の理解度で勝負しなければならない。

As Coca-Cola Auctions Its First NFT, More Brands Are Entering The Metaverse

メタバースはリテール体験を変える

テクノロジーは進化している中、ユーザーの想像を超えて完全に消費行動を変えることが起きる。『BoF』のオピニオン記事で「メタバースとリテール体験」について書かれている。1973年に最初に携帯が現れた時は電話しかできなく、かなり重かった。今のiPhoneは遥かに軽く、アポロ11号のスペースシャトルの1万倍の処理能力を持っている。多くの人はスマホに頼ってなかった時代を覚えていない。今はその次のテクノロジーが訪れ始めている。それがVRヘッドセット、ARテクノロジー、ゲームプラットフォーム、仮想通貨、ブロックチェーン、NFT、バーチャルグッズなどの形として届けられていて、その総合的なデジタルとフィジカルの新世代インターネットを「メタバース」と呼ばれている。このメタバースでは色んなバーチャル世界が存在し、経済・コマースが行われるようになる。その基盤となるのはデジタルアパレル、コレクタブル、デジタル不動産などバーチャルグッズ。そして多くのユーザーが集まるとショッピングをする店舗やモールなども作られるだろう。ただ、今までのようなフィジカルな店舗に行くのではなく、メタバース上では「店舗」の定義がかなり変わるはず。今まで以上に体験型のコマースになると想定すると、ゼロからそのプロセスや販売方法を考え直さないといけないかもしれない。

The Metaverse Will Radically Change Retail

ブランドが自社のバーチャル世界を作る世の中になるのか?

SK-IIがバーチャルシティ「SK-II City」をローンチ。日本の代表的な観光スポットの富士山や東京タワーなどあるほか、SK-II Studiosが制作した動画コンテンツが見れる。制作したのは、SK-II Studioesとデジタルマーケティング代理店であるHuge。SK-II Cityを開発した予算は公開されていないが、『Vogue Business』の取材によると、VR企業であるSense-Rが言うには、第三者が開発するVR体験は少なくとも$10Kから$50Kはかかるそうだ。他の事例ではバーチャル店舗サービス「Obsess」などはDiorやTommy Hilfiger、Dieselなど大手ブランドのためにバーチャルコマース体験を提供していて、多くのブランドから問い合わせが来ているそう。Robloxなども今年からブランド提携を本格的に行う予定で、NikeやGucciなどが興味を示している。

Are branded virtual worlds the new marketing terrain?

NFTブームがラグジュアリーブランドにも到来

GucciがNFT化された商品を出すのは「時間の問題」と『Vogue Business』が語る中、複数のラグジュアリーブランドがNFT化された商品を近々ローンチすると言われている。過去のECトレンドに乗るのが遅かったことを理解したラグジュアリーブランドは、ブロックチェーンなど新しい技術により関心を持ち始めている。ゲームで購入できる「スキン(キャラクターの服やアイテム)」を既に開発していたブランドも多かったので、NFTを活用することにより限定商品を作れて、よりリアルなファッションに近づけられることを魅力として感じているようだ。今まではユニークなファッションアイテムしかなかったが、今後はより利便性のある、プレミアム感がある商品が出てくると予想されている。例えば、NFT化されたデジタルファッションアイテムを作る「neuno」は、今現在5社のラグジュアリーファッションブランドと提携。Neunoなどを通して販売すると仮想通貨ではなくクレジットカードにて購入ができるので、ユーザーの購入ハードルも下がる。

今現在二つのタイプのNFTファッションアイテムが存在する。一つはリアルのアイテム・服をデジタル再現したもの。オンラインリテーラー「Clothia」は一品物のリアルなドレスとデジタル再現したNFT化されたドレスを販売している。そしてリアルな商品よりデジタル版を安く販売してより広い層にラグジュアリーアイテムを届ける戦略をとるブランドもいる。二つ目のタイプは、デジタルにしか存在しないアイテム。デジタルファッションハウス「The Fabricant」は燃えているデジタル靴を販売した。リアルな世界ではありえないデジタルファッションを作るのが面白い。よりイマーシブな世界とインターネットが発展している中、どのファッションブランドもバーチャル戦略が必要となる。今の若者層からすると、学校に行く格好とゲーム内でのアバターの格好が同じぐらい重要な自己表現を場所となっているのだ。

Luxury fashion brands poised to join the NFT party

バーチャルファッションの限界はどこにあるのか?

4月にバーチャルファッション企業のRTFKTThe Fabricantがイヤリング、スニーカー、ドレスなどのコラボコレクションをリリースした。$20から$10,000と幅広い商品価格で3,000人以上がドロップの事前登録を行った。結果として15分以内にコレクションが全て売り切れ状態になった。全商品はデジタル上でしか存在せず、NFT化されたもの。AR体験やDecentralandなどバーチャルサイトでは使えるようになっている。このようにバーチャルファッション市場の需要は増えているものの、まだメインストリームにはなっていない。2月〜3月のNFTブームのピーク時と比べて、今ではNFT化された商品の平均販売価格が70%下がり、アメリカ政府も仮想通貨の需要を見て詐欺防止などの調査を行うと発表。多くの企業はこのNFT市場は短期的なブームなのか、これからは主流になるものなのかを判断しなければいけない。The FabricantもAdidas、Marques Almeidaなどとコラボしているが、毎回上手くいくギャランティーは出来ないと忠告している。

The Limits of Virtual Fashion

GUCCIがデジタルスニーカーを1,300円で販売している理由

GUCCIはファッションテック企業「Wanna」とコラボし、約1,300円のデジタルスニーカー『Wanna x Gucci』を販売をした。GUCCIのクリエイティブディレクターのアレッサンドロ・ミケーレがデザインしたスニーカーはARを活用して履くことができる。さらに、RobloxやVRチャット上でも身につけられるのだ。GUCCIは大手ファッションブランドとしてはかなりデジタルファッション領域で挑戦をしている。過去にファッションスタイリングゲーム「Drest」、アバターアプリ「Zepeto」、ゲーム『Sims 4』のコラボ『Pokemon GO』などでアバターのスキンやデジタル商品をこれまで発表してきた。『BoF』では、この取り組みは「デジタルネイティブなZ世代にアピールするためでもある」と報じている。低価格にしている理由はGUCCI商品に興味があっても中々購入できない層に対して提供して、ゲーム内もしくはSNS投稿でブランドを好きになってもらうため。次の5〜10年でファッションブランドの売上の大きい割合はデジタル商品からくるとWanna CEOのセルゲイ・アルカンゲルスキー氏は語る。まだデジタルアセット領域は改善することは多いが、将来的に重要になってくるのは明らかだ。

Gucci Is Selling $12 (Virtual) Sneakers | BoF

アバターエコノミーにブランドはどう参入する?

「次のココ・シャネルは、今Robloxでスキンをデザインしている10歳の女の子です」とAR/VRのビジネスストラテジストでありForbesコントリビューターである、キャシー・ハックル氏は解説する。デジタルファッションとは、簡単に言うとデジタル空間上でのファッションで、現実世界に加えてAR/VR/メタバース上で自分の個性を表現することや、そのためのファッションアイテムのことを指す。その経済を支えるのが「デジサピエンス(デジタル + ホモ・サピエンス)」などと呼ばれているZ世代と若いミレニアルズ。彼らは、現実とファンタジー(ゲーム)の境界が曖昧な世界で育ってきたテクノロジーのアーリーアダプターだ。Z世代は消費とは、「所有すること」ではなく「アクセス権」と捉え、個々人のアイデンティティの表れと考えているのが特徴で、ファッション業界の負の側面(環境負荷、児童労働等)を避けられるデジタルファッションに対してポジティブに受け入れられている。

How Brands Can Thrive In The Direct To Avatar Economy


▼米国の次世代ブランドやリテールテックの情報はCEREAL TALKのニュースレターでも配信中。

▼海外のリテールテックやD2Cにまつわる最新ニュースを紹介/解説するポッドキャストも配信中。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?