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〚忍者と極道〛聖華天は等身大の氷河期世代(ウチら)なんだと思う件

ネット広告で時折見かける忍者と極道の広告は、決まって暴走師団・聖華天のメンバーが出てきます。
幻想ユメじゃねぇよな!!」は有名なミームで、忍者と極道を知らない人でもコレと「有難ッス、俺、会社辞めます」は知ってる人が多いかもしれません。

不思議と忍者と極道は主人公が広告に出ないのですが、実際のところ、作品の人気が出てきたのは第三章:暴走師団・聖華天編からのようなんですね。
じゃあなぜ聖華天編から人気が出たのかって考えると、多分、彼らが一番等身大の我々アラフォーに近かったからなんじゃないかなって思います。


🍂思秋期であり氷河期世代でもある

実は忍者と極道の主要な登場人物は、生年月日も設定されています。
作品中の時代が我々の現実世界とリンクしているので、殺島飛露鬼にしても「アラフォー」という属性と「氷河期世代」という2つの属性に属しているのです。

殺島飛露鬼の生年月日は1981年2月1日。
今はロスジェネ世代なんて呼ばれている世代で、この時代に産まれた人間は就職先がありませんでした。
私も高卒で就職する時は「働く場所があるだけ有難いと思え」と言われましたし、その後2008年にはリーマンショックがあって働き先が無かった。

そして39歳、ちょうど人生の折り返し地点です。
現実のキャリアで言えば33歳までに出世するかしないかはほぼ決まっているため、ここからは基本的に人生は下り坂。
出世コースに乗った人はともかく、そうならなかった人は下っていく人生に対してどう向き合うかを求められます。

仮に出世しても落ちていく体力に反比例して仕事が増える(そして収入はそれに比例するとは限らない)ため、何かと「この先の人生このままでええんか」と惑うことが多くなります。

🏢ブラック企業に就職した∑が果たした役割が大きい

近藤先生は「殺島の章から人気が上向いてきた」ということを単行本でも書かれており、恐らく原作者の意図以上に聖華天の果たした役割は大きかったのかと思います。
そして、その中でかなり重要な役割を果たしたのは詩隈殴偉人(しくまないと)ではないかと思うのです。

かつての仲間の招集は殺島が有羽汰駆(ありはたく)に電話するところから始まります。
多分、描写から殺島が電話をしたのは彼1人だけです。
彼は就職先の極道で人間関係に問題を抱え、半ば強制的にカタギの世界に放り出されました。

恐らくガテン系の仕事をしていたんじゃないかなと想像しているのですが、その中で結婚はしたものの、カミさんに逃げられて1億円の借金を抱えてしまいました。
ちなみに佐川急便で働くと、こういう人間もいたりします。流石に有羽汰駆ほど惨たらしい境遇はそうそういませんが・・・。

そして有羽汰駆ことαが電話した相手が、詩隈殴偉人こと∑です。
恐らくコイツが一番メンバーを集めた張本人かと思います。
よく広告で出てくる聖華天メンバーの1人ですが、彼も最初の就職先である極道を離職し、死ぬ直前まで漆黒生命保険という会社に働いていました。

作中では「ヤクザを破門された」と言われてますが、原作者曰く「自分から辞めた」が正しいそうです。
これがある意味で殺島以上に聖華天の顔となった部分かと思います。
∑の場合、一度は真っ当な道を求めて自分から極道を辞めた
つまるところ聖華天メンバー個々人は善悪の区別はでき、そこが極道との大きな違いとなっています(あの世界のヤクザは子供の臓器売り飛ばすことを何とも思ってない倫理観の集まりなので)

ところがブラック企業に入ったことで、昼休み中に泣き出してしまうほどに追い込まれておりました。
たまたま入った会社がブラック企業だったのか、ブラック企業しか入れる企業が無かったのかわかりませんが、こうした問題は現実の日本にも確かに存在しています。

私はこれまで何度か「日本は法治国家ではない」と言っていますが、これは氷山の一角に過ぎません。
スゴイでしょ?
会社で暴力を起こした人間が今も平然と娑婆を歩いているのです。
日本は法治国家ではありませんから、こうした事件を起こしても豚箱に収監されないのです。

作中の3コマ:実際「大人」の日常はクソみたいに辛い

ある意味、詩隈殴偉人の日常は我々も体験し得る日常なのです。
この記事を書いている途中で京阪本線が人身事故を起こしていたのですが、それにしても「戦争でもないのに死にたがる」者が多過ぎます。

もちろんテロは許されざる行為ですが(当の本人たちはそれが悪いことだと自覚している)作中の構図として、これまでの人生で多くの挫折を経験し、現在進行形で悩める大人ほど、αや∑に引きずられやすい構図になってます。

🚔暴走と言う名の盛大な心中(自殺)パーティー

困ったことに、殺島は決して私欲のために聖華天メンバーを集めたわけではないのです。
だからこそ忍者しのはは「誰かの為に笑って逝った。外道の癖にちょっと格好良かった」と評価したのです。

元・聖華天メンバーの生存者は5万人いました。
ところが発注した極道車は3万台しかないのです。
2万人分足りないことに、ある掲示板では「2万人は社会復帰してる(来ない)だろと思って3万台しか用意しなかったんじゃないか」という考察があり、確かに5万人集まってしまったことに殺島自身、良い顔してないんですよね。

殺島飛露鬼と言う男は常に他人の期待に応えようとした男です。
極道にしては倫理観はちゃんとあり、あくまで「自分を好いてくれる人のために生きる」ことを選択していました。
多分殺島には自分の意思(決断力)が無かったのです。

ちなみに今のアラフォー世代は暴走族が暴走族らしい活動を出来た最後の世代でもあると思います。
暴走族になるような子供の頭数自体が減ってますし、消滅とまでは行かずとも相当衰退しています。
こうして殺島、有羽、詩隈を通して大人の日々に悩む等身大の氷河期世代ウチらを突き付けられており、そこに感情を引っ張られていくことが、殺島から人気が上向いた要因なんじゃないかなと思いますね。


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