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第九話「ことばのげんせん」

節回ふしまわ

微妙な言い回し

このセリフ、実は自分の中だけでけっこう悩んだものです。
 
正確に言えば、「あの世の獄卒」が正しい。
 
通りの良さ的には「場所」の「人物」であって、「人物」の「人物」は表現としては微妙なところ。
 
ただ、天狗てんぐと対比させるなら、閻魔の方がいい。
 
ほかの言い回しもなくはないけど、長さ的にはこのくらいがいい。
 
ということで、日本語的には、「信長の忍」とか「家康の犬」みたいな言い回しはなくはないのもあり、響きの良さを優先しました。
 
セリフひとつでキャラを生かしも殺しもするので、いつも頭を悩ませます。

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出会い頭

おおごとではある

この場面、ちびっこが侍にぶつかってしまったわけですが、それは双方がよそ見をしたからです。
 
よそ見の理由は悲鳴が上がったから。
 
悲鳴が上がったのは、一郎左が南場道場なんばどうじょうの門人を斬ったから。
 
つまり、一郎左が悪い
 
あんにゃろう……!

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鎌鼬かまいたち

ギャー

余談ですが、このシーンは脚本の上では「手から血が噴き出す」でした。
 
腕ごと斬れることで、よりダイナミックになっています。
 
もちろん武蔵四郎の性格上、腕ごといっちゃうのは自然です。
 
このように、脚本から作画の過程で変更になる表現も時折あるので、上がってきた原稿を読むのが楽しみです。
 
この侍、こんな顔してたんだなあ、とか楽しんでいます。

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武蔵四郎という男

普通、こういうシーンは照れ隠しの嘘が定番ですが、武蔵四郎は本気でそう思っています。
 
てんが下々に対してわざわざ嘘をつく意味がないという考えからです。
 
あとコイツはたぶん照れない。天だから。

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奥義・三連水車

奇々怪々

刀が相手の獲物に激突した瞬間に、次の手に持ち変えることで、反作用を受けずに斬り下ろすことができるというトンデモ技。
 
当然、反作用がないわけはないのですが、そういった少年漫画的ハッタリが大好きなのです。
 
子どもの頃、『るろうに剣心』の「二重ふたえの極み」をさんざん真似した世代。
 
三連水車は、福岡県朝倉郡の名所となっていて、ネーミングはそこからです。

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一郎左の技の名

第8話より

ちなみに、三本腕を使いストレートに斬り下ろすこの技は、三途川下さんずのかわくだりと言います。
 
ほとんどの相手はこのように力任せに振り下ろすだけで斬り倒せてしまいますが、百宍ももじしくらいの相手になるとそれだけでは通用しません。
 
そこで繰り出したのが、奥義・三連水車でした。
 
彼の技名は、漢字四文字が多いようです。
 
一郎左は「國破山河在くにやぶれてさんがあり」とつぶやいていたように、漢詩に造詣ぞうけいが深いこともあって、漢文風の響きを好んでいます。
 
ただ五言絶句等ではなく、日本で馴染みある四字熟語に近い技名が多いようです。
 
今後出てくる技名がどうなっているか、注目してみても面白いかもしれません。

さて、ブログ第十話は本日同時公開となっており、また『しごにんの侍』第十話は11月8日(水)に公開されています。

次回、ブログ第十一話は11月29日(水)、『しごにんの侍』第十一話はその前週11月22日(水)に公開予定です。

というわけで、今回ここまで。また次回のお楽しみ。