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DEEP DIVE

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日本発の公開情報インテリジェンスを目指すプロジェクト「DEEP DIVE」のパイロット版です。衛星画像や公刊物から得られた安全保障上の知見を広くシェアしていきます。
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#安全保障

北朝鮮海軍の動向など(日本海側)

北朝鮮海軍の動向など(日本海側)

亜覧澄視、小泉悠(@OKB1917)

はじめに 前回に新浦南造船所における新潜水艦の建造の兆候を世界に先駆けてお知らせしましたが、今回はその続報を含めて日本海側の北朝鮮海軍艦艇(東海艦隊の艦艇)の動きなどを衛星画像を交えて紹介します。

新潜水艦建造の続報など 結論としては、「現在も継続して建造の動きがキャッチされている」ということになりますが、興味深いことに、昨年9月に北朝鮮が進水させた戦術核

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北朝鮮・南浦造船所で確認された艦船など

北朝鮮・南浦造船所で確認された艦船など

亜覧澄視

はじめに 令和6年2月2日、北朝鮮の朝鮮中央通信(KCNA)は「金正恩総書記が南浦造船所を現地指導」したと報じました。この報道では、①南浦造船所の近代化、②今後の海軍用艦艇建造について言及されるとともに、金正恩総書記が造船所屋内や岸壁内で完成前の艦艇を視察する画像が公開されました。
 この画像の中では未知の新型艦が確認されたため、当記事で簡単な検証などをしていきます。

画像の撮影位置

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北朝鮮の軍用無線機輸出フロント企業「GLOCOM」社の制裁違反などについて

北朝鮮の軍用無線機輸出フロント企業「GLOCOM」社の制裁違反などについて

亜覧澄視

はじめに  2017年2月、マレーシアのクアラルンプール国際空港で北朝鮮の金正恩朝鮮労働党第一書記の異母兄弟である金正男氏が暗殺され、マレーシアと(暗殺したとされる)北朝鮮の外交関係が悪化したことは多くの方の記憶に新しいと思う。

 その際にクアラルンプールを拠点とする「GLOCOM」社は北朝鮮のパン・システムズ社のフロント企業と指摘されるなどして、マレーシア当局は「GLOCOM」社と

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北朝鮮・南浦における造船所の動き

北朝鮮・南浦における造船所の動き

亜覧澄視、小泉悠(@OKB1917)

はじめに 南浦特別市は北朝鮮西部の黄海に面する主要都市として知られており、同市には北朝鮮有数の造船所として知られる南浦造船所が存在する。そこで軍用艦艇の建造が行われているだろうことは言うまでもないが、北朝鮮西部で「大型軍用艦艇」を建造可能な唯一な場所であることは見落とされがちである。
 今年8月28日の「海軍節」に北朝鮮の金正恩総書記が海軍司令部を祝賀訪問、

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北朝鮮の無人機基地となるか?方峴飛行場と航空機工場などを考察する

北朝鮮の無人機基地となるか?方峴飛行場と航空機工場などを考察する

亜覧澄視、小泉悠(@OKB1917)

はじめに 2023年7月27日に平壌で実施された軍事パレードとその数日前に開催が始まった「武装装備展示会-2023」で、以前に当DEEP DIVEにて発表された無人機と思われる「明星-9」多目的攻撃型無人機と6月に衛星画像でキャッチされた「明星-4」戦略無人偵察機が登場しました。
 これらの無人機は、どちらもアメリカの「MQ-9 "リーパー"」と「RQ-4

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断念?それとも完成?10年以上も造船所内に放置された北朝鮮の新型ミサイル艇の動き

断念?それとも完成?10年以上も造船所内に放置された北朝鮮の新型ミサイル艇の動き

亜覧澄視、小泉悠(@OKB1917)

はじめに

北朝鮮の海軍と言えば、潜水艦や旧式の小型艇というイメージを抱く方が多いと思われますが、以外にも北朝鮮は2000年以降から新型ミサイル艇やコルベット(注:ミサイル艇以上フリゲート未満の戦闘艦)などをスローペースで建造してきました。
今回は北朝鮮で10年以上前に建造が始まるも、最近になって依然として完成していないことが判明したミサイル艇を解説していき

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エチオピア首脳が北朝鮮起源の軍用無線機を使用している画像について

エチオピア首脳が北朝鮮起源の軍用無線機を使用している画像について

亜覧澄視

1 はじめに

  令和4年11月11日に当DEEP DIVEで「エチオピア首脳が北朝鮮起源の軍用無線機を使用している画像について」というレポートを寄稿・発表されましたが、追跡調査の結果、エチオピアのアビー・アハメド・アリ首相自身がマレーシアに拠点を置く北朝鮮の軍用無線機輸出のフロント企業Glocom(グローコム)の「GR-310」UHF/VHF/衛星無線機を使用していた事実が判明しま

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北朝鮮の軍事パレードはいつ実施?平壌の衛星画像を分析

北朝鮮の軍事パレードはいつ実施?平壌の衛星画像を分析

亜覧澄視、小泉悠(@OKB1917)

はじめに

 2022年12月の時点で北朝鮮が平壌で軍事パレードを準備している旨の報道や分析が盛んになされていますが、その後の続報を聞きません。
 北朝鮮は「国防5か年計画」に基づいて新型ICBMなどの開発を目標としていることから、次回の軍事パレードでそうした新型兵器(またはそのモックアップ)が登場する可能性があるため、その内容には大いに注目されます。  

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ロシアはあとどれだけ戦えるのか? ロシア軍東部軍管区における予備保管装備の衛星画像分析

ロシアはあとどれだけ戦えるのか? ロシア軍東部軍管区における予備保管装備の衛星画像分析

小泉悠(@OKB1917)

背景 ウクライナ侵略が始まってから9ヶ月で、ロシア軍は戦車1465両、歩兵戦闘車1682両、装甲兵員輸送車259両、その他の装甲戦闘車両695両にも及ぶ膨大な装備品を喪失したと見られている(1)。開戦前の時点でロシア軍が保有していた装甲戦闘車両は戦車3417両、歩兵戦闘車4293両、装甲兵員輸送車7452両であり(2)、特に戦車の損害が極めて大きい。この結果、ロシア軍

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北朝鮮の無人航空機と思われる物体を撮影した衛星画像について

北朝鮮の無人航空機と思われる物体を撮影した衛星画像について

1 はじめに 令和4年9月25日に北朝鮮の方峴(パンヒョン)飛行場を撮影した衛星画像で、同飛行場の中にある施設群の一角で見慣れない航空機がキャッチされました。 

 この方峴飛行場は北朝鮮北西部の平安北道亀城(クソン)に位置する旧式のMiG-17戦闘機を装備している空軍基地であり、ほかの基地とは異なって大規模な整備施設が設けられているのが特徴です。
 2015年3月下旬ころに金正恩党第1書記(当時

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