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うつ克服方法の矛盾【韓国エッセイ・試し読み】

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「どうしようもないことはどうしようもない」と考えるのがよい時もある。でも「どうしようもなかった」とクールにふるまおうとしても思い通りにいかないのが平凡な私たちの人生。

 韓国から届いた、自分甘やかし系(いい意味で)エッセイ『怠けてるのではなく、充電中です。』(ダンシングスネイル 著/生田美保 訳)。

 今回はその中から、ひどく憂鬱な気持ちに襲われたときに読みたい一遍をご紹介します。

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■■■ 克服できるだろうか? ■■■

 以前、右手をケガして2週間ほどギプスをしていたことがある。最初は不便でどうしようとものすごく心配したが、半日もすると不便なのに慣れてしまった。その間に痛みが消えたわけでもないのに。体を壊すたびに、私たちが苦痛に慣れるのがいかに早いかに驚かされる。治った後はまた、痛かった感覚を忘れるのもいかに早いことか。私たちは置かれた状況と環境にすぐに適応して慣れてしまう。

 体の痛みがそうであるように、心の痛みにもすぐに慣れてしまうので、傷ついた心がずっと続くと、もともと自分がどんな心で暮らしてきたのかさえ忘れてしまう。痛みがある状態がデフォルトになってしまうのだ。憂鬱を克服するには基本的な生活ルーチンを守ることが重要と頭ではわかっていても、実際に憂鬱を抱えているあいだは、それが決して簡単なことではない。憂鬱だから規則的な日常パターンを維持するのが難しいのに、症状をただ克服することが治療法だなんて。こんなアイロニーのせいでかえって、自分の意志で克服できなかったと自分を責めてしまうことが多い。


 感情と思考は身体(からだ)とつながっているので、憂鬱が実際に身体にも影響を与える。だから、憂鬱や無気力感を長く患うと、簡単そうに見えることでもなかなか実践できなくなる。私たちは体の調子が悪ければ病院に行って専門家に助けてもらうことをこれっぽちも疑問に思わないのに、心の調子が悪いときは意志や精神力で乗り越えなくてはならないと誤解している。心の調子が悪いときも誰かに助けを求めよう。まわりの助けを最大限に借りて、憂鬱の原因になっている現実的な問題をひとつずつ解決していくことが重要だ。

 最初は壮大な漠然とした目標より、具体的で簡単な、確実に実践可能なものがよい。「1週間に1回、1ページだけ本を読む」、「1週間に3回、5分ずつ散歩をする」といったような。

 小さくても、何度も達成感を積み重ねていくことで自分への信頼を取り戻すことができる。1回では難しくても、自分のペースを維持すること。そして、夜、布団に入ったら、愛する自分のためにベストを尽くした自分自身を必ず褒めてやること。

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 今日という日が、あなたにとって一歩前に踏み出せた一日でありますように。



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