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考える力

下にある今後の職業のあり方に関する3つの予測を読んで、どんな印象を持つだろうか?

「2011年にアメリカの小学校に入学した子どもたちの65%は、 大学卒業後、今は存在していない職業に就くだろう。」 

「今後10年〜20年程度で、半数近くの仕事が自動化される可能性が高い。」

「2045年には人工知能が人類を越える『シンギュラリティ』に 到達する。」

これだけを読むと、第一印象として頭に浮かんだのが、「えっ?なんか子供達これから大変そう。AIに仕事を取られちゃうの?」だったりする。

実はこれは先日クラブハウスで「家庭でできる子供の『考える力』を育む工夫」というルームで冒頭に紹介したものだ。

こういう情報を目にした時、湧きあがって来た感情任せに情報を鵜呑みにすると、最適な選択が出来なくなるリスクがある。

なぜなら、情報には発信者(或いは引用者)の意図、切り取られた情報の場合は前後の文脈、全体のメッセージ等があるからだ。それらを知らずに、目にした情報だけで感情に任せて判断し、行動を選択すると、それはただ発信者(或いは引用者)の思い通りに動かされている可能性がある。そして、多くの場合、それが自分にとって最適ではないこともある。

上記3つの予測のうち、最初の2つに関して調べてみた。

1つ目はニューヨーク市立大学大学院センター教授キャシー・N・デビッドソン氏が2011年に出版した"Now You See It"という著書が元で、それに関する2011年8月のニューヨークタイムズ紙オピニオン記事や彼女自身のブログも読んでみた。この予測は当時波紋を呼んだそうで、ブログによると、2012年以来65%という数字は使っていないということで、数字自体も彼女自身のものではなく、他から引用したそうだ。

2つ目はオックスフォード大准教授マイケル・A・オズボーン博士がカール・ベネディクト・フライ研究員と共著で発表した論文「未来の雇用」の中の予測だった。2015年3月AXISの日本語のインタビュー記事「マイケル・A・オズボーン博士の『未来の雇用』。AIではなくマシン・ラーニングから考える」を読んでみた。

こうして調べた後にもう一度冒頭の3つの予測を読んでみると、面白いことに当初持った感覚とは全く違うものを感じた。

デビッドソン氏もオズボーン博士も、未来に対して決して悲観的というわけではなく、今私達がしているルーチーンのタスクや労働から解放され、より自由に、よりクリエイティブな事をして生きていける可能性が高いという考えなのだ。キャシー氏は、40歳以上のデジタルスキルが低い大人が、子供のデジタルスキルを誹謗中傷するのは全くの検討違いだという主張だ。大人こそが今まで学んできたことをunlearn(すでに学んだことを忘れる、捨て去る)しなければならないと言っている。

脳科学者の茂木健一郎氏も2017年6月の「AWS Summit Tokyo 2017」で「今、AIによって人間の仕事がなくなるという、いろいろな見解が出ています。仕事がなくなってもいいじゃないですか。仕事がなくなったら遊べばいいんです。IT革命やコンピューター革命の重要なポイントは、テクノロジーによって自由を獲得した人々が“創造力”を解放させられる点なのです」「何かに夢中になって遊んでいた子供の頃ほど、幸せなときってありますかね?そういう時間をある程度確保することが、これからの人類社会の進むべき方向なのかな、と思います」「人類の未来は明るいと思います」(JBpress Digital Innovation Reviewより)と言っている。

論理的思考や批判的思考等、考える力には色々な名前や定義があるが、今子供達に必要な考える力はこういう事だと思う。目にした或いは与えられた情報を鵜呑みにせず、一旦感情を横に置いて、いつ、どこで、誰が、何の意図で、どんなコンテクストで発信した情報なのかを調べる。それを基に考え、自分なりの結論に至る。

日本に入ってくる情報は原文が英語のものも少なくない。そんな時に、自分で調べて原文を理解する読解力や英語力も、考える力とワンセットで子供達には身に付けて欲しいと強く思う。そして、子供の周りにいる私達大人が先ずはそのロールモデルであり続ける努力をしていきたい。





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