エッセイ|第26話 どんな時も勢いは大事、素敵に華麗に
友人の結婚式に参加した日。教会へと移動する車の中で、彼女のママが言った。「結婚なんて勢いだから」一番乗りだった友人、未婚の私たちは「身も蓋もない」と苦笑した。
けれど今ならわかる。あれは結婚だけの話ではない。知らない何かに飛び込む時の話だ。ぐずぐずしていたらあっという間に過ぎていく。と言って考えなしに突っ込めばいいというものでもない。
だったら……納得して勢いをつけるだけ。それが正解かどうかなんて誰にもわからない。だから自分で決めて一気に乗り込むしかないのだ。何が出るかはお楽しみ。失敗したって当たり前。うまく言ったら儲けもの。答えなどないんだからやってみろ。ママはそう言いたかったのだと思う。卒業したての私たち、ママには迷える子羊の群れのように見えたかのかもしれない。
始めなければ起こらない。起こらなければ面白いかどうかもわからない。そしてそれはそう思った者勝ちだったりする。
その日、私はシビラのワンピースを選んだ。独特な色と形はファンタジー。裾のカットワークに一目惚れしたそれは深いフォレストグリーン。花咲く季節の教会にはぴったりだろうと思っていたけれど、いざ合わせてみると微妙な長さと大きさ。悩んだ末、下に黒のタイトミニスカートをはき、大きく開いたデコルテ部分は、黒のシルクスカーフをチョーカーみたいに巻いてアクセントとし、結んだ先を長く後ろに垂らした。
クラシカルなふんわり妖精スタイルのはずが、なんともコケティッシュでモダンな仕上がりに。それでもどうにかなったと胸をなでおろしたのも束の間、長い髪を頭上できっちりまとめてもらったら、ますます想像とはかけ離れてしまった。
鏡の中に、おめかししたムーミンのミイがいた。手の込んだコスプレみたいだ。なんだかおかしくなって笑ってしまう。でもきっと式ではみんな泣いてしまうだろうから、こんな愉快なサプライズもいいだろうと納得した。
そう、あの時から私のあれこれは勢いなのかもしれない。とにかく状況を楽しむこと。いつだって「それが切り札」と言わんばかりに。もちろんそこには笑いがつきもので。みんなが大好きだったママの言葉が、今日も私を励まし続ける。
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