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ECも縦長動画で伸ばす?米国D2Cが続々と導入する動画コマースツール「Tolstoy」

ECサイトの右下に現れるウィンドウを開くと、チャットボックスが自動的に立ち上がり、「何かお困りですか?」と尋ねてくる。今や多くのECサイトで見られるようになった光景だ。

そして今、このチャットボックスがテキストから動画へと進化を遂げようとしている。

たとえば、ヴィーガンやグルテンフリーにこだわったクッキーブランド「DEUX」のECサイトの右下にあるウィンドウを開くと、女性がブランドについて語りはじめる。さらにブランドや商品について知りたいことを選ぶと、その解説動画へと遷移する。

クッキーブランド「DEUX」の導入事例。サイトを訪れた顧客は複数の選択肢の中から聞きたいテーマを選び、創業者自身が説明する動画を見ることができる。

無機質なbotのテキストではなく人が語りかけ、動画で商品の質感やシズル感を伝えることもできる。

この画期的な動画埋め込みの機能を提供しているのが、インタラクティブ動画プラットフォーム「Tolstoy(トルストイ)」だ。


動画の埋め込みによってコンバージョン数が300%増加

Tolstoyは、2020年にイスラエルで創業。TikTokやReels、Short動画など短尺動画の広がりが消費者の意思決定にも影響を及ぼしはじめたことから、ECサイトに手軽に短尺動画を埋め込むことができるプラットフォームとして誕生した。サイトの読み込みスピードに影響を与えることなく、ブランドや商品の説明動画を埋め込むことができる。

いまやSNSの投稿も短尺動画のシェアが拡大し、Ciscoが2022年末に発表したホワイトペーパーによれば、82%以上のオンラインカスタマーが動画コンテンツを視聴することになるだろうと予測している。従来の静止画とテキストだけではなく、動画をどう組み合わせていくかが今後ECサイトでも課題となっていくことは確実だ。

実際にTolstoyを導入して短尺動画をECに埋め込んだ企業は、最大でコンバージョン数が307%、ROIが20倍、顧客のサイト滞在時間が4倍になったケースもあるという。

Tolstoy公式サイトより

しかしひとくちに「短尺動画」と言っても、その用途は様々だ。Tolstoyでは、動画を以下の3つに分類している。

①インタラクティブ動画
②ショッパブル動画
③クイズ動画

また、動画の埋め込み方にもさまざまな種類がある。

右下のアイコンをタップすると動画が再生されるウィジェット型を使うブランドが多いが、Instagramのストーリーズのようにサイト上部に表示したり、サイト内でカルーセル表示したり、動画を特定のページに埋め込んで表示させるといったことも可能だ。

サイトの表示速度を落とさずに動画を埋め込むことができるうえ、動画を見た上で顧客が知りたいことを選択できるインタラクティブ性があるのがTolstoyの強みだ。

①インタラクティブ動画

インタラクティブ動画は、冒頭で紹介した「DEUX」のように、ブランドの説明やよくある質問へ回答する動画を指す。トップページに表示させ、ブランド背景の説明やスターターキットの紹介をするブランドも多い。

アジアンフードブランド「OMSOM」の事例。創業者自身がブランドストーリーやスターターキットの紹介をしている。

ただ動画が埋め込めるだけではなく、DEUXやOMSOMのように、動画上に選択肢を表示させ、次の動画や商品ページに遷移させられるのがTolstoyの大きな特徴だ。

顧客側が知りたいことを自分で選択して進むことができるため、FAQとして活用することもできる。特に、はじめてサイトに訪れた顧客に対してブランドや商品の概要を伝える際に効果を発揮しそうだ。

インタラクティブ動画の生成もシンプルだ。使用したい動画をアップロードすれば、選択肢の設定や次にどの動画に遷移するかといった設定はすべてTolstyの管理画面で行うことができる。

インタラクティブ動画を作成する際の管理画面イメージ

左側のボタン編集画面でテキストを入力し、その選択肢を選んだ場合にどの動画に遷移するかまで設定ができる。

ボタンのカテゴリは「Default」、「Custom」、「Shoppable」の3種類。インタラクティブ動画では「Custom」を使用する。

このように、十数秒の動画を数本撮影し、設定を行うだけで簡単にインタラクティブ動画をつくることができるのがTolstyの特徴だ。

②ショッパブル動画

ブランドや商品を動画で説明するだけでなく、そのまま商品リンクに飛ばすこともできるのが「ショッパブル動画」だ。

バッグブランド「Cancha」の事例。動画内のリンクをクリックすると商品購入ページに飛ぶことができる。

インタラクティブ動画では選択肢が表示されていたが、ショッパブル動画では商品ボタンが表示される。顧客がこのボタンをクリックすると商品ページが表示され、そのまま支払いに進める仕組みだ。

商品紹介動画や利用シーンを見せる動画にショッパブルボタンを表示させることで、顧客は該当商品を探す手間なく詳細ページに遷移することができる。

またインタラクティブ動画のなかで「おすすめの商品は?」という選択肢を用意し、ショッパブル動画に飛ばして購入へ誘導するといったパターンもよく見られる。顧客が自ら質問に回答して辿り着いているので、トップページで全員にポップアップでバナーを見せるよりも顧客側の納得感も高いはずだ。

ショッパブル動画の設定は、カテゴリで「Shoppable」を選択し、「Shop button」から表示させる商品を選ぶだけ。

「Shoppable」を選ぶと動画内に「Shop」ボタンを入れることができる。

Shopifyに登録している商品名で検索し、選択すれば自動的に動画内にショップボタンを表示させることができる。

ショッパブル動画も複数の動画を組み合わせることができ、複数設定した場合は上下のスワイプで別の動画に移動することもできる。

レザーブランド「objcts.io」の活用事例

複数の動画が設定できるので、カラーやサイズごとに動画をつくり、比較してもらうといったこともできる。

③クイズ動画

取り扱い商品数が多いECでは、訪れた顧客が商品数の多さに圧倒され、自分に合う商品を見つける前に疲れてしまうことがある。

そこでTolstoyを通して使われているのがクイズ動画だ。

スキンケアブランド「Korean Skincare」のクイズ動画。

上記のように動画の質問に答えていくと、自分の好みや体質、ライフスタイルに合った商品を提案するページが表示される。

診断結果ページの例。

特にコスメやスポーツウェアといった、商品の種類が多く自分にあったものを見つけるのに手間がかかる商品と相性がいい。

クイズ動画の作成は、まずはインタラクティブ動画と同様に選択肢をつくる。

クイズ動画作成イメージ

そのうえで、別途ロジックの設定が必要となる。動画で設定した選択肢をもとに、どの組み合わせで何を表示させるかを設定できる。遷移先はwebページと商品の2種類を選ぶことができ、商品に飛ばすのであれば別途診断結果のページを作成する必要もない。

クイズ動画のロジック設定画面イメージ

動画にかぎらず、クイズや診断系のコンテンツは顧客データを集めるきっかけとして最近注目が高まっており、クイズの作成とデータ収集ができるツールも人気を博している。動画でもこうしたクイズ動画の需要は高まっていきそうだ。

Tolstoyは新たなWeb接客ツールになるか?

上記の3パターンの使い方以外にも、新しくTolstoy TVという機能も追加された。

Tolstoy TVはサイト内にTikTokやリールのようなUIで動画を埋め込むことができる機能だ。さらにショッパブル動画と同様に、動画上にショップボタンをつけることもできる。

スポーツウェアブランド「LSKD」の事例。スクロールすると次の動画が表示され、TikTokやリールのようなUIで商品着用動画を紹介できる。

LSKDのようにTikTokやInstagramで人気のあるユーザーから動画ファイルを提供してもらえば、自社EC上でインフルエンサーの着用動画をTikTokのような感覚で紹介することができる。

紹介したTolsty以外にも、最近は「Gander」や「Videoawise」など、ECサイトにポップアップで動画を表示させるためのサービスが増えてきた。

テキストよりも動画の方が情報量も多く、リアルの接客に近い。またインフルエンサーがTikTokやInstagramに投稿した動画を買い取ってECに表示させるなど、ECと動画の領域でできることはまだまだ増えていきそうだ。

Tolstoyの料金表(2023年4月現在)

コンテンツにおける動画の比率が年々高まっている今、ECにも動画の波がきつつある。今後新たなWeb接客の可能性として、Tolstyのようなインタラクティブ動画プラットフォームが注目を集めていきそうだ。

▼TolstoyのShopifyアプリストア

【disclosure】
TolstoyはCEREAL TALKメンバーの投資先です

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