見出し画像

【部下を推す話】[25] 「尊みのお陰で生きている。」

今月はえぐい。ずっとえぐい。何故かはわからないがえぐい。

仕事の話である。

2〜3ヶ月に一度、やってもやっても次から次へと業務が湧く月がある。今月がそれだった。
とは言ってもわたしの仕事は常に業務量が多く、そもそも現在の立場になってから残業が無かった月がない。デフォルトがそんな状況なのに更に忙しくなるなんて、本当に神様は意地悪だ。
よくやってるなと自分でも思うし、なんとかなっているのはひとえにわたしと部下たちの漢気おとこぎによるものだ。


因みに今月の激務がどれくらいかと言うと、フィットボクシングに全く触れることが出来なかった一週間でも2kg落ちるレベルである。




Aが休みだったその日、わたしは久々に定時で帰る予定だった。本当に定時で帰ることが出来る予定だったのだ。

-…まぁそうは問屋が卸しませんよねぇ。

相次ぐ【ねこのご指名案件】のお陰でわたしの予定は簡単に狂った。

うん。知ってた。

予定は未定だし、なんと言っても今月は業務量過多の月だ。定時で帰るなんて夢のまた夢だった。

「神がわたしに残業せよと言っている…」

連日の残業の所為でわたしは寝不足だった。うっかり思考が声に出てしまったようで、別フロアからやってきた後輩職員がこっちを振り返ったのが見えた。実に微妙な顔をしている。
危ない発言を心配されてるのかも知れないが、まだわたしの心は元気だ。どちらかと言えばフィジカルの方が限界値ギリギリである。
部下Bも後輩職員もわたしに声を掛ける際に「お忙しい中、本っ当にすみません…」と心の底からすまなさそうな顔をしてくる。寧ろそんな顔をさせてしまい申し訳ないのはこちらである。

-------

「ねこのさん。生きてて良かった。」

休み明けのAがわたしと2人の時にそんな事を言ってきた。
ホラー映画の途中で生き別れた主人公集団が再会した時によく言う台詞を、まさか現実世界で自分が言われる立場になろうとは。

「連日の残業ですし、本当に心配で。今朝出勤されたのを見て安心しました。」

尊い。

声色と表情から本気で言っているのがわかる。-え、どうしよう。可愛いが過ぎる。
しかもわざわざ2人になったタイミングで言ってきたというのがまた配点が高い。うっかり頭を撫でたくなる。

BはBで戦闘服・真っ黒のワンピースで出勤したわたしを開口一番で「え、ねこのさん可愛い」と言ってくれる。
更にやっぱり2人で居る時にAと同じような事を言ってきてくれた。-可愛さ2倍盛り、栄養ドリンクより効果あるな。
心配を掛けてしまっている申し訳なさもあるが、何よりその心が嬉しい。
2人には「ありがとう〜!」と伝えたが、本当は「君らの尊みのお陰で生きてます。」と言いたい。
しかし今それを言うと重い。重過ぎる。自重するしかない。



-どんな理不尽からも絶対に部下たちを守ってみせるわ。

その為にもわたしは倒れるわけにはいかないのである。
部下に毒を舐めさせるくらいならわたしが舐めるし、そうすることで部下を守れるならば皿まで食べてみせよう。
管理職になったとき、わたしはそう誓ったのだ。自分で言うのもなんだが、わたしなら仕事の成果を上げながら守りたいものを守り抜くことが出来るだろう。


取り敢えずやっと怒涛の一週間を終えたので、わたしは束の間の休息にのんびりと羽を伸ばすことにする。
週が明けたらまた一週間、気を抜けぬ日々が始まるのだから。

この記事が参加している募集

#仕事について話そう

110,380件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?