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言葉を聞き取ること①

自閉症の特徴として、相手の言ったことをオウム返しする、ということが挙げられるが、相手の言葉を聞き取って、それを正確に繰り返すことは、言葉を話すための一つの大事なスキルだと思っている。

あきひろは自分勝手に単語を言うことが多く、オウム返しはあまりしなかった。言葉を教えてきて、むしろ大人になった今の方がオウム返しをすることが多い。

課題としては、3語文以上のエコー(音声模倣)ができることと、決まった台詞のやり取りをして、相手の言ったことを聞き自分は違うことを言う、ということに取り組んだ。

まだ文字の学習を始めていなかったので、毎日読んでやっていた絵本を使って、絵を手がかりにして、3語文のエコーを練習した。「とらっく」(バイロン・バートン=さく・え 金の星社)という絵本が、3語文でできていてちょうどよかった。

「パンをはこぶトラックです」「ごみをあつめるトラックです」絵を見せて私が言い、あきひろがそれを繰り返して言う。初めは、絵を見て私より先に言ってしまったり、一緒に言ってしまったりしたが、私が言う時は黙っていて、その後にあきひろが同じことを言うという形を作った。

3つの言葉をつなげて言えると、また別の課題として「だれ」「どこ」「なに」の分類をやって、それを組み立てて話すことができると、かなり会話ができるようになる(文を読んで、意味を理解すること②)。また聞き手として、3つのことを聞き取るということが意識できると、相手の言っていることを理解できるようになる。

3語文のエコーの練習を始めて半年くらい経つと、あきひろは「ごはんのおかわりちょうだい」「ごはんにふりかけかけて」などと言うようになった。単純なエコーの時よりも。自発の要求の時の方がスムーズに言えていた。

同時に、相手の言ったことに対して、それに続く言葉を言う(イントラバーバル)の練習もやっていた。「鼻の長い動物はゾウ」という文があった時に、「鼻の長い動物は」と聞いて「ゾウ」と言うというように、質問に答える形でやっていった。「ゾウ」という言葉がすぐに出なければ、ヒントとしてゾウの絵を見せてやった。

質問と答えをパターンで覚えてしまいがちなので、質問は「首の長い動物は」「耳の長い動物は」「空を飛ぶ乗り物は」「空を飛ぶ虫は」など、答えの絵カードを用意して、どんどん変えていった。

「お買い物する時はどこへ行くの」に対し、出かける時は靴を履くので、「くつ」と答えたりしたが、「お買い物」と聞いて「くつ」と答えられたのは、聞き取りと応答という点で大きな進歩だった。

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