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【細胞】”細胞の類似点”ってご存じですか?#2

【挨拶】

 こんにちは、catです。前回(#1)は、”細胞”と、共通の名前を付けられた物体の多様性や相違点についてのお話をさせていただきました。今回はその逆、類似点についてお話していきます。また、今回から専門的な用語が数多く登場しますが、出来る限り簡潔に書こうと思います。それでは、ご覧ください……!


【細胞は”似ている”】

 外見が、その種類によって限りなく多様である細胞。しかし、その内部の化学的な仕組みは細部に至るまで驚くほど似通っているのです。全ての細胞は同じ種類の分子で構成され、同じ型の反応を行います。

 どの生物でも遺伝情報は”遺伝子”という形でDNA分子に担われています。それらは皆、共通の構成要素で、共通の暗号で書かれ、本質的に共通の化学装置で解読され、共通の方法で増殖します。どの細胞を見ても、DNA重合体(たくさん繋がったもの)はヌクレオチドという四種類の単量体(重合体を構成するひとつひとつ)が様々に長く連なった鎖であり、その並び方の違いによって異なる情報を伝えています。これは”文字”によく似ています。どんな文でも、構成している文字は同じですよね。しかし、その並び方によって文の意味は全く違うものになります。つまり、DNA重合体という文を、ヌクレオチドという文字が構成している、と思っていただければ大丈夫です。


【DNA、遺伝子、染色体の違い】

 本題から少し脱線してしまいますが、DNA、遺伝子、染色体の違いを説明できるでしょうか?言葉自体は、どこかしらで目にしたことがあるのではないかと思いますが、区別するとなると少し難しいです。一見同じものを表す言葉のようですが、詳しく考えてみると、表している次元が異なるのです。ひとつひとつ考えてみます。

 DNAは deoxyribonucleic acid の略称で、和訳はデオキシリボ核酸となります。これを構成しているのは、デオキシリボース(糖の一種)、リン酸、塩基です。この塩基は四種類存在し、それぞれアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)と名付けられ、そのうちいずれか一つが塩基として付随しています。このように、糖、リン酸、塩基の三つで構成されたものをヌクレオチドと言い、その内、糖がデオキシリボースであるものを特にDNAと呼びます。

 遺伝子は、その生物の形や色などの特徴を決めるものです。これは、DNAの配列によって決定されます。例えば「赤い花が咲く」という特徴があるとします。それを決定するのはDNAの並び方なのですが、もちろんすべてのDNAが決めている訳ではありません。長い長いDNAの連なりの内、ごく一部の並び方が「赤い花を咲かせる」ように指示しているのです。要するに、ある一つの特徴を決定するDNAの配列(重合体のとある領域)が遺伝子と呼ばれるという事です。

 染色体は、簡単に言えばDNA重合体が畳まれたものです。生物の持つDNA重合体は、種類によって差はあるでしょうが、引き伸ばすと一メートル弱になると言われています。こんなに長いと収容できませんね。そこで、DNA重合体はヒストンと呼ばれるタンパク質に巻き付くなどして小さく畳みこまれます。そうして小さくなったのが、染色体と呼ばれるものです。

ひとことでまとめると、こうです。

DNA:「デオキシリボース」「リン酸」「塩基」の三つでできた分子

遺伝子:DNA重合体の内、ある一つの特徴を決定する領域

染色体:DNA重合体が小さく畳まれた構造体

三つが違う意味を持っているという事が分かっていただけたでしょうか?


【DNAの”働き”】

 DNAはその塩基同士の相補的な(AはTとのみ、CはGとのみ)結合し、長い二本鎖の状態で存在します。そんなDNAの役割は、タンパク質の情報を保存することにあります。DNAに書かれた情報は一度、RNAという化学的に近縁な重合体に読み取られます。これを”転写”と呼びます。情報を読んだRNAを基にしてタンパク質が合成されます。これを”翻訳”と呼びます。転写と翻訳と通じて間接的にタンパク質を作り出すことがDNAの働きなのです。また、基本的には今説明したように、DNA→RNA→タンパク質の順に従って反応が進みます。この流れを”セントラルドグマ”と言います。


【おわり】

 はい。今回の記事では細胞の類似点についてお話ししました。形、大きさ、要求物質が種類によって違う細胞ですが、内部でのDNAを介した化学的な機構はほとんど同じなんです。ヒトでもサルでも、植物でも。

 このシリーズで参考にしている書籍は「Essential細胞生物学 第四版」というものです。大学の講義で教科書に使われることもあります。文章は海外の物の翻訳なので、読みにくさを感じることもありますが、見やすい図や写真が載っているので、ぜひご覧になることをお勧めします。

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Twitter:@Catkamome

小説を書いています。半端ものですが、ぜひご覧ください。
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