他者との関わり①
1997年12月~
あきひろが2歳の時に、弟のゆうじが生まれた。あきひろは、ゆうじに全く関心がないように見えたが、ビデオに撮った様子を見ると、とても意識しながら避けているのがわかった。ゆうじが泣くと嫌がり、泣くのをやめさせてほしくて、その度に私のところに来ていた。
ゆうじは成長するにつれ、好奇心いっぱいでお兄ちゃんの後をついて回り、なんでも真似をした。あきひろにとっても、ゆうじがいることが日常になり、大人のように自分に合わせてくれない子どもの中で、関わることができる特殊な存在だった。
私が問題を出してあきひろが答える、というスタイルができたので、その間に「ゆうじに答えを聞く」というステップを挟むことにした。
紙コップを3つ用意して、1、2、3と番号を振り、伏せて置いたうちの1つにお菓子を入れておく。
私「ゆうじくん、何番ですか、って聞いてごらん」
あきひろが「ゆうじくん、なんばんですか」
ゆうじ「1ばんです」
そして、あきひろが1番のコップを開けるとお菓子を手に入れることができる。
「ゆうじくん」と言う時は、私ではなく、ゆうじを見て言い、私が間に入らずに、あきひろとゆうじが直接やり取りするようにした。また、「さまざまな概念を教える(ある・ない、右左)」の課題と並行して、紙コップの右か左をも答えにした。これまで一緒にやってきたおかげで、ゆうじは自分の役割を理解して、いいタイミングで言ってくれた。
また、あきひろとゆうじの立場を逆にして、ゆうじがあきひろに聞いて、あきひろがゆうじに教えてあげるというパターンもやった。この場合は、紙コップに絵カードを乗せて、「くるま」「りんご」など簡単な答えにして、あきひろが言いやすいようにした。
質問と答えの立場は1回ごとに交代して、初めのうちは、ゆうじが「どこですか?」と言った後、私が「あっくん、どこかな?」と聞いて、あきひろがそれに答えていたが、私のガイドは徐々になくしていった。
それから、トランプのカードを使って同じようにやってみた。ゆうじがトランプのカードを1枚持ち、
私「ゆうじくんのカードはいくつですか」
あきひろ(ゆうじに)「いくつですか」
ゆうじ「3です」
それから、あきひろが私に「3です」と言い、ゆうじがトランプのカードをこちらに見せて、「大成功!」とみんなで喜んだ。
はっきりとは覚えていないのだが、「大成功」というのが、その頃のあきひろにとって嬉しいことだったのだと思う。この課題の頃から、お菓子をもらえることよりも、答えを当てることが楽しくなってきたようだった。
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