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ウクライナ戦争の(3年目ではなく)4年目を考える あるいは「我々はどういう世界に住みたいのか」


【インサイト】ウクライナ戦争の(3年目ではなく)4年目を考える あるいは「我々はどういう世界に住みたいのか」

守勢に回るウクライナ軍

 いよいよ2024年が始まりましたが、相変わらず状況は非常に厳しいものがあります。ウクライナ軍は全戦線で守勢に回ることを余儀なくされ、その間にロシアはじわじわと圧迫を強めているからです。
 特にルハンシクとハルキウ両州のあたりではロシア軍がこれまで以上に激しい攻勢に出ようとしているのではないかとの観測が出ており、この場合、クピャンシクが焦点となるでしょう。他方、以前から懸念されていたベルゴロド方面およびベラルーシ方面からウクライナ北部に対する攻撃の再開については、今のところ顕著な兆候は見られないとISW(戦争研究所)は報告しています。

こうした中でウクライナ軍は、北東部一帯に陣地線を築き、予想されるロシア軍の大規模攻勢に備えていると見られます。昨年、ゼレンシキー大統領が命じた要塞線建設の方針に従ってもので、衛星画像観測の結果として以下のような形で建設が進んでいると指摘されています。一見してわかるようにドネツク正面が最も分厚いですが、今後はハルキウ正面にも伸びていくことが予想されます。

米国の対ウクライナ軍事援助、未だ再開せず

 ウクライナが当面、守勢に回らざるを得ないと考えられるもう一つの理由は、昨年以来下火になっている米国の軍事援助が完全に停止し、再開の見込みが立っていないという事実があります。1月11日の記者会見でホワイトハウスのカービー報道官が改めて確認したとおり、米国は昨年12月に実施した最後の大統領権限による米軍装備の引き出し(PDA)でウクライナへの軍事援助予算を使い果たし、援助は停止してしまっています。

 援助再開のための追加予算を妨害している米下院の共和党強硬派、いわゆるフリーダム・コーカスが求めているのはメキシコ国境政策の抜本的な変更なわけですが、これを政権が飲むのは難しいでしょう。結局のところそれはトランプ前政権の国境政策が正しかったと認めることになるわけですから、フリーダム・コーカスの要求を容れて国境警備を厳格化するというのは明らかに大統領選に向けた逆風であるからです。
 とすると、米国のウクライナ軍事援助は当面再開されない、あるいはこのままトランプ政権復活となってとうとう再開せずしまいとなるという可能性を考慮する必要が出てきます。

プランBを考える

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毎号買うのめんどいという声が割とあったので定額版を作ってみました。

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