コロナウイルス対策についての仏マクロン大統領の演説(「われわれは戦時下にある」2020年3月16日)

【原文:Adresse aux Français, 16 mars 2020

フランス人、親愛なる同胞の皆さん、

木曜日の夜、わたしは皆さんに、わが国の衛生的危機についてお話ししました。そのときはまだ流行は遠いものと考えていた方もいたでしょう、しかし流行は目下の差し迫った現実となりました。

皆さんにお伝えしたとおり、政府はウイルスの拡散を抑えるべく断固たる措置を講じました。保育園、小学校、中学校、高校、大学は今日から閉鎖されています。土曜日の夜には、レストランや、国民生活に不可欠でない全ての商店も閉まりました。100人以上の集まりは禁止されました。フランスが平時にそのような決定を余儀なくされたことはありません、明らかに例外的、明らかに一時的な決定です。ウイルスの拡散からわれわれを守ることを唯一の目的とした科学的勧告に基づき、秩序と準備をもって決定されました。

木曜日の昼、統一地方選挙の第一回を予定どおり行なうという科学的および政治的な合意が成され、わたしは首相とともに投票実施を決定しました。それゆえ、昨日の日曜日に選挙が行なわれました。今晩わたしは、公共機関、各首長、すべての自治体職員、投票所を運営し選挙を管理したすべての方々に感謝したいと思います。わたしはまた、この情況にもかからわず投票に赴き、かつ衛生のための勧告とウイルス防御のための行動を厳守したフランス人の皆さんを、心から称えたいと思います。また、今晩わたしは、共和党員としての祝辞を、第一回の選挙で通った候補者の方々へ送りたいと思います。第一回の選挙によって、3万5千の自治体のうち約3万が議会を置きました〔フランスの地方選では当選に条件があり、第一回の投票で当選者が議席数に達しないと第二回の投票が行なわれる〕。しかし同時に、救命部門に携わる方々が事態の深刻さを警告しているにもかかわらず、大勢のひとたちが、公園や混み合う市場、閉店勧告を守らないレストランやバーに集まっているのも見られました。じつは生活は変わっていないのだというかのように。

そうした行動をとり、勧告を無視した方々すべてに対して、今晩はっきりと申し上げます。あなたは自分を守っていないだけでなく、他のひとも守っていません、直近の推移によれば最も若いひとたちでさえ無事では済まないのです。あなた自身に症状がなくとも、友人、両親、祖父母にウイルスを移し、大切なひとの健康を危険にさらすおそれがあります。

グラン・テスト地域圏、オー=ド=フランス地域圏、イル=ド=フランス地域圏で、医療関係者たちが命を救うべく献身的に力強く戦っています。公衆衛生が非常に悪化し、病院や医療関係者の負担が増している事態にあって、われわれのあらゆる行動、あらゆる精力、あらゆる技能を、ただひとつの目的に集中させねばなりません、ウイルスの拡散を遅らせることです。

わたしは今晩ふたたび力を込めて言います。ウイルス防御のための行動と衛生のための勧告を尊重しましょう。これは、不安定な方々を守り、感染者を減らし、救命部門の負担を抑えて、よりよい受け入れや治療を行なえるようにする、唯一の方法です。

深刻な症状がなければ、かかりつけ医に相談しましょう。高熱や呼吸困難でなければ緊急医療部門に電話したり病院に行ったりしないでください、そうしないと、すでに幾つかの地域で起こりつつある、重症患者の急増に立ち向かえなくなります。

連帯意識と責任感を実際に示しましょう。何としても、各人が各日に接触するひとの数を抑えねばなりません。それが最優先事項だと科学者は言っています。したがってわたしは、専門家や現場の方々と率直に相談し意見を聞いた上で、移動や接触を最低限必要なものに留めるための措置をいっそう強化すると決めました。明日の正午から、少なくとも2週間、移動は大幅に削減されます。

これは、戸外での集会、家族や友人の集まりも許可されなくなることを意味します。公園や路上で友人と会うことはできなくなります。自宅外での接触を可能な限り制限するためです。フランス全域において、本土でも海外領土でも、必要な移動を残すのみとしなければなりません、やむをえず買い物へ行くときは、規則を守り、最低1メートル離れ、手を握ったり頬を合わせたりしてはなりません、もちろん治療のための移動はできますが、出勤は遠隔勤務ができない場合に限り、少し体を動かす必要があるにしても、繰り返しになりますが、そこで友人や親族と会ってはなりません。すべての企業は遠隔勤務を進めるよう準備せねばなりません、それが無理ならば、明日からウイルス防御のための行動を遵守できるよう仕組みを変える、つまり従業員を保護するか、あるいは個人事業主であれば自身を保護する必要があります。わたしの演説に続いて、政府が今晩から施行される新たな規則の方法を指定します。規則違反は罰せられます。わたしは今晩、皆さんに厳格に伝えます。医療関係者の話を聞きましょう、こう言っています。もし医療関係者を助けるつもりがあるならば、家に留まり、接触を控えてください。これこそ最も重要なことです。確かに、わたしは今晩、新たな規則を定めます、禁止事項を定めます、統制が敷かれるでしょう。しかし最良の規則とは、市民として、自らに課す規則なのです。再度わたしは皆さんの責任感と連帯意識に訴えます。

こうした情況において、上院議長、国民議会議長、さらに大統領経験者たちとも相談した上で、わたしは統一地方選挙の第二回を延期すると決めました。首相は今日、国会に議席を持つ各党の党首に通知しました。この決定は全会一致で承認されました。

親愛なる同胞の皆さん、これらすべての決定は皆さんの生活に衝撃をもたらすことと思います。親しいひとと会うのをやめるのは、身を裂かれるようなことです。日々の活動や習慣をやめるのは、とても難しいことです。つながりを保ち、親しいひとに電話し、近況を伝え、近所のひとたちと協力して事に当たり、世代を越えた新たな連帯を生み出し、深く連帯し続け、連帯を更新することは、けっして妨げられません、わたしが先週の木曜日に述べたとおりです。確かにわたしは、皆さんが家にいるよう要請します。ただ、こうした情況でも冷静さを保つよう、加えて要請します。わたしは、ここ数時間のうちに、あちこちで混乱を目にしました。われわれ全員が責任感を持たねばなりません。偽の情報が際限なく出回ることなどあってはなりません。自宅に留まり、同じアパルトマンや家で暮らす身近なひとを気にかけてください。近況を話したり聞いたりしてください。読書をして、本質的なことへの感度を取り戻してください。それは、今われわれが経験している時期において、大事なことだと思います。文化、教育、物事に対する感覚が大切なのです。うろたえる気持ちを抑え、誤った風聞、半可通、まやかしの知識人は一切信じないでください。明快な言葉、透明な情報を、われわれは提供し続けます。ただ、どうか信じてください、わたしが皆さんに前代未聞の奮励を求めていることは承知していますが、しかしそうせざるをえない情況なのです。

われわれは戦時下にあります、もちろん防疫の戦争です、軍隊と戦っているのでも、他国と戦っているのでもありません。しかし敵はそこにいます、目に見えず、知覚できず、進軍してくる敵です。総動員が必要です。

われわれは戦時下にあります。政府と国会の行動は今後すべて流行との戦いに向けられねばなりません。昼も夜も、気をそらしてはなりません。したがってわたしは、年金改革をはじめ進行中の改革をすべて停止することに決めました。早くも火曜日には、政府が緊急事態に対応できるよう、必要であれば行政命令によって危機管理と密接にかかわる分野の立法を認める法案が、閣議にかけられます。この法案は木曜日に国会に提出されます。

わたしは、この法案ができるだけ早く可決されるよう、また民主的な生活と議会による監視がこの期間中も継続できるよう、国民議会と上院それぞれの議長と会談したばかりです。わたしは議長がたに感謝します、そして今ここで議員の皆さんにも感謝を申し上げます。

われわれは戦時下にあります。政治活動、経済活動、社会活動、あるいは組合活動に携わる全ての方々、あらゆるフランス国民に、国家的団結に加わるよう呼びかけます。

われわれは戦時下にあります。国家は、気力と決断と連帯を求められる戦いの最前線に立つ国民、すなわち街の病院で働く方々を支えます。われわれに要求する権利のある方々です。資材と安全を提供しなければなりません。われわれは実行します。マスク、消毒剤、あらゆる必要な備品を提供しなければなりません、われわれが面倒を見ます、見続けます。われわれは科学者とともに、病院、都市の医者、地方の医者、とりわけ危機管理の最前線にいる一般医と看護師に対して優先的にマスクを確保すると決めました。明日の夕方、最も被害の大きい25県の薬局にマスクが届けられます。ほかの地域は水曜日になります。わたしは、歯科医をはじめ多くの専門医からの声も聞きました。数時間以内に厚生相から解決策が示されます。

また、医療関係者の子どもたちの世話をしなければなりません。今日から、保育園や小学校で、最小限の託児制度が実施されています。つつがなく移動や休息できるようにしなければなりません。したがってわたしは、明日からタクシーとホテルを医療関係者のために提供できるよう決定しました。費用は国が支払います。

そう、われわれは戦時下にあるのです。この間、国は、いま最も被害を受けている地域、明日そうなるであろう地域と共にあります。したがってわたしは、グラン・テスト地域圏の住民と医療関係者の方々に、患者が急増し病院が飽和したときに支援できるよう準備することを保証します。そうした方々が何日間にも亘って経験してきたことを知っています、われわれは共にあります。したがってわたしは、近日中に軍の医療部門の野戦病院がアルザスで展開されるよう決めました。軍はまた、最も被害を受けている地域から患者を移動させ、特定の地域の病院が混雑することを防ぐよう、支援を行ないます。

われわれは戦時下にあります。木曜日に皆さんに言ったように、われわれの身を守り、ウイルスの拡散を抑えるためだけでなく、医療体制を保護するため、今朝われわれはヨーロッパとしての共同決定を下しました。明日の正午から、EUとシェンゲン圏に入る国境は封鎖されます。具体的には、非ヨーロッパ諸国とEU諸国との間の往来はすべて、30日間停止されます。もちろん、いま国外にいて帰国を希望するフランス人は、帰国することができます。

そのような決断を下さねばならないのは、今晩わたしが皆さんに多大な努力を要求しているからであり、また時間をかけて身を守らねばならないからです。国外に住んでいる同胞の皆さんにお伝えします、現地の大使館や領事館と適切に連絡を取ってください、また、われわれは希望する方や必要な方が帰国できるようにします。この前例のない衛生的危機が、人的、社会的、経済的に重大な影響を及ぼすであろうことは、皆さんも理解し予想しているでしょう。われわれは立ち向かわねばなりません。

流行を遅らせるための犠牲をお願いします。その犠牲は、最も弱い方々への扶助、企業の持続可能性、被雇用者や個人事業主の生活手段に対して疑問を抱かせるものであってはなりません。最も不安定な方々、最も恵まれない方々、身寄りのない方々が、食事と住居を得られ、しかるべき支援を受けられるよう、大きな団体とも地域の組織や機関とも連携して対処します。

経済生活について、フランスに関する限り、事業規模を問わず、いかなる企業も破産の危険性に晒されることはありません。いかなるフランス人も収入を失うことはありません。

企業について、税金と社会保険料の支払い延期、銀行の債務履行期限を遅らせるための助成、国による3000億ユーロ規模の保証といった例外的措置を行ないます。個人事業主について、この情況が続く限り、資金繰りの苦しい方は、税金も社会保険料も支払う必要はありません。水道、ガス、電気料金や家賃の支払いは停止されます。

さらに、誰であれ収入を絶たれることのないよう、部分的失業制度が大幅に拡大されます、わたしが先週木曜日に発表したとおりです、政府が詳細を詰めています。経営者、小売商、専門職の方々のために、国による連帯基金が設立され、首相は各地域圏にも寄附を募ります。これらすべての措置について、明日から政府が明確にします。要望、経済実態、分野ごとの必要事項に応じて、確実に実施されます。困難な時期にあっても経済が維持され、すべての労働者が購買力や生活維持能力を保障されるよう、われわれは約束します。

親愛なる同胞の皆さん、フランスは非常に困難な時期にあります。期間を正確に予測することはできません。日を追うにつれ、問題が継起するにつれ、科学者たちの指針に基づく実地実験が必要となります、われわれはそれに合わせねばなりません。その間われわれは対処を続け、改善し続けます。

わたしは全国でいくつもの研究班が熱心に働いていることを知っています、希望が見えつつあります、ワクチンに向かって進み続けなければなりません。わたしは皆さんに定期的に語りかけます。情況の進展について、すでに行なったように、また政府も行なっているように、そのつど事実をお話しします。

わたしは確信しています。より協力して、より迅速に行動するほど、この試練を克服できます。われわれがいっそう市民として行動し、そして医療関係者や消防士、市民の安全に携わるすべての方々が今日示しているのと同じだけの魂の強さ、愛国的献身をいっそう示すほど、この抑制的な生活から早く抜け出せます。親愛なる同胞の皆さん、ひとつになって、団結して抜け出しましょう。皆が責任感を持ち、混乱に流されることなく、制約を受け入れ、引き受け、納得し、率先して自らに課すよう、お願いします。制約の例外となる者はいません、しかしそれでも、混乱や無秩序に流されてはなりません。われわれは勝利するでしょう、しかしこの期間はわれわれに多くを教えてくれます。多くの確信や定見が一掃され、疑問に附されています。ありえないと思っていたことが幾つも起こっています。驚かされるがままになってはいけません。力強く行動しましょう、しかし覚えておいてください。勝利したあかつきには、もう後戻りすることはないでしょう。われわれは精神的に強くなり、われわれは、そしてわたしも、引き出しうるすべての結論、あらゆる結論を汲めることでしょう。

個々としても集団としても、時宜に適う高みにまで昇りつめましょう。

わたしは親愛なる同胞の皆さんに期待できると知っています。

共和国万歳!

フランス万歳!

(訳:加藤一輝)

(第一回の演説「百年で一番の危機」2020年3月12日

(第三回の演説「共に生きる根源的な理由」2020年4月13日

(第四回の演説「新たなページを開く」2020年6月14日

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?