【散文】映画26作品を通して思うこと
映画のお話。自己紹介じゃなくて作品紹介。ジェットコースターみたいな展開、ハリウッド的ゴージャスがお好きな方には物足りないかもですが、ちょっと特殊なのをあれこれ、1600字でお届け。
大学時代、恩師と一緒に古い洋画を扱う映画館に足を運んだり、研究室でビデオを観たり、なかなかにごちゃ混ぜ感満載のめくるめく日々を過ごしました。
ルイス ブニュエルの「アンダルシアの犬」で実験的なフィルムの刺激に痺れ、スタンリー キューブリックの「時計じかけのオレンジ」で痛烈な皮肉に唸り、ピーター グリーナウェイの「コックと泥棒、その妻と愛人」で人間の醜さに笑いさえ漏れ(大好きなゴルチエが衣装担当でしたので、半分くらい心がそっちに持っていかれてましたが)。
正統派にもしばし。フェデリコ フェリーニを観まくって「女の都」でバカバカしさに笑い転げ「甘い生活」「そして船はいく」で虚しさの訳を知りたくなり、「8 1/2」でもう泣く泣く泣く(寂れたサーカスが今も好きなのはこの影響もあるかなあ)。
それからエリック ロメール。「緑の光線」で有名ですが私は「満月の夜」が好き。パスカル オジェの美しさは今もまぶたに焼きついて離れません。
ジュリアン デュヴィヴィエの「舞踏会の手帖」とかも観ました。古いフィルムの感じがもう夢のようで、内容云々より雰囲気に飲まれました。その当時観損ねたルキノ ヴィスコンティは、修復版「イノセント」を買ったので近いうちに観る予定。
そんな調子で学生時代はあれもこれも(まだまだありますが長くなるのでもう割愛)楽しんだ私ですが、卒業後は静かなものを追い求め……ビクトル エリセ! 最高です。「マルメロの陽光」から入って「ミツバチのささやき」「エル スール」。なんでしょう、このなんでもない時間の美しさと愛しさ。影と光、微かな呼吸。
そしてアッバス キアロスタミ。イラン映画にもハマりました。これもまたいいのです。淡々とした日々の中にどれほどの驚くべき心の機微が隠されているか、思い知らされます。「オリーブの林を抜けて」「桜桃の味」「友だちのうちはどこ?」まだご存知ない方にはぜひ観て欲しい。
あと好きなのはジェームズ アイヴォリー「眺めのいい部屋」これは衣装とかセットとか私の思う映画の醍醐味が詰まっていてBlu-rayで保存版。アラン レネ「去年マリエンバートで」もオススメです。スタイリッシュなんだけど、夢のような儚さもあって。衣装はココ シャネルです。
ジャン コクトー「美女と野獣」はDVDを持ってますがまだ観てません。「美女と野獣」は好きな童話の一つで映画ならクリストフ・ガンズが好き。衣装が高く評価されていますが私的にはちょっと尖りすぎ。一番好きなのは冒頭のベルの野良着です(ごめんなさい)。イバラの城とかセットは最高です。
サーカス好きとしてはデイヴ マッキーン「ミラーマスク」も外せません。ダークファンタジーファン必見。そうそう、今夜辺りテリー ギリアム「Dr.パルナサスの鏡」を観られたらと思っています。
とかなりヨーロッパ寄りでお届けしましたが、ティム バートンは好きです。特にアリス(2作とも)。バートンの音と色は最高級のマジックです。
Blu-ray持っているのにまだ観ていない前衛的な作品や往年の名作、映画館で観たけどタイトルを思い出せないマイナーな秀作なども、またいつか機会があったら。
邦画は語れませんが一つだけ。「蜩ノ記」染み入るような色、空気感が印象的でした。とにかく静かで美しかった(小津安二郎も好きではと勧められたので観てみたい)。
最後に映画を通して思うこと……人は多面体。だからあれもこれもに感じ入って、だけどそういうバランスは絶対必要で、自分が何者であるかなんて、やっぱり簡単には説明できないでしょうね。でもきっとそれでいい。そういうのが心くすぐって、とってもいいんだと思います。