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第265号(2024年5月20日) 北方領土と北太平洋の地政学


【インサイト】北方領土と北太平洋の地政学

北方領土・千島列島に監視システムを配備?

 5月3日、ショイグ国防相(当時)は、クリル列島(北方領土と千島列島を合わせたロシア側の呼称)に太平洋艦隊用の電波監視哨を設けると発言しました。ロシア軍指揮官たちとの会合の中で出たものです。ショイグによれば、今回のウクライナ戦争では黒海艦隊の電波監視哨からの情報でドローン80機以上、無人水上艇20隻を破壊できたとのことで、同じようなものがクリル列島にもなければならない、という趣旨でした(このほかに北極圏でも監視哨を復活させるとの発言あり)。
 要するに千島列島から北方領土にかけて監視レーダー網を設置しようということであると思われます。ショイグの口ぶりからすると、想定されているのはUAV(無人航空機)を探知できる対空捜索レーダーとUSV(無人水上艇)用の対水上捜索レーダーでしょう。
 ただ、現時点で衛星画像で観測できている範囲では、このような具体的なシステムの建設・展開に関する兆候はほとんど見られず、唯一、択捉島のブレヴェストニク飛行場でレーダーサイト建設の動きがある程度です。しかし、これは空軍の施設でしょうし、その中身も従来から配備されていた捜索レーダーである可能性が高いと思われます。まぁ対UAVという意味ではこれもショイグのいう沿岸監視システムに含まれるのかもしれません。
 あるいは海軍用ということなので、ポドソルヌフみたいな超水平線レーダー(OTHR)が配備される可能性も考えてみたのですが、あの種のシステムは電力をずいぶん食いそうですから、島嶼部ではおそらく困難でしょう。それでも敢えて配備できそうな場所を考えると、それなりに発電施設がある択捉でしょうか?まぁそれならカムチャッカに配備したほうが早いかなという気もします。
 いずれにしても、千島から北方領土にかけてのエリアに監視システムを配備するという話は6年前にも一度出ています。それ以降、この周辺の監視インフラが目に見える形で増強されたという様子は見られないわけで、とりあえず今回も生温か目に見守っていきたいと思います。

北方領土駐留ロシア軍の現状

 監視システムに限らず、北方領土駐留ロシア軍はこの数年、大きな動きを見せていません。目立った増強といえば開戦直前にS-300V4地対空ミサイルが配備されたことくらいですが、開戦後に撤去されてしまったということはこのメルマガでも紹介しました。

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