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メルマガ小泉悠と読む軍事大国ロシアの世界戦略(定期購読版)

ウクライナ戦争の行方やロシアの軍事力について、毎週月曜日に配信します。単独の記事のみ購読したい方はこちらをどうぞ(https://note.com/cccp1917/m/m59a…
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記事一覧

第272号(2024年7月8日) ロシア軍の志願兵は本当は何万人なのか問題 プーチンを交渉のテーブルにつかせるには ほか

【今週のニュース】ロシア軍の志願兵は本当は何万人なのか問題 プーチンを交渉のテーブルにつかせるには ほかロシア軍の滑空爆弾がロシア領内に落ちている件 『ワシントン・ポスト』によると、ロシア軍が使用している滑空誘導爆弾がこれまでに少なくとも38回、ロシア領内に落下する事故が起きているという。  本メルマガでも以前に紹介したように、ロシア軍は2022年の秋ごろからFAB-250無誘導爆弾にUMPKと呼ばれるキットを装着して使用し始めた。UMPKはロシア版GPSであるGLONA

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第271号(2024年7月1日)ロシアの中距離ミサイル開発・配備と新たなデカップリング問題

【今週のニュース】カリーニングラードの海軍航空隊戦闘機部隊が航空宇宙軍へ移管  ロシアの軍事シンクタンク、戦略技術分析センター(TsAST)によると、バルト艦隊航空隊第34混成航空師団隷下にあった第689戦闘機連隊が航空宇宙軍(VKS)に移管された模様である。同連隊はカリーニングラードのチカロフスク飛行場を拠点とする戦闘機部隊であり、2011年にも一度VKSに移管されたが、2018年には再び海軍航空隊所属となっていた。今回の措置により、第689戦闘機連隊はVKSの第6航空

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第270号(2024年6月24日) 核ドクトリン変更に関する二つの発言、先祖返りするロシアの軍管区 ほか

【今週のニュース】核兵器使用基準をめぐる二つの発言  6月20日、北朝鮮を出発してヴェトナムを訪れたプーチン大統領は核ドクトリンの変更の可能性(特に予防攻撃を認める可能性)についてマスコミから発言を求められた。この際のプーチンの返答は、以下のとおり。  以上のように、プーチンはさほど過激なことを言っているわけではない。特に予防攻撃をドクトリンに盛り込むことを明確に否定した点は注目に値しよう。ただ、予防攻撃(превентивный удар)というのは戦争が始まっていな

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第269号(2024年6月17日) ロシア軍が戦術核演習第二段階を開始

【今週のニュース】ウクライナ向け戦闘機をめぐる二題ウクライナ空軍航空部隊司令官へのインタビュー  6月9日、『ラジオ・リバティ』が、ウクライナ空軍航空部隊司令官であるセルヒー・ゴルブツォフ准将のインタビューを掲載した。  JDAMの実証試験に目処がついてGBU-39とGBU-62の運用が始まったこと、これらの攻撃手段を活用するためにはロシアの防空システム排除が重要だがこの点についてはまだ交渉が続いていること、F-16を活用するには複合的な支援能力が求められることなど、興

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第268号(2024年6月10日) 続・博士たちの異常な愛情 核抑止をめぐる米露のつばぜり合い

【インサイト】続・博士たちの異常な愛情 核抑止をめぐる米露のつばぜり合い この数週間、核兵器をめぐる話題が米露双方からしきりに聞かれるようになりました。ウクライナでの核エスカレーション、将来の米露軍備管理、そして中国の核戦力増強を踏まえた米国による核軍拡の可能性などについて考えてみたいと思います。 「ビビってるんじゃねえよ」 サンクトペテルブルグ経済フォーラムでのプーチン発言  まず取り上げたいのはロシアの動きです。  6月7日、サンクトペテルブルグ国際経済フォーラム(

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第267号(2024年6月3日) 西側製兵器によるロシア領内攻撃の開始

【今週のニュース】スウェーデンが過去最大規模の対ウクライナ軍事援助を発表 ほかウクライナ初のコルベットがトルコで洋上試験へ  ウクライナがトルコに発注していたコルベット、ヘーチマン・イワン・マゼパが初の洋上試験を開始した。  ヘーチマン・イワン・マゼパは壊滅したウクライナ海軍再建の第一歩となる水上戦闘艦であるが、2番艦以降の起工の目処は立っていない。 スウェーデンが過去最大規模の対ウクライナ軍事援助を発表  5月29日、ウクライナのゼレンシキー大統領の訪問に合わせて

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第266号(2024年5月27日) ロシア軍の戦術核演習と北方領土のレーダーサイト

【今週のニュース】ロシア軍で大粛清が進行中 ほかロシア軍で大粛清が進行中  ロシア国防省・軍高官の逮捕や交代が相次いでいる。この戦争中、プーチンが軍の司令官クラスを交代させるという事例はかなり頻繁に起きており、最近では3月に海軍総司令官のニコライ・エフメノフ大将が罷免されていた。しかし、プーチンの5期目が始まる前後に起きているのは単なる交代ではなく汚職を理由とした逮捕である。  その手始めとなったのはティムール・イワノフ国防次官(厚生・インフラ担当)の逮捕で、これがかなり

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第265号(2024年5月20日) 北方領土と北太平洋の地政学

【インサイト】北方領土と北太平洋の地政学北方領土・千島列島に監視システムを配備?  5月3日、ショイグ国防相(当時)は、クリル列島(北方領土と千島列島を合わせたロシア側の呼称)に太平洋艦隊用の電波監視哨を設けると発言しました。ロシア軍指揮官たちとの会合の中で出たものです。ショイグによれば、今回のウクライナ戦争では黒海艦隊の電波監視哨からの情報でドローン80機以上、無人水上艇20隻を破壊できたとのことで、同じようなものがクリル列島にもなければならない、という趣旨でした(この

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第264号(2024年5月13日)プーチン政権5期目の行方と国防大臣の交代

【インサイト】プーチン政権5期目の行方と国防大臣の交代悲願としての5期目  5月7日、プーチン大統領の任期が5期目に入りました。  プーチンが大統領になったのは2000年のことですから、もう24年もロシアの最高権力者をやっていることになります。首相に退いていた2008-12年を除いても20年。もういい加減満足したらどうかと思うのですが、今回始まった5期目の任期は2030年まで続くことになっていますから、少なくもそれまでは権力を手放すつもりはないのでしょう。  さらに202

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第263号(2024年4月22日) 米ウクライナ支援予算が復活へ

【インサイト】米国の対ウクライナ支援予算がついに通過ジョンソン下院議長の変心  広く報じられている通り、長らく懸案となっていた米国の対ウクライナ支援予算案が4月20日に下院を通過しました。上院での承認とバイデン大統領の署名を経て月内には発効する見込みとされます。  ウクライナ支援をめぐっては下院の共和党強硬派の反対によって長らく予算承認が滞ってきました。その間の経緯は時事通信の以下の記事が簡潔にまとめていますが、共和党強硬派を恐れるジョンソン下院議長が予算案の審議自体を先

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第262号(2024年4月15日) ウクライナ動員法改正、「核兵器禁止条約の登り方」ほか

【今週のニュース】ウクライナで改正動員法がついに可決 ほかロシア軍需産業に対する中国の支援 『フィナンシャル・タイムズ』によると、中国はロシアの戦争遂行能力を強化するための支援を強化している。同紙に対して米政府高官が語ったもので、主に巡航ミサイルやドローンのエンジン、弾道ミサイル用工作機械、半導体(戦車・ミサイル・航空機用半導体の輸入分中約9割)などが含まれるという。また、中露によるドローンの共同生産、中国からロシアへの衛星画像の提供も行われている。  その背景には、ロシ

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第261号(2024年4月8日) ロシア軍需産業のボトルネックは?

【今週のニュース】NATOが「トランプ対策」の1000億ドル基金を検討中 ほかヤルスICBMによるパトロールを実施  4月1日、国営通信社「RIAノーヴォスチ」は、ロシア戦略ロケット部隊(RVSN)のヤルス道路移動型ICBMがアルタイ共和国でパトロールを開始したことを報じた。パトロールを実施したのは「バルナウルのロケット兵団」とされているので、第39ロケット師団のいずれかのロケット連隊による核抑止任務であろう。 「RIAノーヴォスチ」によると、パトロール距離は最大100k

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第260号(2024年4月1日) 正確に、大威力になるロシアの空爆

【今週のニュース】正確に、大威力になるロシアの空爆 ほかロシア軍春の徴兵と兵力増強の今後  3月31日、プーチン大統領は、春の徴兵を命じる大統領令に署名した。4月1日から6月15日までの間に合計15万人を軍に召集するよう命じるもの。  なお、2020年代に入って以降のロシアの徴兵数は以下の通りである。  ここから明らかなように、2022年まではロシアの徴兵者数は漸減傾向を辿っていた。ピーク時には年間50万人くらい徴兵していたので、半分ほどまで減っていたことになる。

第259号(2024年3月25日) 14個師団増設は動員の前触れか?(多分違うという話)

【インサイト】戦時下で進むロシア軍改革 14個師団増設、「河川小艦隊」設置など 3月20日、モスクワでは定例の国防省幹部評議会が開催されました。四半期に一回開催されているものです。実際に何が話し合われているのかは明らかでないのですが、ショイグ国防相の発言録だけは毎回公表されます。今回は表題に掲げた通り、重要な論点が幾つか出てきたので詳しくみていきましょう。 物資装備補給担当国防次官の交代  ショイグ発言の冒頭は人事で、物資装備補給(MTO)担当国防次官がアンドレイ・ブル