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まるでジオンのザク・グフ・ドム!:なぜ異世界転生物は量産されるのか

「異世界転生モノはもうお腹いっぱい」
ロクすっぽアニメも見てない中で広告見ながらそう思ってしまうのですが、そんな私の考えなどどうでも良い存在でしかないほど異世界転生コンテンツは今も溢れています。
異世界の冒険家に転生するか、あるいは乙女ゲームの世界(何故か中世)に転生してイケメン男子からモテモテになるかって感じで概ね転生の種類はパターン化されている気がするのですが、しかし一体なぜ異世界転生モノはこんなにも令和の日本で消費されるのでしょうか。
ここのところ木村岳史の極言暴論を読むのが日課になっているのですが、最新号(?)である記事を読んでみると、何となく前々から感じてた「日本はもうダメだ」という感覚が異世界転生への願望に繋がったりもしてるのかなと考えます。

日経クロステックの極言暴論はとても面白いコンテンツなので、是非IT企業への就職を考える人は購読を薦めたいのですが、最新記事の無料部分だけ引用すると、本当に日本の未来が真っ暗って言うのはわかってきます。

ネットバブル崩壊の際に、後に外資に買収された家電メーカーの幹部の「ネットビジネスは虚業だった」との迷言に象徴されるように、政府も大半の企業もせっかくのチャンスを手放してしまった。その後は、デジタル革命の進展を注視することすらも怠り、ボーっと過ごしてしまった。あの頃、叱ってくれる「チコちゃん」がいたら、どんなによかったかと思うぞ。で、巨大化したGAFAや、日本をあっという間に追い越していった韓国や中国などの新興国のデジタル化を見てびっくり仰天。「デジタルだ! DX!」だと今になって騒いでいるわけだ。
今回の新型コロナウイルス禍において政府のIT/デジタル活用があまりにもずさんで、世界にその醜態をさらした。そのため政治家を中心に「デジタル敗戦」という言葉が流行した。かつての敗戦になぞらえ、戦後復興のようにDXを推進しようという意図が隠れていると推測するが、私から言わせればそれは違う。日本はそもそもIT/デジタルで戦ってもいないぞ。まさにボーっしている間に「焼け野原」となっただけである。

「日本のITは客が大金を払ってSIerにゴミを作らせている」
木村岳史の極言暴論はこのスタンスでの主張ですが、実際問題、SIerが客から大金貰ってゴミシステムを作っているのは事実です。
なにせ日本の企業システムは「Excel使えないから電卓しか使えない経理用のソフトに作り替えてよ」なんて感じでシステム作ってて、使い手に合わせてソフトを(カスタマイズして)作ってるのであり、本来世界は購入したパッケージソフトに合わせて働き方を変えていくのとは、真逆のスタンスを取っております。日立やら富士通やら東芝というのは、実はITを発展させるどころか、客をおバカにしてIT産業全体を停滞させる役割をになったのでありました。
そうこうしている内に、いつの間にか外資から空襲を受け、空襲を受けているという自覚すらないまま焼野原になっていたという、お粗末な事態にあるということです。そして、残念ながら「日本は衰退の道しかない」と木村岳史の論は終わります。
これを読んで「ああ異世界転生したくなるのも無理ないか」と、不覚にも考えてしまうのでありました。

🏫学校再建に日本再生の夢を見た

小泉政権時代に読んだドラゴン桜で新自由主義的なものに強く惹かれるようになった私は、今聞かれても一番好きな政治思想は新自由主義と答えます。
ドラゴン桜は東大合格者を出して学校再建を図る漫画でしたが、時は経って2010年にはラブライブ、2012年にはガールズ&パンツァーが登場します。
この2作品は「部活動の結果を通して学校再建をさせる!」が目的地で、この2作品が流行った要因は「視聴者も彼女達と学校再建をさせる一体感を味わう」ということにあったのではないでしょうか。

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西住みほの様な優れたリーダー、或いは学年を超えて優勝に向けて一つにまとまる仲間たち。苦労の末、音ノ木坂学院は再建し、大洗高校もまた、ピンチに陥る度に助っ人が来ては学校を守ってくれるようになりました。
そんな再建していく高校を見て、中には「日本という国もこんな風にまた盛り上がっていくんだ!」と考えたファンもいるかもしれません。
時は流れ、ラブライブはサンシャインという続編がリリースされました。
µ'sに憧れた千歌ちゃんは努力の末、AQUOSを結成。再建を目指します。
しかし、思いは届かず、浦の星女学院は閉校が決まります。
強い思いと努力で伝説を作り、学校を再建した千代田区の音ノ木坂学院に対し、過疎化の進む地方都市の運命に抗えず閉校した、沼津の浦の星女学院。
その姿に、凋落して行く日本を見ているような気分になってしまった人も、きっといることでしょう。

🏥緩やかに崩壊を待つしかない社会保障

異世界モノが流行るようになったキッカケはリゼロではないかと思うのですが、思うに異世界モノが流行るようになったのは、それだけ「日本はもうダメだから脱出したい」という願望の表れではないかと見れるわけです。
特に若い人から見ると、一部の野心に燃える若者は除き、日本にいてて自分が輝ける、活躍できる姿が描きにくいのではないかと思います。それは仕事面もそうですが、ライフ面でもそうなのです。
少なくとも日本はこの先、少子化が解決することはありません。100年経っても日本の出生率は2.0に達することは無いでしょう。厳密に言えば出生率2.0でも人口は減るのですが、構造的な問題から日本がこの先100年経っても、出生率2.0になるということは有り得ないでしょう。
その場合、社会保障も崩壊します。既に年金制度は破綻していますが、続いて健康保険の自己負担率は5割には上がるでしょう。最悪、廃止になるかもしれません。唯一の回避策は移民の受け入れを拡大し、スーパーシティを推し進めることです。
しかし、移民の受け入れも、スーパーシティの推進も、それぞれ反対する人は多くいます。どっちも反対が多くて簡単には進まない以上、現状維持では緩やかな崩壊を待つしかありません。これはまた別の機会に書こうと思います。

🛫日本脱出を考えるも海外で活躍の姿は描けず

「日本のお先は真っ暗だから脱出をしたい」
そうは思えども、かと言って「シリコンバレーで活躍する俺!」なんて姿を描くことも難しいんではないでしょうか。
実際、シリコンバレーで野心に燃える日本人主人公が登場するようなアニメって見かけないでしょ?
そもそもシリコンバレーで主人公が活躍する姿を描くには、描く本人にシリコンバレーでの生活経験が無いと無理なんですよ。シリコンバレーに限らず海外移住モノを書くには海外在住経験が無いと無理ですし、なんだかんだで海外移住となると抵抗があるというのが、殆どの人の該当地点でしょう。よって当然、海外移住モノのアニメなんて殆ど出ません。
そう言えば「ご注文はうさぎですか」は珍しくフランスが舞台でしたね。登場人物の名前は日本人名になってるんで、もしかしたら日本領フランスなのかもしれんし、桐間紗路だけが生粋のフランス人で、他のみんなは日系フランス人なのかもしれんけど・・・。

🏰ドラクエⅢというフレームワーク

日本を脱出したくとも、海外に移住するということの具体的イメージを作ることができないジレンマは、解消する術なんかあるんでしょうか。それが唯一、憧れのヨーロッパ移住ならイメージできたのです。但し中世のですが。
じゃあどうして現代ヨーロッパではなく、中世ヨーロッパの世界観なのか。それはフレームワークがあったからです。
このすば佐藤カズマは異世界へ行った後、どこへ行きましたか?
そう、ギルド(酒場)です。中世モノRPGでは作品によって「酒場で知らない人を仲間にする」というプロセスが存在しますが、このフレームワークとなっているであろう作品がドラゴンクエストⅢ。ドラクエⅢは単一の作品であると同時に、その後のRPGに大きな影響を与えたフレームワークでもあるのです。
アプリ開発でもプログラムを書く量を減らして効率化するためには、ライブラリやフレームワークというものが使われるように、異世界転生モノではドラクエⅢが一つのフレームワークになっているのです。
異世界転生モノで未来へ行く作品って殆ど見ないでしょう?
恐らく未来を描くSF転生モノは「今の日本をベースにしてしまうと明るい未来が見えない」というのもありますが、体験が無いのでイメージし難いというのもあるかもしれません。
あと言えることは、佐藤カズマが異世界到着後、ギルドを目指したのはゲームを通じた中世世界の疑似体験をしているからとも言えます。リリーのアトリエやエリーのアトリエでも、仕事を貰うのは酒場です。
よって「酒場に行けば取り合えずなんとかなる」ということが、疑似体験としてストックされているのです。
一方、未来に飛ばされた場合、過去の経験は恐らく活かせません。いや、高校生が転生するなら、色々と学び直しが利く分、未来に転生して欲しいものなんですけどね。ただ、過去に飛ばされる場合と異なり、未来に飛ばされた場合、自分の経験が活かせる可能性ってのは少なくなるわけです。
ま、個人的には異世界に転生させられるとしても、やっぱり現代に転生したいですけどね。
せめて鉄道網が発達してて、スーパーマーケットとリサイクルショップ、家電量販店だけはあって欲しいものです。

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