見出し画像

【Bs-T】大エース、猛虎に喰われる

 ペナントレースが嘘のように、日本シリーズで活躍する選手のことを皮肉と尊敬を込めて「シリーズ男」と呼ぶことがあるが、山本由伸は逆シリーズ男だ。5.2回を投げ7失点の大炎上。今季の通算防御率1.21の男とは思えない投球であった。今回は沈んだエースと、揺さぶった阪神打線について書いていくこととしよう。

「主砲の盗塁」、流れが一変

 今季の阪神打線1の特徴が5回に出た。先頭の佐藤輝明が出塁すると続くノイジーの打席中に盗塁。彼は決して足の速い選手ではない。しかしながらこの盗塁は山本の投じた球種が走られやすいフォークボールであったことや、捕手の若月健矢が全くの無警戒であったこと、更に言うとノイジーがアシストの空振りが功を奏して成功したと言えるだろう。この1つのプレーに対してグラウンドのナイン全員が最善の行動に出られることこそ、阪神打線最大の強みなのだ。

 こうして無死2塁のチャンスを作ると、お得意の右打ち進塁打で無死3塁、そして指名打者抜擢の渡邉諒がテキサスリーガーズヒットで先制。これで完全に山本のリズムが崩れた。もちろんこの1点で終わらないのが阪神、と言いたいところではあるが、なお続くチャンスで坂本誠志郎が犠打を失敗。この打球の処理を山本が誤る。敢えてバウンドをさせてから捕り、犠打併殺を完成させるのがセオリーのはずだったが彼は平凡な飛球として処理してしまった。この時点で山本は正常な判断をすることが出来ない状態になってしまっていたと言えるだろう。これで首の皮一枚が繋がった阪神はその後4点を追加。今季の総決算としてはあまりにもお粗末で、あまりにも大きいミスであった。

技巧派の真骨頂、村上頌樹一世一代の好投

 このnoteで戦前に星占いをしたが、「いつもの野球」ができた方が覇権を手にすると書いた。初戦は大量得点が示すとおり、阪神が「いつもの野球」をした。しかしながら、オリックスは「いつもの野球」以前にまず走者を出せなかったのだ。

 こうなったのも納得である。阪神先発の村上は2リーグ制以降、最も走者を出さなかった先発投手なのだから。ただ、初めての日本シリーズには到底思えないほどの一世一代の投球を見せてくれた。彼は山本と同い年だが、山本のように160キロに迫る直球も、140キロを超える高速スライダーもない。しかしながら、100キロ台のカーブを大舞台でも投げられる度胸があるのだ。これぞ技巧派、彼は緩急という魔術で不世出の大投手に投げ勝ち、記念すべき関西ダービー初戦勝利投手として名を残したのだ。

この記事が参加している募集

スキしてみて

野球が好き

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?