ゲームと内発的動機づけ
以前,『ゲーム研究の手引きⅡ』について紹介しました。今回は,この手引きで私が解説したキーワードのうち,「内発的動機づけ」を取り上げて,補足しながら簡単に説明していきたいと思います(『ゲーム研究の手引きⅡ』の紹介記事はこちらです)。
内発的動機づけとは
動機づけ(motivation)の類義語には,「やる気」や「意欲」などがあります。カタカナ語の「モチベーション」もよく用いられています。心理学では「行動を一定の方向に向けて生起させ,持続させる過程や機能の全般」を指します(赤井・安藤, 2013)。一般に,動機づけは内発的動機づけと外発的動機づけの2つに分類されて説明されます。
勉強が嫌いでゲームが好きな子どもを想像してみてください。宿題をやりたがらないその子どもの親が,宿題に取り組ませようとして,「その宿題やったらゲームしていいよ」と約束したとしましょう。その子どもは約束に従って宿題を終わらせました。この場合,その子どもはゲームをプレイしたいから勉強したということになります。その子どもは勉強にやる気をもって取り組んだわけですが,勉強はゲームをするための手段だったわけです。この場合のやる気が外発的動機づけです。そして,その子どもはご褒美のゲームをプレイしたいからプレイします。ゲームをすることは手段ではなく,目的になっています。このようなゲームへのやる気を内発的動機づけといいます。
基本的に,ゲームはやりたいからやるわけです。ゲームプレイは内発的動機づけに基づいた行動の代表的な例であるといえます。内発的動機づけという用語は,ゲームの面白さを端的に説明するキーワードのひとつです。私たちにとって当たり前のことを説明している用語ですが,かなり有名で,いろいろなところで使われています。
もちろん,別の目的のための手段としてゲームに取り組む場合も考えられます。その場合はゲームプレイが外発的動機づけに基づいた行動になり得ます。
表記の慣習
余談ですが,「動機づけ」を「動機付け」と書いてしまっているのを見かけます。専門書を参照すると正しい表記がひらがなの「づけ」のほうだとわかります。私は何でも漢字にすればよいというものではないと考えています。この場合も慣習となっている表記に従うべきだと思います。
もう少し詳しい話は,『ゲーム研究の手引きⅡ』の「ゲーム心理学のキーワード」のなかに書いてあります。ご興味をもたれた方は,ご参照ください。
引用文献
赤井 誠生・安藤 明人 (2013). 動機づけ 藤永 保 (監修) 最新心理学事典 (pp. 548–551) 平凡社
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