米国D2Cの必須マーケティングツール「Klaviyo」
アメリカのD2Cが必ずといっていいほど採用しているマーケティングオートメーションプラットフォームが「Klaviyo(クレビヨ)」だ。
2012年にメールマーケティングプラットフォームとして誕生したKlaviyoは、顧客データにあわせて細やかなマーケティングを可能にしたことからD2Cブランドを中心に利用が広がり、2022年8月には課金ユーザーが10万人を超えたと発表している。
2021年5月には3億2000万ドルを調達し、評価額は95億ドルとなり、2022年にはShopifyから1億ドルの戦略的投資を受けるなど、eコマースの盛り上がりと共に急成長を遂げてきたスタートアップでもある。
メールマーケティングツールとして知られるKlaviyoが、なぜアメリカのD2Cのあいだで必須ツールとなったのか?その理由を解説する。
低コストで顧客データベースを構築し、高度な自動化を実現する
Klaviyoを語る上で欠かせないのが、CDP(Customer Data Platform)機能だ。
メールマーケティングツールとして語られることが多いKlaviyoだが、実はメール配信ツールとして起業したわけではない。EC事業者向けに顧客データベースの構築と活用の機能を提供していくなかで、メール配信の要望が多かったため実装した結果、メールマーケティングツールとして人気を得ていった歴史がある。
そのため、他のメール配信サービスと比べても顧客データを蓄積し活用するための機能が充実している。
自社でCDPを作ったり維持したりしようとすると莫大なコストがかかるが、Klaviyoを使えば誰しもが低コストで簡易なCDPを持ち、顧客情報に応じた高度なオートメーションが実現できる。
顧客のプロフィールページにもその特徴がよく表れている。
Klaviyoを通じて顧客がメールアドレスを登録すると、顧客ごとの情報がまとめられたプロフィールページが自動的に作成され、メールの開封やクリックといった履歴がすべて記録されている。
さらに右カラムにはShopify経由で得られた購入金額や購入回数といった情報を出すこともできる。さらに過去の購買履歴をもとに、その顧客が将来どのくらい買い物をしてくれるかといった予測機能もある。
他のアプリと連携してプロフィールページにアンケートの回答や問い合わせ履歴を表示させることもでき、顧客ごとのあらゆる情報がこのプロフィールページに集約されるようになっている。
こうした細かい情報がすべて顧客ページに蓄積されていることで、問い合わせがきた際に過去の購入履歴や問い合わせ履歴を確認したうえで対応ができるのはもちろん、これらの情報をもとに顧客を抽出し、特定の顧客にだけメールを送るといった細かいメールマーケティングが可能となる。
そのための機能が、どの条件でどんなメールを送るかを設定する「Flow」だ。
たとえば上記の図では、商品の購入後に顧客がどんな行動をしたかで配信する内容を変化させている。
KlaviyoはShopifyとの連携が強いため、購入やカゴ落ちといったShopify上の行動データと連携させてメールを出し分けることが可能だ。そのため、カゴ落ちした顧客に自動でフォローメールを送ったり、閲覧をやめた顧客におすすめ商品のメールを送ったりすることもできる。
それ以外にも特定の商品を購入したことのある顧客のみにキャンペーンのお知らせを送ったり、購入から一ヶ月経った頃に追加購入の案内を送ったりといった使い方もある。
このように顧客の属性はもちろん、EC上での顧客の行動や履歴をもとに最適なアプローチを設定できる点が、KlaviyoがD2Cブランドから支持されている理由のひとつだ。
他のShopifyアプリとの連携の強さ
さらにShopifyユーザーがKlaviyoを利用するメリットとして、他のShopifyアプリとの連携の強さがある。
CEREAL TALKでこれまで紹介してきたShopifyアプリのなかでも、アンケートやクイズといったゼロパーティーデータを収集するツールは、Klaviyoのカスタマーデータベースと連携させることによってよりその効果を発揮する。
Klaviyoを使えば、他のアプリを通して収集したデータを自動的に顧客データベースに追加し、そのデータをもとにメールやSMSでのアプローチに反映させることができる。
たとえば、Klaviyoの顧客プロフィールに「好きなデザート: アイスクリーム」と記載されている人にのみ、アイスクリーム特集のメールを配信するといったことが可能になる。
さらに、ヘルプデスクと連携させて問い合わせ情報をKlaviyoのデータベースに蓄積することも可能だ。
たとえばアメリカのD2Cがよく利用している「Gorgias」と連携させることで、顧客からの問い合わせの記録をKlaviyoの顧客プロフィールに記載するのはもちろん、問い合わせ対応への満足度を測るアンケートもKlaviyo上で一見管理ができる。
Klaviyoに蓄積された顧客リストは、Facebook広告のオーディエンスへと同期させることが可能で、広告配信用のオーディエンスに使用することも可能だ。もちろん、同期されたKlaviyoリストのオーディエンスを拡張することで、類似オーディエンス(Lookalike Audiences)の作成を行うこともできる。
メールアドレスだけではなく、属性や購買履歴、好みといった情報が蓄積されているからこそ、広告配信の際に使用するオーディエンスへ細かい情報を持たせ、より効果のある広告の配信が可能となる点が、Klaviyoの強みでもある。
スモールビジネスでも導入しやすい使い勝手のよさ
Klaviyoは、メール配信ツールとしても利便性が高い。メール作成画面も直感的でわかりやすく、ブロックをいれるだけでポップアップフォームを入れることもできる。
簡単にデザイン性の高いメールが作成できるため、専任のデザイナーやエンジニアのいないスモールビジネスのチームでも導入がしやすい。
料金体系も、スモールビジネスでも導入しやすい仕組みになっている。
Klaviyoはすでに10万以上のユーザーが課金して利用しているが、数十万の無料ユーザーも抱えている。
Klaviyoは月500通までであれば無料で使うことができるため、立ち上げたばかりのブランドやECサイトでも導入がしやすい。500通以降は、メールのみ、もしくはメールとSMS合算の送信数によって課金額が変化する。
たとえば月1,500通までであれば、メールのみの場合は45ドル/月、メールとSMS両方に配信したい場合は60ドル/月となる(※2022年10月時点)。
また、Klaviyoには開封率やクリック率といった数字を似た業種の平均と比較できる「Benchmark」という機能がある。
メールはSNSと異なり、他社がどのくらい反応を得ているのかが見えづらい。そのため、開封率やクリック率という数値が他と比較してどのくらいよいのか、どこを改善すべきかといった点がわかりづらいという難点があった。
KlaviyoのBenchmarkを通して平均値との差分がわかれば、分析に時間をかけずとも改善点を見つけやすくなる。
このように、データを使って最適化のためのプロセスを提供するのがKlaviyoの強みともいえる。
SNSの台頭によって一時は下火になったメールマーケティングだが、SNSプラットフォームの成長に伴い、投稿が顧客に届く割合は年々減少し、SNSマーケティングの広告費は年々上昇している。
そこで再度注目を浴びているのがメールマーケティングだ。SNSと異なり、プラットフォーム側に取捨選択されることなく、コンテンツを顧客のもとに届けることができ、内容やタイミングも顧客にあわせて細かくカスタマイズができる。
Klaviyoは、まさにこうしたメールマーケティングへの回帰によって急成長を遂げているサービスと言えそうだ。
▼KlaviyoのShopifyアプリストア
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