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文を読んで、意味を理解すること②

1998年1月~

あきひろは音声での言葉のやり取りが難しいので、文字を手がかりにして意味を読みとる練習をしていった。私たちは言葉の意味を理解するために、ものの名前を覚えるだけでなく、それらをグループ分けして、頭の中に整理して置いている。そのことをあきひろに教えるために、「だれ」が「どこ」で「なに」をしている、という文章を読んで質問に答えるということをやった。

絵本やワークブックから適当なイラストをコピーして、その横に文章を書いた。「ゆうじくんが はみがきをしています」と書いて、「だれ?」「なにをしているの?」とたずねる。絵を見れば大体の意味はわかるが、「だれ?」と聞かれた時、「ゆうじくん」ということは文字を読まないとわからない。

「だれ?」と聞いて、すぐに答えられなければ、「ゆうじくん」と書いてあるところを指差して一緒に読んだ。それを繰り返すうちに、絵の横に書いてある文に答えが書いてあり、「だれ?」に対して「人」を答えるということが、まずわかった。

「どこ?」に対して「場所」を答えることは、まず「場所」は絵で表すことが難しく、トイレや公園など、あきひろが知っている身近な場所を問題文に使った。この時は、使える場所の名前の数が少なかったが、概念ができると、生活が広がるにつれてきちんと分類されて増えていった。

「なに?」をたずねる質問では、「パン」「コップ」などの物はわかりやすかったが、「なにをしている?」という動きの言葉は「動作の命名」として、様子の言葉なども別の課題としてやる必要があった。この時点では「なに?」という質問に対して、文を読んで正しく答えられることを目標とした。

しばらくして正解率が上がってきたので、絵をなくして文だけにした。すると、「どらえもんは まくどなるどに いきました」という風に、あきひろがよく知っている語句を使ったが、「だれ」「どこ」「なに」が正しく答えられても、言葉と実物が結びついていないことがわかった。

「どらえもん」は「人」のカテゴリーに入れるが、あきひろが知ってるドラえもんのことだとは、わかっていなかった。これまで、「あきひろくんは」「おかあさんは」と身近な人で問題文を作っていたので、架空のキャラクターになると、あきひろにとっては、今までと違うことになってしまったのだろう。それを結びつけるには、また一つステップが必要だった。

食べ物や動物などの分類と比べて、「だれ」「どこ」「なに」は難しかったが、これがきっちりとできるようになったので、周りの人との会話、質問に答えたり、要求を伝えることができ、気持ちの安定に繋がっているのではないかと思う。

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