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「教えるより支える人になりたい」~hanaさんの歩みと、教育にかける想い

学び直しサークル「みちしるべ」の発起人でありボランティアスタッフをしているhanaさんは、中学校で特別支援学級を担当する先生とのこと。
中学校の特別支援ってどんな感じなんだろう。なぜ教師になったのだろう。なぜ特別支援なのだろう。疑問と興味をたくさん抱えて、インタビューさせていただきました。

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「特別支援の先生」ってどんなことをしているの?

――現在は中学校で特別支援のクラスの担任をしているんですよね。中学校では基本的に教科担任制ですが、特別支援学級では先生が全教科を教えているのですか?

どの程度通常学級と交流するかによります。私はいま情緒学級を担当しているのですが、知的な遅れがない子たちなので皆さん高校進学を目指しています。知的な遅れがない場合、特別支援学校に入ること自体が難しいので。

高校に進学することを考えると、ある程度通常学級で一緒に勉強することも必要だと思っています。でも、国数英は皆と一緒に勉強すると全然ついていけなかったり集中力が続かなかったりするので、技能教科を中心に交流しています。クラスの子達は、一日の半分は支援に来ていて、もう半分は通常学級で皆と一緒に勉強している感じです。

――もともと特別支援を志して教師になったのですか?

いえ、元々は英語の教員です。英語の教員を13年やって、次の学校に異動という時に、たまたま次の学校に支援の先生がいないからチャレンジしてみないかって話が来て。その時私は産休明けで、学級担任は持ちたかったけど、通常学級でバリバリやるより支援学級で少ない人数の子たちと関わっていくのがいいかなって。

――特別支援の先生になるには免許が必要なんですか?

免許がなくてもなれるんですよ。でも始めてみたら面白かったし、これは勉強しないと太刀打ちできないなって感じたので、4年目くらいに免許を取りました。

実は支援学級の担任になって一年目に、自分の娘が体調を崩して入院したんです。付き添い中、娘が寝ているときは特別支援に関する本を読んで勉強していたんですけど、たまたまその入院中に娘が自閉症だっていうことが分かったんですよ。
仕事で勉強していたことを自分の子供に使うことになるなんて、ってビックリしましたね。でも勉強していたおかげで心構えはできました。

――それは驚かれましたよね…。じゃあ、そこからずっと特別支援の教室で教えていらっしゃるんですか?

いえ、通常学級に戻ったこともあります。
特別支援学級を持ち始めて4年目に免許を取ったんですが、その頃ちょうど特別支援学級でのキャリア教育の重要性について考え始めていたんです。特別支援の子だからこそ、自分の発達面のことをしっかり理解させた上で、働くことやキャリア形成について考えさせてから社会に送り出したいなって。だからあと一年は特別支援を持ちたかったんです。でも、次の年に通常学級の担任が足りなくて通常学級に戻ることになって、そこから3年通常学級を持ちました。そして異動のタイミングになって。
自分の中では「もう一息で形になったのに」って未練を残したままだったので、もう一度支援学級をやりたい、自分が思っていたことが形になるのかどうかやってみたい!と、支援学級の担任ができるところを探して今の学校に落ち着いたんです。今年で3年目になります。

――3年目ということは、考えていたことは形になりましたか?

形になりましたね!特別支援だからこそキャリア教育は切っても切り離せないなって確信しましたし、やりたい事はできました。

「学校が好きじゃなかった」hanaさんが、教師として学校に戻った理由

――hanaさんのnoteを読んで、ひとつ聞きたいなと思っていたのですが…。hanaさんは中学校にいい思い出がなかったそうですね。私ならそういう場からはもう離れて生きていきたいと思うようになりそうですが、hanaさんはなぜ教師として学校という場に戻ったのでしょうか。

私、小学校中学校とすごい勢いでいじめにあっていたんです。中一の時は自分は標的にされなかったんですけど、他の子がいじめにあってて。自分がいじめられた時も、他の子がいじめられているのを見たときも、結局一度も先生には言えなかったんです。
なぜ言えなかったか考えると、大人を信じてなかったんですよね。あの時、「この先生なら話せる」、「この先生なら絶対どうにかしてくれる」と思える先生がいたら、言えてたと思うんです。でも、いなかった。だから、信じられる大人になりたいな、そしていじめで辛い思いをする子をもう出したくないと思い、先生になることを決めました。

私は学生時代リーダー的なこともしてきてなくて、部活もバリバリやってたわけじゃない。いわゆる「学校の先生」みたいなハツラツさが私には無いんですけど、こういう人が一人くらい先生になってもいいんじゃないかな、自分みたいな人だから救える子もいるんじゃないかなって思っています。
教員採用試験の時に「教えるより支える人になりたい」って言ったのを覚えてるんですけど、それは今でもそう思ってますね。

――私から見たhanaさんはすごく明るくて、それこそハツラツとした印象なのですが、いじめられていた頃からどう変わりましたか。

私はわりとホワッとやってる感じですよ。熱血とかグイグイ引っ張るタイプじゃないですから。
いじめられていた時は、誰かに言って迷惑をかけるのが嫌とか、それでまたいじめられたらどうしようとか、結局自分のことしか考えていなかったと思うんです。今は自分のことより、困ってる人を何とかしたいって思いが強くなりました。
現場に出ると苦しんでる子って山ほどいて、そういう子に出会えば出会うほど「こういう子は助けなきゃいけないな」って気持ちが強くなります。
一斉指導の中で溢れていく子供達って絶対にいるし、担任の先生との相性もある。それでも学校の中に自分を引き出してくれる先生やフィーリングが合う先生が一人でもいたら、それはその子にとって救いになるんじゃないかなって。

――気になる子には個別に声をかけたりするんですか?

そうですね。通常学級の授業も担当しているので、授業中の発言とか提出物なんかを見て気になったら「何かあった?」とか「こう書いてて気になったけど、大丈夫?」とか声をかけるようにしています。

特別支援学級を受け持つ上で、hanaさんが心がけていることとは。

――支援学級ではどんな関わり方をされているのですか?

今クラスに6人いるんですけど、それぞれの障害特性が全然違うんです。それに、同じ子でも別人のようになってしまうこともあります。登校時は機嫌が良くても2時間目くらいから鬱々として部屋から出られなくなってみたり…。そういうのに個別に付き合っています。

――それはストレスにはなりませんか。

抱え込んだらストレスになるので、「うまくいかないこともあるよね!」「失敗することもあるよね!ねっ!」ていう感覚でいます。これは自分が指導するときにも自分の娘に対してもそうですね。
「そうか、この子にもこういうことあるよね」って自分にも言い聞かせてるようなところはありますね。

――なるほど、それは素晴らしいです…。そういうマインドは最初から持てましたか?

いやいや、最初は子供達の発する言葉を真に受けて「なんでこんな仕事就いたのかな」って思うこともありました。子供達って私のことが嫌いじゃなくても攻撃することがあるんです。でも悪気があるわけじゃないし、本人たちは苦しんでるんだ、一番苦しいのは本人たちなんだって理解した時に、私がそれを全身で受け止めて落ち込んでいたらダメだって思うようになりました。
「こういうこともあるよね、でも明日はきっと戻ってるはず!」って思っておかないと、次の日ケロッとしてやってきた子供たちを受け止めきれなくなってしまいますし。
娘も「こういう時もあるよね」が理解できるようになって、随分楽になれたような感じがしましたね。

小さいこだわりに付き合うようにもしています。例えば、テストで赤いバツをもらうのが嫌な子とかいるんです。間違いを直して青で丸をもらうのがすごい傷つくらしくて。なので間違った問題にもバツはつけず、直したら朱色やピンクのペンで丸をつけたりして。すごく小さなことなんですけど、そんなことで本人たちが機嫌よく生活できるならそれでいいか!って。

支援学級を持つようになってから、自分自身が丸くなった感じがします。通常学級の時には気づかなかったことに、たくさん気づくことができました。

「周りの人を生きやすく」~hanaさんの目指すものとは

――そんなhanaさんの取り組みやサークルでの活動に対する、周りの反応はいかがですか?

私がサークル活動していることは大々的には言っていないので、同僚はあまり知らないと思います。担任としての在り方という点では、参考にしてもらってる部分もあるかもしれません。通常学級でも大変なお子さんっているので。相談されるのは年配の先生の方が多いですね。今まで自分がやってきたことが通用しない子供たちが入ってきて、戸惑ってしまうことがあるみたいです。そういう時に私が生徒に相対している姿を見て、何か参考にしようとしてくれてるのかなと思ったりもしますね。

――これから学校の内外で、hanaさんはどんなことをしていきたいですか。

斜めの関係作りは私もすごく大事だと思っていて、もっと地域の中でできることがあるはずと思っているんです。学びは学校の中だけじゃなくていい。地域のお年寄りから学んだり、隣の学校の先生から学んだりするのもいいと思うんですよね。
学校にいると先生と生徒は縦の関係になりやすいけれど、ちょっと斜めというか、X 軸 y 軸 z軸みたいな、立体的な関係の人がいたら生きやすくなる子供っていっぱいいると思うんですよね。だから自分もできるだけ上下にならないように、立体的に斜めの位置にいられるような距離感で関わるように心がけたいですね。


――貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

学生時代の辛い経験を乗り越え教師になり、生徒に対しても人間対人間の関わりを心がけているhanaさん。これからもhanaさんと素敵な関係を結ぶ生徒さんが、どんどん増えていくでしょう。
この記事を読んでhanaさんとお話してみたいと思った方がいましたら、絶対に明るく受け入れてくれますので、ぜひ話しかけてみてくださいね。

私が好きなhanaさんのnoteです↓↓




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