虎の威を借る狐も嫌じゃない。

昔、職場で受けた研修で、
謎の経歴の研修講師のハゲおっさんから、
「虎の威を借る狐」というような
心理テスト?の結果を言われたことがある。

あとで同僚から「失礼だよね」と言われたが、
その時の私はピンと来ていなかったし、
別に虎の威なんか借りてないし、と思って
気にも留めていなかった。
そもそも、あやしい講師の言うことなんざ。

この1年。
とある資格を正式に名乗って(そういう団体に登録して)、
会社の外に出て「先生」と呼ばれて相談を受ける業務を
担当することになった。
「先生じゃないのに」と内心思いながらも、
慣れない業務に四苦八苦して臨んだ1年だった。

40代半ばで結婚して、大きく生活が変わったのと、
年齢もあるのだろうか、仕事でミスをいくつかした。
今までの私ではあり得ない、と思うような。
私自身の要因と組織やシステムの要因も
いくつか重なり、不幸な出来事になってしまった。

そんな中、新たな「先生」と呼ばれる仕事も増えて、
コロナになって治ってすぐ(本当は熱が出てまだ
万全じゃなかったが)無理して行ったり、
お子さんが急病という人の代打で何回か交替して
行ってあげたり、自分的には相当頑張ったと思う。

だけどミスをした、ということがきっかけで、
上の人たちは私を、その相談業務の担当から
外すことにした。
慣れないのにいきなり行かせて、スパルタだったかも
知れないという社長の意見も聞いた。
社内業務に注力してもらって、ストレスを減らして
ミスもなくすようにしましょう、という言い方で。

右も左も分からないなか、必死に上った梯子を
途中で降ろされた感も、ややある。
反面、一人で出先に行って、どんな人や相談内容が
来るかも分からないので、ストレスはすごいし、
ヒヤヒヤしっぱなしだった。
だから、ホッとしている部分も正直ある。

この前、1年挑戦したその業務がラストだった。
事前に聞いていた質問内容も、ある程度調べて
いざ当日行ってみたら、予想外の話が多く、
のっけから(ダメだこりゃ)と思った。
私ひとりの知識や経験値じゃ無理。
もっと情報をもらって事前に調べないと無理な案件。

専門職なので、本当はもっと知っておかなきゃ
いけないとは思う。
そこは本当に力不足だと痛感した。
相手も「先生」に相談しようと、わざわざ時間を
割いてくれているわけだし。
申し訳なさでいっぱいになった。

だけど。
もう一旦、私はこの業務からおさらばする。
気勢を張らない。背伸びをしない。
白旗を挙げよう、素直に。
そう思って「私の経験値ではちょっと難しいです。
社内に持ち帰って、後日対応します」と謝った。
考えられることや、やれることはやったし。
変に答えて、間違ってたら責任持てないし。

「虎の威を借る狐」。
そうか、私はその狐なのかも知れない。
資格という虎の威を借りて、中身は弱っちい狐。
でも、そんな狐でも嫌じゃない。
狐だとしても、すごく頑張ってると思う。
自分なりに調べたり、勉強し直したり、
先輩に聞いたりして、一人でお客さんの前に立って
対応してきたんだもの。

虎の威、というか虎の皮を脱いで、
狐のままで、素直に「難しいです」と言えた。
そんな狐のままで、いいじゃん。
ちょっと経験値を積んだ、少し強い狐に
なれたんじゃないの。
1年間、おつかれさま、自分。



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