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ビッグデータという独裁者ー「便利」とひきかえに「自由」を奪う:読了🌐

新職場での昼休みは本を読むくらいしかやることも無いんで、京都市内の図書館で利用者登録をすることと致しました。
京都市内は人口の割に少し図書館が少ない気がするのが難点ですが、市内の図書館の全部の本を読めるわけでもないので、まぁ2週間に1冊は読み終えることを一つの目標として掲げることに致しましょう。

🌐反GAFA色強めな欧州

今回選択したのは「ビッグデータという独裁者」という本です。
黄色という色があまり好きでは無いのですが、しかしタイトルの付け方は上手いなと思ったのが借りた動機です。
それはそうとして、ヨーロッパはやや反GAFAの動きが強い面もあって、法的にも「デジタル市場法」「デジタルサービス法」の2つを策定しているわけです。
そういう意味では、この本も欧州の人間だから書けたという面はあるかもしれません。
欧州が反GAFA的な動きをしているのに対して、日本は親GAFAです。
何せ自治体のクラウドまでAWSとGCPと来てますからね。
じゃあ何で欧州はGAFAに反旗を翻しているのかと言うと、個人データの取り扱いの他、やはり盗聴という面でもGAFAを信用していなかったということになります。

🌎通信はCIAに筒抜けでしょうね

昔、LINEは韓国の諜報局に通信を盗聴されていたことは話題になりました。今はカスペルスキーが同じく露にデータを盗まれてる危険性があるってことで辞めることが推奨されてますし、ファーウェイも同じく盗聴の疑惑で大バッシングを受けておりました。
んじゃ米国はホワイトなのかっつうと、そうではありません。
そもそもCIAはシリコンバレーのスタートアップに投資をしており、CIAとビッグデータ企業は云わば一心同体とも言える仲なわけです。
そんな中でエドワード・スノーデンによる「実は皆さんの通信盗聴してました」的な曝露により、欧州では反GAFAの流れが加速したわけですね。
ポケモンGOはスパイウェアと言う話もありましたが、ともすれば検索エンジンそのものもスパイウェアかもしれませんし、Amazonの取引履歴、TEAMSの会議などは、CIAには筒抜けかもしれない。ともすれば検索エンジンそのものがスパイウェアかもしれないわけです。
尤も、それを気にしだすと、途端にインターネットには接続できなくなってしまいますけどね。

🍃不老不死を目指すGoogle

Googleという会社の野望も飽くなきものなのか、バイオジェンという企業とバイオ研究やっていたのは驚きでしたね。
目下、目先は人間の寿命を20年伸ばすのが目標なんですって。血液中から病気の兆候を見つけられるナノ錠剤なんてのを、既に作ってるらしいです。
どうやらマジで不老不死を作ろうとしてるらしい。
正にDBの世界。DBはDBでもデータベースではなく、ドラゴンボールの世界ですな。

🏥全ての要求に先回り出来る

和歌山県で白浜町を筆頭に盛んに実証実験が進められているスーパーシティ構想。スーパーシティの行く先は超・監視社会になる。
これは前々から言われていたことでありますが、実際問題、それ自体は間違ってないです。
スーパーシティを運営していくためにはビッグデータが必要で、その個人データを自治体を含む複数の関係団体でデータを共有・連携し、行政や医療サービスを効率化することにあります。
実際問題として、少子高齢化が進む日本では、スーパーシティ無き持続可能な社会の実現は無理かと思いまして、私自身、前職ではスーパーシティへの参加を客先に薦めていたりもしてました。
スーパーシティではAIやビッグデータ等を活用し、遠隔医療や健康管理に活かされる予定ですが、少子高齢化の進む日本では少ない医者で大量の高齢者を診て行かなければならないことになります。
その際に重要になるのは、介護施設や病院とのデータ連携をする「見守り」です。
「見守りサービス」なんて言うと聞こえは良いですが、直接的に言えば「監視」です。
健康状態の収集に役立てていくのに必要なアイテムが「ウェアラブルデバイス」というもので、AppleWatchなんかが良く知られていますね。
スーパーシティでも高確率でAppleWatchは活用されるでしょう。
このデータ回収&連携によって実現できるのは、患者に必要な医療・介護を「先回り」して提供できるようになる点です。
例えばAmazonなんかは常に利用者を監視しているわけです。
あるものを買うと「こんなものも欲しくありませんか?」なんてお節介を焼いてくるでしょう?
スーパーシティではこうした「先回り」を医療や介護でも実現できるようになります。その一方、ウェアラブルデバイスによって、24時間インターネット接続を強要されるような状態になることは、まぁ有り得ないことでは無いでしょうね。

💻国家を破壊し…機械や企業に人間が統治される時代へ

少なくとも著者の思想的な立ち位置は私とは逆です。尤も、草の根では反グローバリズム、反新自由主義を掲げる人が増えてきていますけどね(実際その方が支持者も集まりやすい時代になったし)。
GAFAやマイクロソフトのゴール地点としては、国家の枠組みそのものを壊し、福祉を破壊し、人間がロボットに支配される時代を作ろうとしていることを、著者は大きく懸念しているように思えます。
民主主義なんて言うものも当然崩壊します。だって政治家が要らない。人間である政治家より、アルゴリズムの方が最適な解を出せるのです。
恐らく全ての国が政治をロボットに丸投げすれば、戦争は起こらなくなるでしょう。
ミルトン・フリードマンのお孫さんの1人はGoogleのエンジニアになった人で、お爺様の思想を受け継ぎ「政府とか民主主義なんて要らんやろ」と言ってます。
そして既存の国家の枠組みを破壊するための構想が「海上自治国家」と言うものでした。

尤も、新自由主義って言うのは差別や虐めを受けていた人間から浸透し、広まったもんではあるので、ITとの相性は抜群に良いです。
大阪維新の会は新自由主義政党として槍玉に上げられていますが、橋下徹が迫害を受けて育った人間ですので、新自由主義型の政治を目指すのは何ら不自然はありません。
FF7の世界では国家と言う枠組みが既に崩壊しており、神羅カンパニーという巨大企業が社会を支配していました。さすがに神羅カンパニーのような強権的な企業国家を目標とすることは無いでしょうが、その一方で、私のような新自由主義シンパやリバタリアンがデジタルディスラプションによって国家の枠組みを超えた、真に自由な世界を作りたいと願うことは、よくお見通しされてるなと思いますね。

そう言えばライブアライブがリメイクされるそうです。
本ゲームの主人公、オルステッドは数いるRPGの主人公で一番友達にしたい主人公ですが、親友に裏切られ、国を追われ、婚約者は寝取られた彼は自ら魔王になり、人間を滅ぼすことを決意します。
しかしまぁ、もしオルステッドが現実の世界に存在していたら、きっとAIにメッチャ力を入れたんじゃないかなと思います。
現実世界ではどんなに人間嫌いに陥っても魔王になることはできませんが、人工知能はもう、人間の欲求に先回り出来る時代になってきました。
恐らくドラえもんの時代にはPythonよりモダンな機械学習言語が開発されているでしょう。
そして、技術者の飽くなき探求心を止めることも難しいでしょう。その時には人間の時代は終焉を迎え、人間が機械に従う世の中になっているかもしれません。

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