コロナ以降のライブの話

またレコードを買ってしまった。コロナ以降音楽を聴く時間がかなり増えている。これまでは外出時にSpotifyが主流だったが、家でゆっくりレコードやCDを聴くようになった。去年末にスピーカーを買っておいたおかげで快適だ。ネットでディグする時間が増えたので、欲しいレコードがどんどん増えていく。困ったものだ。

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こんな風にStay Home下での音楽ライフは充実しているが、やはりライブについては非常にネガティブな状況にあると思う。僕は5月に『森 道 市場』という愛知県は蒲郡のフェスと、東京は目黒で行われる『ROTH BART BARON』のライブにいく予定だったが、残念ながらキャンセルとなった。兵庫在住の僕にとってはどちらも遠征となり気合も入っていたが、こればっかりは仕方がない。

さてこの2つのイベントだが、どちらも興行が行えない代わりにLiveの配信をしてくれた。多くのミュージシャンがこのコロナ禍において配信ライブを行なっている。手法はYoutubeだったり、instagramだったり、ちゃんとした専用のサービスだったり様々だ。僕は今回『ROTH BART BARON』の配信ライブを観た。チケット代は¥1,000だ。約2時間にも及ぶ素晴らしい演奏で、大満足だった。あのチャットもなかなか良い。

ただ、やはり言うまでもないないが、音楽ライブの配信は難しい。あのライブ特有のカタルシスはPC越し、TV越しでは味わえない。少なくとも僕は。ライブと音源は似て非なるものだ。ライブは祭祀的というか、祈りと救いの場というか、圧倒的に原始的な場所であり行為に感じる。古来から人間は一人では生きていけなかったはずだ。きっと大昔から集落内での儀式や祭りで、共通の目的で声を上げ、踊り、ビートを刻むことで自分は一人じゃないことを確かめ合っていたのだと思う。

そう考えるとライブは演者だけでは成り立たない。演者がいて、オーディエンスがいて、神聖な場が作られる。オーディエンス一人一人の歓声や、踊り、拍手がないと物足りない。祭りでシャーマンが一心不乱に舞っているのを、遠巻きから棒立ちで眺めているような感覚だ。

だからどうって話ではない。大変な世界になってしまったな。という印象である。ただ、エンターテイメントとしての側面で見れば、コロナ以降面白い取り組みが増えている。

例えば、ドライブイン式のライブイベントはSNSでもよく見かける。全く違った楽しみ方だが面白そうである。

また、先日話題になったFlaming Lipsのライブは強烈だった。この映像をぜひ観て欲しい。これが2020年なのだ。この漂うディストピア感は心がザワザワしてしまう。

そして個人的に一番驚いたのは、韓国のBeyond Liveだ。さすがエンタメ帝国の韓国である。コンテンツの質もインフラ面もすごい。Beyond Liveとは簡単に言うと生配信の為のライブ配信サービスのようである。なに言ってるんだって感じだと思うが、こういうことだ。現在ほとんどのライブ配信は、いつもの環境でライブを行なったものを配信している。おそらく平時との違いはそこにお客さんがいないということだけだ。

このBeyond Liveは配信ライブに特化した専用のスタジオを作り、そこでパフォーマンスをすることで、配信ライブの付加価値を極限まで高めているのだ。僕が先述したような祭祀的なバイブスではなく、エンターテイメントの側面を追求することで、逆に配信ライブでしか得られない価値を与えてくれるのだ。

例えば、まずステージすごい。LEDビッカビカのサイバーなステージである。そこにAR技術などを用いた演出でライブを盛り上げてくれるらしい。また、デジタルペンライトというすごいグッズがあるようだ。よくアイドルのライブなどで見かけるペンライトをアプリで購入し、配信ライブ中にアプリ内で使用すると応援できるのだ。僕がペンライトを一度も使わないままに、世の中のペンライトは物質ですらなくなり、デジタル化していくのだろうか。

一番すごいと思ったのは、このトークタイム。抽選で選ばれたファンの姿が、会場の画面に映し出され、リアルタイムでファンに質問ができたと、実際の距離を感じさせない密なコミュニケーションを。まさにオンラインでの配信ライブならではだ。

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これは韓国の企業NAVERが中心となって行なっている事業のようだ。なんどもいうが、このスピード感やクオリティは本当にすごい。(そしてこれだけ言っておきながら、僕はまだ実際にBeyond Liveを観れていない。さっき調べた情報なので、曖昧な部分があるかもしれない。その場合は申し訳ない。)

もちろんこういった取り組みは一つの例である。僕が普段ライブハウスで見るライブはLEDともペンライトともちょっと違う。ただ、業界としてこういったポジティブな新しいことがどんどん生まれて行くと良いなぁと思う。そして、当然のことながら少しでも早くライブができる環境に戻ることを願う。

今日の1曲


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