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#91 中国企業に学ぶ、メンバーシッププログラムの成功法則

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Briefing

中国企業に学ぶ、メンバーシッププログラムの成功法則

アンドリーセン&ホロウィッツのConnie Chanが、中国のメンバーシッププログラムが成功している要因をレポートにまとめている。これまでアメリカではプラットフォームの収益源は広告収入がメインだったが、Twitter Blueをはじめ、SnapChatやDiscordといった米国企業もメンバーシップ型の課金を増やし始めている。

中国では、Weiboや iQIYIをはじめとする企業がユニークな有料メンバーシッププログラムを提供している。こうした背景には、中国は米国と異なりはじめからスマホでアクセスする人口が急増したため、画面専有率の問題から広告モデルを採用しづらかった点があげられる。
一方で、中国のメンバーシップモデルは、収益性を主な目的としているわけではない。Weiboの有料会員収益は全体の収益の7%にすぎない。しかし有料会員の84.8%は非会員と比較して15日も多くWeiboを使用しており、投稿も4倍多い。収益だけでなくエンゲージメント向上の面からも、今後プラットフォームが有料会員プログラムを充実させていく流れは強まっていくだろう。

では、中国企業はどのようにメンバーシップモデルを設計しているのだろうか。Connie Chanはレポートのなかで、中国のメンバーシップモデルのポイントを下記の4つにまとめている。
中国のメンバーシッププログラムの大きな特徴は、課金によって得られる有料特典だけでなく、ユーザーの行動次第で獲得可能な特典も用意されており、この2つのタイプの特典を組み合わせている点にある。たとえば中国版YoutubeのBilibiliは、月3.5ドルの有料特典として限定の割引やプレミアムビデオコンテンツを提供しているが、ビデオ中に自分のコメントを表示させるには、難しいメンバーシップクイズに合格しなければならない。このように、課金をすればすべての機能が使えるわけではなく、知識や投稿頻度によって評価される仕組みがあることで、課金したあとにさらに頻繁にサービスを使うインセンティブが醸成される。
また課金後のステータスも細かくランク分けされており、ポイント獲得によってランクアップさせる仕組みもある。ランクアップによる特典として、特定機能が使えるようになるだけでなく、アイコンのデコレーションや使える絵文字の種類が増えるなど、ユーザーの自由度を高めるものもバランス良く織り込まれている。
さらに中国企業同士の連携も強化されており、たとえばアメリカでいえば、Netflixユーザーであれば安くAmazon Primeを契約できるような連携が盛んだ。
中国では小売企業も有料会員プログラムを積極的に導入している。ケンタッキーでは、毎月4ドルのメンバーシップ登録者はモーニングメニューが40%オフになったり、5.40ドル以上の注文であれば配送料を無料にすると言った特典を提供し、購入頻度をあげている。

中国のメンバーシップモデルの事例は、ソフトウェア企業だけでなく小売企業にとっても参考になる点が多々ありそうだ。

アクセサリーレンタル「Vivrelle」の調達から見るレンタル業界の今

ChanelのハンドバッグやHermesのジュエリーといったアクセサリーのマンスリーレンタルサービスを提供するVivrelleが好調だ。Business of Fashionの記事によれば、Vivrelleは昨年のシリーズAで26億ドルを調達し、売上を600%成長させ、今回のシリーズBラウンドでは35億ドルを調達した。今回調達した資金で実店舗の開発と拡大を見込んでいるという。

Vivrelleが順調な成長を見せる一方、レンタル業界全体としてはパンデミックの影響で暗いニュースも多い。2022年にはメンズウェアのレンタルサービスである「Seasons」と「The Rotation」が相次いでサービスを終了し、レンタルサービスの代表格であるRent the Runwayも8780万ドルの損失を計上している。

こうしたレンタルサービスの苦戦の背景には、クリーニングや物流面のコストがある。また、ファッションはトレンドに左右されるため、レンタル需要のある商品を買い付けなければならない難しさもある。アクセサリーとバッグをメインにしているVivrelleの場合はアパレルのようなクリーニングコストがかからず、トレンドにも左右されづらいことから堅調に伸びていると見られる。

最近ではP2Pで顧客同士の貸し借りを仲介する「By Rotation」や「Wardrobe」といったサービスにも注目が集まっている。一方で、P2Pの場合、レンタルできる商品のラインナップを企業側がコントロールできないというデメリットもある。
パンデミックによってハレの場が減り、ファッションアイテムの購買行動も変化したことで、レンタル市場もまた大きな変革を求められている。

Editor’s View

『中国企業に学ぶ、メンバーシッププログラムの成功法則』を読んで

コマースやアプリ体験が進んでいる中国企業だが、過去にCEREAL TALKではSHEINなどが行う「ショップテインメント」についても話した。同じように、サブスク・メンバーシッププログラムでも中国企業は上手くエンタメ感を提供出来ているのを今後真似するアメリカ・日本企業が増えてくるはず。重要なのは課金する・しないでのステータスの差を作るのではなく、さらに細かいレベル・ステータスの違いを作ることによってエンゲージメントを高めるインセンティブモデルを設計すること。今回の記事は主にテック企業やエンタメ企業がメインだったが、似たような考え方はブランドでも使える気がする。既にアメリカではロイヤリティプログラムを始めるD2Cブランドが増える中、ただ課金させるだけではなく、ゲーミフィケーションなどを組み込むブランドが出てくるのかが気になっている。── Tetsuro(@tmiyatake1

レポートにある「Leveling up is fun for users(レベルアップはユーザーにとって楽しいこと)」というのが面白いと思いました。楽しみながら、ステータスをあげていくこと。単に追加機能や特典が手に入りにくい、ポイントが必要と思わせずに、ゲーム的な感覚で、特典まで導くのがとても中国アプリはうまく体験づくりされています。また、アメリカのSNSの課金型モデルだと、Snapchat+が有名。Snapchat+では、月$3.99(約553円)で、新機能が使えたり、ブラウザ利用ができ、今は150万人の有料ユーザーがいる。ソーシャルメディアのメンバーシップモデルは、Twitterなど今後も気になりますね。──Miki(@mikikusano

『アクセサリーレンタル「Vivrelle」の調達から見るレンタル業界の今』を読んで

レンタルサービスが軒並み苦戦しているなか、アクセサリーとバッグを扱う「Vivrelle」が伸びているのは興味深いなと思い、今回ピックアップしました。Business of Fashionが今年2月に出した記事にレンタルサービスの難しさが端的にまとめられていますが、やはり限られた在庫を効率よく回していく難易度が一般的な販売モデルに比べて圧倒的に高いことを感じます。一方で、日本だとRentioやCLASなど家具家電のレンタルが徐々に成長してきている印象。消費者視点で見ると一瞬しか使わないトレンドアイテムこそレンタルしたいものですが、トレンドアイテムは需要が集中してしまい機会損失が大きいので、ビジネスとして成り立たせるにはやはりトレンドに左右されづらい商材を選ばざるをえないところにレンタル事業の難しさを感じます。──Asami(@qzqrnl


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