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【詩】ただ歩く〜シロクマ文芸部〜

ただ歩く
ただ歩く
ただ歩く

なんて無理だった
赤信号は容赦なく僕を止め
迷子を無視するわけにはいかず
僕は巡礼路を歩いた友を羨ましく思った

急な雨で靴の中まで濡れ
日が落ちても今日の宿にたどり着けず
肩に食い込む荷物に疲れ切り
ただ黙々と歩くだけだった
あの日哀れとしか思わなかった男を

僕も彼のように
空っぽになって歩いてみたかった
誰にも何にも邪魔されず
遠い空の下の道にひどく憧れた

だけどそれは無理だった
打ちよせるやるせなさも
あふれかえる愛おしさも
君という存在が大きすぎて
君を考えずにいるなんて
到底できることではなかったから

ただ歩く
ただ歩く
ただ歩く

その先には何があるのだろうと思ったけれど
それより先に
君という束縛の美しさに気付かされて
笑うしかなかった
いやしかし心から晴れ晴れと

だから僕は歩く
喧騒をかき分けて
歩く歩く歩く
君という甘い手荷物に
疲れゆく心地よさに痺れながら
指先まで支配される喜びに
打ち震える心を抱えて

憧れの巡礼路はしばらくお預けだ
でもそれもまたきっといいはず


小牧幸助さんの企画”シロクマ文芸部”、
お題「ただ歩く」から始まる小説・詩歌。

楽しそうだと思ったのに全然書けず
今回はパスしようと思っていたのですがふと。
なのでコメントはこれから
来週ゆっくり読みにいかせていただきます。

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