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D2Cマーケティングのネクストトレンド?「ゼロパーティデータ」とは

今年に入ってから、アメリカのD2C関連のニュースで「Zero Party Data」の文字を目にする機会が急増している。Shopifyアプリでもゼロパーティデータの収集・活用を打ち出すサービスが増え、ブランドも積極的に取り入れ始めている。

この記事では、今後のD2Cブランドのマーケティングを考えるうえで避けては通れない「ゼロパーティデータ」について解説する。

「ゼロパーティデータ」とは

ゼロパーティデータとは、顧客が自らの意思で企業と共有するデータを指す。アンケートへの回答や、ブランドの情報を得るために自らメールアドレスや電話番号を入力するといったケースがゼロパーティデータに該当する。

ここで重要なのは、顧客が「自らの意思で」企業にデータを提供している点だ。

ゼロパーティデータが注目される背景には、AppleやGoogleといったプラットフォームがトラッキングの規制を強めているという点がある。特に2021年4月のiOS14.5へのアップデートでは「ITP(Intelligent Tracking Prevention)」と呼ばれるトラッキング防止機能が強化され、サードパーティデータを使用した広告の精度が落ち、多くのブランドが顧客獲得単価の急激な上昇に直面している。

D2CブランドはFacebookやInstagramといったSNS広告の活用が成長のセオリーとされてきたが、サードパーティデータを使用した広告の精度が落ち始めたことで、自らデータを取得し、活用しようとする動きが増えている。

自社サイト上での行動データであるファーストパーティデータに加え、顧客の嗜好や属性、購入動機といった定性的な情報を取得し、マーケティングに活用しようとする動きが、ゼロパーティデータへの注目度を高めている。

アメリカでの動き

アメリカでは、2021年4月のiOS14.5へのアップデートの影響が2021年夏頃に現れはじめ、2022年に入った頃から多くのブランドが従来のSNS広告の悪化を実感するようになった。

こうしてゼロパーティデータへの注目度が高まり、ECサイトにアンケートやクイズ、診断といったツールを盛り込み、顧客の声を直接取得するブランドが増えている。

また収集したデータを活用するツールとして、Klaviyoのようなマーケティングツールの人気も高まっている。

また、ゼロパーティデータだけではなく、自社サイト上で得られたファーストパーティデータの価値も再認識されている。FacebookやGoogleといったサードパーティ依存からの脱却が、今後のトレンドとなっていきそうだ。

一方で、自社ECをメインにしていたブランドが、Amazonをはじめとするマーケットプレイスへの出店を加速させる動きも生まれている。顧客獲得単価の高いSNS広告に予算をかけるよりも、マーケットプレイス内で見つけてもらう方が安価に顧客にアプローチできるケースが増えているためだ。

このように、iOSのアップデートによるSNS広告の費用対効果の急激な悪化は、D2Cブランドの販売戦略全体に影響を及ぼしはじめている。

日本での動き

こうした変化は、日本では現状どのように捉えられているのだろうか。

D2Cブランドをはじめとする、グロース施策に詳しいStoreHero代表の黒瀬 淳一さんによれば、日本でもちょうど広告効果の悪化に直面し、対策を打とうとしているブランドが増えてきたという。

黒瀬 淳一 / Co-founder & 代表取締役CEO
筑波大学卒業、神戸大学大学院修了後、(株)アクシイズに参画。取締役としてSaaSの開発/販売に従事し、同社を売却。その後、(株)インターネットインフィニティ、(株)チームスピリットに参画し、事業開発、営業/マーケティングを担当し、その後、同社はそれそれ上場。Ginzamarkets(株)のカントリーマネージャーを経て2019年、(株)StoreHeroを創業。

「2021年の夏頃から、Facebook広告のROAS(Return On Advertising Spend:広告費用対効果)の悪化を感じるブランドが増えてきました。しかし、その原因がITPやCookieの問題だと理解できていないケースもあり、単純に広告予算を減らすだけにとどまっている企業もあります」

一方で、日本でもアンケートや診断といったコンテンツを取り入れる企業も増えてきたという。Shopifyを使っているブランドの場合はKlaviyoを導入しているケースも多く、簡単なフォームであればKlaviyo内で作成できるため、すでに使用しているアプリのなかでゼロパーティデータの収集・活用に取り組みはじめたブランドもある。

しかし、黒瀬さんによれば、診断やクイズのようなコンテンツが合う商材と合わない商材がある点に注意が必要だという。

「たとえば化粧品やサプリのように、解決したい悩みが先にある商材は診断系コンテンツとの相性がいい。一方で、デザイン性の高さが売りのファッションアイテムなどは、顧客が診断コンテンツに回答したいというモチベーションを持ちづらい部分があります。
単にアンケートや診断コンテンツを取り入れればいいわけではなく、顧客が答えたくなるインセンティブをつくる企画力が重要だと感じます」

また、最近ではSNSのフォロワー施策において、数ではなく質を重視する意識が高まってきたという。やみくもにフォロワー数を増やすのではなく、一度サイトを訪れた顧客にSNSのフォローを促すことで、購入意欲のあるフォロワーを増やし、そのデータをもとにSNSプラットフォーム上でより精度の高いマーケティングができるといった利点がある。

こうした動きからも、広告や販促、マーケティングといった部署を横断して施策を打つことがますます重要になってくると黒瀬さんは語る。

今後は日本でも顧客の生の声を集め、それらを総合的に分析して施策に活かしていく動きが求められていきそうだ。

Podcastで聞く

黒瀬さんを交えて、ゼロパーティデータについてPodcastでさらに深掘りトークをしました。

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