【自由詩】秋が好き〜シロクマ文芸部〜
「秋が好きかい?」と尋ねたら
彼女は大きく頷いた
夏生まれの南国育ち
リネンのドレスに裸足のつま先
誰よりも透明な光が似合う人なのに
「本当に?」と重ねたら
それでも大きく頷いた
「どうして?」と引き寄せれば
「だってあなたの香りがするから」と答えた
ああ なんということだろう
無垢なる彼女を秋の中に攫ってしまおう
あれもこれも手取り足取り教えてあげよう
そんな僕の作戦など見事に吹き飛んだ
僕の知り得るすべての秋を
今すぐ彼女に捧げたいと思った
想像できるどの風景