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さまざまな概念を教える(ある・ない、右・左)

保育所の子どもたちや、2歳下の次男がやっていることを見て、あきひろが出来ていないことを見つけ、教えたらできるようになりそうなことを課題にして取り組んでいった。健常児が、教えなくてもできるようになっていく細かいスキルに気づくことは、その視点を持たない大人にとっては難しいことだったが、そこは経験のあるT先生に指導していただいた。

<ある・ない>

タイヤのない車の絵を描いて、あきひろに見せると、「タイヤ、かくの」と私に要求してきた。欠けているということには、すぐに気づいた。そこで、「タイヤ、ないね」と言ってタイヤを描き、「タイヤ、あるね」と言う、ということを繰り返した。その頃、ノンタンの絵本を読んでやっていたので、ノンタンの顔を、目、鼻、口、ひげ、それぞれない絵を描き、「目、ないね」とあきひろに言わせてから描き、「目、あるね」と言うようにして、「ある」と「ない」を教えた。

自閉症の人は、普段と違うことに不安を感じる。それが、何かがない、ということであれば、「〇〇がない」と言えれば、周りの人に伝わり、探すなり、買ってくるなり、対応をしてもらえる。自分の言いたいことが伝わったという体験が、また次も伝えようという行動につながる。

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<右・左>

右手の爪に赤色、左手の爪に黄色で印をつけ、赤い方が右、黄色い方が左、と教えて、「右はどっち?」と聞かれた時に右手を挙げる、ということを、右左でランダムに何度も繰り返して、間違えずにできるまで続けた。

ところがそれは、右の手が「みぎて」、左の手が「ひだりて」と覚えただけで、他の物では右と左がわからなかったので、左右を理解しているのではないことがわかった。

そこで、2つの物で右と左を教えるのではなく、3つの物を使って、左、中、右を教えることにした。”中”があることで、左と右とがあることがわかりやすくなる。

すでに数字を学んでいたので、「左の1番」「まん中の2番」「右の3番」と、3つ並べたコップに名前をつけた。「左はどれ?」と聞いて、わからなければ、「1番だよ」と教えてやり、1番のコップを「左」と言って取る。段々に数字でのヒントをなくしていき、「左」「まん中」「右」と言われただけで正しくコップを選ぶことができるようになった。それから「まん中」をなくして、2つの物で右と左を答えられるようになった。

健常児でも右と左がわからなくて、教えてやることはあると思うが、右か左かがわからないのではなく、右と左があるということを教えるのは、なかなかに難しいことだった。

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