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第189号(2022年8月29日)ロシア軍大増強の可能性と極東大演習

【今週のニュース】「ヴォストーク2022」演習をめぐる番狂わせ

 8月29日、ロシア国防省は、予定されていた東部軍管区大演習「ヴォストーク2022」の詳細を公表した。以下、その中から興味深い点を取り上げてみたい。
 第一に、従来は8月30日から9月5日とされていた実施日程が9月1日から7日に変更された。定期的な大演習の日程が突然変更されるというのは異例のことであり、おそらくかつてなかったのではないかと思われる。それも開始の前日に公表されるというのはさらに「異例感」が強い。
 ただ、第186号でも取り上げたように、「ヴォストーク2022」の実施に関するアナウンスは7月末になってからようやく出てきた。この点からしてもこの演習は以前からどうにもバタバタした印象が付き纏っており、おそらく戦争と並行して軍管区レベル大演習をやらねばならないというのがそもそも無茶なのだろう。

 第二に、今回の国防省発表では「ヴォストーク2022」の参加兵力と実施場所が次のように発表された。

参加兵力
・兵員:5万人以上
・兵器・装備:5000点以上
・航空機:140機
・艦艇・補助船舶:60隻
演習実施地域
・ブルドゥヌィ(ブリヤート共和国)
・ガリャーチエ・クリュチー(択捉島)
・クニャージ・ヴォルコンスコエ(ハバロフスク地方)
・ラグンノエ(国後島)
・セルゲーエフスキー(沿海地方)
・テレンバ(ブリヤート共和国)
・ウスペンスキー(サハリン州)
・オホーツク海・日本海の海上及び沿岸部

 まず目につくのは参加兵力の規模である。2014年の第一次ロシア・ウクライナ戦争以来、東部軍管区での「ヴォストーク」演習は大規模化の一途を辿ってきた。欧州部では2011年版ウィーン文書(VD2011)の規定によって1万3000人以上の兵員を動員した演習がやりにくい(できないことはないがオブザーバーを招聘せねばならない)という事情があるが、極東部ではこうした縛りがないので、大規模訓練をやるにも西側に対する軍事的メッセージを送るにも「ヴォストーク」演習は都合のよい場所だったということだろう。こうして前回の「ヴォストーク2018」などは公称で30万人弱を動員する巨大演習となった。

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