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【部下を推す話】[20] 危険な愛称

仕事の話をするとき、わたしは部下たちのことを「さん」付けで呼ぶ。
仕事と関係ない話のときには愛称で呼ぶ。

Bは苗字をもじって「Bちゃん」。
Aは「A氏」「Aくん」「Aさん」etc...と安定しない。

つい先日、Aファンクラブを結成 (※本人に告知済) した際に「**りんって呼んでいい?」と聞いて「だめです」と言われてしまった。
言われてしまったが、ファンクラブ会員であるわたしとBは本人の居ないところでAを「**りん」と呼んでいる。



そんなことをしているものだから、何回かA本人に「**りん」と呼びかけてしまった。
しかし、Aは何も抵抗しない。
我慢してるのか、諦めたのか、「だめです」と言ったが満更でもなかったのか。
前2つだった場合、わたしは推しに不満を抱かせていることになる。非常によろしくない。
ある日2人になる機会があったので、本人に聞いてみた。

「最近、**りんって呼んじゃうことあるじゃない? あれ、嫌?」

Aはこちらを振り向き、

「嫌って言うか、だめです。」

と言った。続けてAが言う。

「だめです。危険です。

-…何が??

その場にはわたししかいなかったが、もし仮にわたし以外にも人が居たとしたら皆同じことを思ったのではないだろうか。
名前で呼ばれると変身するだとか、トラウマがあるとか、何かあるのかも知れない。

思うだけで止めているつもりだったのに、自分で考えている以上にわたしの頭の中は疑問符が溢れ返っていたらしい。
思わず声に出てしまった。

「危険…危険なの?」

Aがあわあわし出す。

「危険というかなんというか…とにかく、だめ、です」

あわあわしていたAは思い付いたように「前職で〜」とか色々言い出した。
駄目なら仕方ない。それ以上に、わたしは推しに嫌な思いをさせていたという事実にとても切なくなる。

「そっか、嫌な思いさせてたね。我慢してたよね、ごめんね。」

うっかり切なさが表情と声色に表れてしまったようで、Aの方が黙り込んでしまう。

-ああもう、そういうところ! そういうところが可愛いのよ。

どうしてくれようか。これだからAを推すことをやめられないのだ。

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取り敢えず、同じファンクラブ会員のBに「危険だから、**りんは駄目らしい」と報告してみた。
尚、Aは外勤中だ。

「危険って…何が???」

Bも同じことを言った。
わたしは「さぁ。なんか色々あったらしい。」と濁すことしか出来ない。

「何だろう。新しい扉でも開いちゃうんですかね??

 ……え、何の扉???」

自分で言って自分でツッコミを入れている辺り、やはりBも混乱しているらしい。
ステータスに状態異常が付与されたBは、外勤から帰ってきたAを早速引っ捕らえ「何が危険なんですか?」と突撃していった。-そういうところ大好き。推すしかない。
そんなわたしの視界の端にAがあわあわしているのが映った。

AとBのじゃれあいは見ていて癒される。
「可愛いBがじゃれかかり、真面目なAはただあわあわしている」と言った方が正確なのだが、この際どちらでも良い。
推しが2人でわちゃわちゃしているのだ、尊い以外の何物でも無い。

たぶんAは困ってるだろうなとは思ったが、最早わたしには止められない。そっと心の中で合掌する。
実際に合掌していたわけではないのに、Aには恨めしげな視線を投げられた。心を読まれたのかもしれない。

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尚、この後Aはご機嫌斜めだった。
Bの声掛けも聞こえぬ振りをするレベルで不機嫌だった。
それでも、その日他の社員が帰った後に2人で残業してるときは色んな話をしてくれるのだから、Aは義理堅く真面目だ。そういうところが本当に尊いし可愛い。

残業中にお互い仕事を進めながら話をする。
その中で更にこちらを気遣ってくれるのだから、本当にAは可愛い。
思わず「君のそういうところが本当に尊い。好き。」といつもの如く尊みを本人に伝えてしまう。
「またまたそういうことを…。」と言われたが、尊いし可愛いのだから致し方ない。



因みに、結局何が危険なのかは未だにわかっていない。
わかった方はねこのまで教えていただきたい。

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