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高卒の僕が大学時報を読んでみた🏫

練馬の図書館に行った時にリサイクル図書として並んでいた、大学時報。なぜコレがリサイクル図書にあったのかよくわからないのですが、なかなかにレアなリサイクル図書を見つけた気分になり、いただいてきたのが昨年3月号なのであります。
と言っても普段はなかなか読む時間が無かったのでして、先月、白浜と京都に行っていたタイミングでようやく読破することができました。
冊子としてはそんなに分厚い本では無いのですが、思った以上にボリュームが多く、読み終えるまでに時間が掛かりましたね。

🏫やっぱりリカレント教育に対する無償化が必要な件

大学時報2020年3月号は次の2つの特集があります。
❶SDGsに向けた大学の取り組み
❷履歴証明プログラム活用の現状
加えて、小論文として立命館大学の「時代の要請に応えるリベラルアーツ教育」という論文があり、他は加盟校の幸福度ランクアップなんかが掲載されています。
とりあえず全体としての感想はアレですね、やっぱりこう、大人のリカレント教育に対する無償化って言うのは、やった方が良い気がしています。
一昔前、れいわ新選組やFREEという団体が高等教育の無償化をしきりに訴えていたのですが、ある意味で今言われている「高等教育無償化」っていうのは18歳-22歳を対象とした「ゆくゆく新卒就職することになる若者向けの無償化」という視点で為されていたと思います。
実際のところ、大卒者と高卒以下とでは生涯年収に格差が生まれてしまう現状があり、そうした格差を是正するための手段としての高等教育無償化というものだったのではないか、と今に思うわけです。
ただ、現実に職務をやっていく中においては、単に業務を遂行するだけなら中卒レベルで充分な内容が沢山あります。
コールセンター時代の口癖に「こんな仕事は中学生でも出来る」はよく言っていて、周りから反発喰らってたんですけど、今コールセンターの仕事を振り返っても、やっぱりコールセンターの仕事って中学生でも出来るんです。
「覚えることが多い」ということで研修脱落していく人の多いコールセンターですが、基本的にテクニカルな内容でもない限り、覚えてしまえば回答が決まっている仕事なので、高卒レベルのスキルなんて必要じゃないんです。
もっと言えばコールセンターの研修って、個々の細かいことまで覚える必要は全くなくて、商材に対する全体像の把握をした上で、実務を通して反復で覚えていけば良い。おまけに大抵の問い合わせに対する答えはパターン化されてるんで、中学生でも出来るんです。変にプライドの高い大人より、中学生の方が優秀な成績を出せるかもしれません。
この意味では、大学卒業しないとマトモな収入を得られない現状を是としたままの高等教育無償化をやるよりは、中卒で働いても年収400万を普通に貰える社会を創った方が良いとは思います。工業高校を卒業すれば普通に実務でも通用でき、年収450万円は貰えて安心して暮らせる社会を目指した方が良いでしょう。
ただ、一度就職しても、大人になってから学び直しをする必要性というのがどうしてもあります。日々漫然と業務をしていると、会社のこと以外は何も知らない自分が出来上がってたりするんですよね。
「社会人」という言葉はあるのに、実は社会のことは何も知らない、会社のことしか知らない「会社人」が出来上がってたりするわけです。
その点、大学は確かに社会との接点が多いなという感じはしますね。明星大学なんかはオープンソースカンファレンスの会場になったりして、この時は外部の人間が多数、明星大学に学びに行くタイミングでもあります。展示だけでなく、セミナーもまた、カンファレンスの目玉なので。そして大学で扱っている内容というのは、まだ正解の出ていない領域だからです。

🍃やっぱ大人になってからの学び直しが必要だよね

理系なんかだと卒業後、すぐに職業人としてやっていけるよう、専門的な研究をやっていくと思うのですが、人文系は履修したからと言って即実務で通用するなんてことは無いのでしょう。だから産業との繋がりが深いのは基本的には理系だろうし、産業界から見たら人文系はどうでも良いですから、文系不要論なんかも出てくると。
まぁ理系を大人になってから学び直すって、なかなか厳しいものはあると思っていて、少なくとも数学はもう、二次方程式は解けないです(苦笑)
じゃあ社会学系はどうかって言うと、これは大人になってから学び直す機会を設けないと、世の中の流れにはついていけないなという気がします。
SDGs(サステナブル・デベロップメント・ゴールズ)は2030年までに貧困や地球環境に対する問題を解決していくことを目指していますが、じゃあSDGsを知ってる大人がどれだけいるかって言うと、まぁ疑問です。
いや、少なくとも勤務エリアな西多摩の住民がSDGsなんて聞いたら「SDガンダムズのこと?」とか言いそうな気がするんだけど、SDGsは決して工学だけに留まるようなものではなく、社会的な課題として取り組むべき問題です。
例えば長崎新幹線なんか絶賛、佐賀と長崎&国が揉めている最中ですが、果たして新幹線を作ることが持続可能(サステナブル)な社会に貢献するのかどうか。1億2000万人の人口、かつ若い世代の多い構造を維持できるならいざ知らず、日本は少子高齢化で人口減少を迎えるのです。
北陸新幹線の延伸はどうでしょう。少なくとも現在の状態でさえ高岡市は痛い目に遭わされました。高岡駅に新幹線は停まらないのです。
新幹線の開業を急ぐあまりに新高岡駅を通るルートにしてしまい、並行在来線問題によって第三セクター化された在来線の運賃は値上がり。かくして新幹線によって高岡市は衰退し、財政は破綻。
これが恐らく今後、鯖江市や越前市に待ち受ける未来となります。
社会人向けプログラムとして司法通訳の講座を行っている青山学院大学も、近年移民が増加してきたことにより、外国人向けに司法との橋渡しを出来る存在が必要となり、司法通訳のプログラムが開講されたわけですが、論文中に次の言葉がありました。

2019年度は外国語を母語とする受講者はいなかった。それには受講料の負担が影響しているのかもしれない。奨学金のような仕組みができれば、受講者の幅はもっと広がる可能性がある。

改めて本を見返しても、大学で学ぶ内容というのが、結構「時代を反映した内容」なんですよね。
日本はどうも「若い内に一度大学を卒業して安定収入を得られればそこでゴール」という価値観が多い気がしますが(それもリカレント教育受講率の低さに繋がる)、多分、潜在的には学習意欲のある人は割といると思うのですね。僕が東洋大学の通信教育部に行ってた時も、やっぱり入学当初はみんなやる気あるんですよ。ただ通信教育はモチベーションの維持が難しいんだけど・・・。
大学で扱ってる内容が現在抱えている課題に対する研究である以上、大人になっての学び直しは絶対必要だし、学費が障害になるなら無償化は必要になるでしょう。少なくとも年収300万で学費払えと言われたらキツイよね。
小学生向けのプログラミング教育が始まる前、明星大学で教育と学びのフォーラムで行われた議論を思い出します。
やっぱり教職員だけじゃなく、エンジニアも社会貢献の為に自分も何かしたいという想いを持った人は多かったのですが、みんな「何から始めて良いかがよくわからない」という状態でもありました。リソースないからね。

🍀教育・教養は人間力の形成にも必要なものである


大特集として組まれていたSDGsの取り組みは今現在起きている社会問題に対する取り組みであり、司法通訳はグローバル化していく中で、日本語のわからない外国人にも等しく裁判を受ける権利を保証するために必要な人材であります。
OSCで行われた議論を振り返っても、大学には単に知識だけではなく、人を集める機能もあるんですよね。人が集まって議論していくこと、答えの出ていない課題を研究していくことは、言ってしまえば人間力の形成にも必要なことなのかもしれません。
だからこそ教育には投資をする必要があるのでしょう。
とは言え、日本人の所得(実質賃金)は低下し、経済的な貧困は確実に増えてきました。
「貧すれば鈍する」
当然、貧困世帯が教育にお金をかけれる余裕はなく、高等教育を受ける機会が無ければ、人間力を作る機会というのもまた減っていくのでしょう。
ここで行政まで教育にお金を使うことを渋ると、ゆくゆく国力の低下も避けられないのかもしれません。
大学時報2020年3月号を読み、オープンソースカンファレンスで行われた議論を思い返すと、改めて「大人にこそ大学教育を受ける機会が必要なのではないか」と感ずるものがあり、生活費で収入の大半が使われてしまう世帯には、やはり無償化が必要なのではないかと思います。

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