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完璧に違いが言える?二人の作曲家「プーランク」と「クープラン」の作品と時代


「プーランク」と「クープラン」。
この二人の作曲家は、名前が同じ文字から構成されているので、ついつい間違えて口走ってしまうこの二人。

本日は、二人の作曲家、「プーランク」と「クープラン」について、音楽史的背景とともにご紹介します

これでもう間違えないぞ!!


フランシス・プーランク (1899-1963)

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(Wikipedia: 「フランシス・プーランク」)

プーランクはフランスの作曲家です。
彼は小規模な作品を多く書きました。彼はパリの民衆的なシャンソンが持つ優美さと機知とに憧れており耳当たりの良い旋律と和声に風刺的な模倣を組み込んだ楽曲を作ったと言われております。

そして、プーランクは「フランス6人組」の一人です。
フランス6人組とは、1920年にパリで結成された、エリック・サティに感銘を受け、サティを精神的指導者とする団体です。音楽批評家アンリ・コレが『コメディア』誌に発表した1920年1月20日付の「ロシア5人組とフランス6人組」という批評記事が6人組命名の由来であると言われています。
メンバーは、ジョルジュ・オーリック、ルイ・デュレ、アルテュール・オネゲル、ダリウス・ミヨー、ジェルメーヌ・タイユフェール、そしてフランシス・プーランクの6人。

東京交響楽団の演奏会プログラム冊子「Symphony」より楽曲解説記事"Symphony Lounge"に、フランス6人組に関する面白い記事を発見!!
したたかな6人組の在り様を知れます。
こちらよりどうぞ。

フランス6人組のメンバーはそれぞれ異なる傾向の音楽を書きました。
その彼らの音楽の共通点としては、多調性(複数の調性が重ねられる手法)という新しい手法を組み込みつつも、バロック時代やルネサンス時代の過去の諸様式に基づき作曲を行ったことだと言われています。すなわち、当時の印象派に替わる新たな音楽を模索し、「新古典主義」的音楽を書いたことだとされております。


「新古典主義」とは、音楽においては20世紀前半に起こった運動で、より正確には、1918年の第1次世界大戦後に生まれた作品傾向とそれを目指す運動のことです。
戦前まで主流であった、ドイツのロマン主義的音楽(表現主義)や、フランスの印象主義的音楽の反動から生まれたと言われております。
この新古典主義の人々は、音楽史上新たな要素を組み込みながらも、古典派やもっと前のバロックやルネサンス期に用いられていた諸様式(例えば、楽曲形式や旋律の形などの、簡潔簡素で明朗な形式)を模倣した楽曲を作成しました。
フランス6人組の人々の作品に加え、ストラヴィンスキー《プルチネッラ》、ストラヴィンスキー《交響曲 ハ長調》、プロコフィエフ《古典交響曲》、シェーンベルク《ピアノ組曲 Op.25》、などが新古典主義的音楽だと言われております。


そんなプーランクの代表曲は、

●オペラ《ティレジアスの乳房》1940年
…人口減少期のフランスを皮肉った喜劇で、子供を持つ必要性や男女同権宣言を訴える内容。プーランクらしくユーモアたっぷりで、妻が男性に変化し夫が女性に変化するシーンも含まれる。
音楽もプーランクらしい機知に溢れている。

(オペラ《ティレジアスの乳房 "Les Mamelles de Tirésias"》より「いいえ、旦那様 "Non, monsieur mon mari"」)


●オペラ《カルメル派修道女の対話》1956年
…修道院を舞台に、そこで生きる修道女たちの日常と信仰に関する対話が展開される。最初はゆるゆるした内容だけど、次第に緊迫感を増して修道女たちの処刑シーンまで登場する(こわっ)。
修道院が舞台なだけあって、宗教的音楽も多く登場する。有名どころだと、「アヴェ・マリア」や「サルヴェ・レジーナ」などの聖歌が登場。

(オペラ《カルメル派修道女の対話》)


●チェンバロまたはピアノと小管弦楽のための《田園コンセール》1928年
…プーランクの協奏曲。チェンバロ奏者からの委嘱で作曲された曲。
ラモーやスカルラッティの音楽を彷彿とさせる、新古典主義的作品でありながら、プーランクらしい優美さと耳当たりの良い旋律が楽しめる一曲。




フランソワ・クープラン (1688-1733)

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(Wikipedia: 「フランソワ・クープラン」)

さてお次はクープラン。彼はバロック時代のフランスの作曲家です。
(バロック時代は1600年~1750年とされるので、プーランクとは全然時代が違いますね。)

クープランの功績と言えば何といっても、『クラヴサン奏法』(1716年)という音楽実践に関する理論書を書いたこと!
ご存知の方もいると思いますが、クラヴサンとはフランス語表記でチェンバロを意味します。

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(Wikipedia: 「チェンバロ」)

この理論書には、クラヴサン(チェンバロ)の指使いや装飾音の演奏の仕方について綿密に書かれており、18世紀の音楽実践を知るうえで最も重要なものの一つです。

各国語の「チェンバロ」
以下は全部同じ楽器を意味しています。各国で単語が異なるだけ。
 独 → チェンバロ Cembalo
 英 → ハープシコード Harpsichord
 仏 → クラヴサン Clavecin



そして、理論書が書けるくらいだから、クープランはクラブサンを熟知していたといえることもあり、クープランが作曲した《クラヴサン曲集 第1~4巻》は「クラヴサン曲のフランスの組曲」として最高峰とも言われております。

さて、先ほど「クラヴサン曲のフランスの組曲」と称したのは訳があります。当時、すなわち後期バロック音楽の時代、鍵盤楽曲(クラブサン/チェンバロ楽曲)の多くを占めていたのは組曲でした。当時の組曲は、自由な形式のフランスの組曲と、4つの舞曲を軸とした形式のドイツの組曲に分けられており、このフランスの組曲の代表的な作曲家の一人がクープランだったのです。この最高峰が先ほど紹介した《クラヴサン曲集》なのです。

(YouTube: ピティナピアノチャンネルより、クープラン《クラヴサン曲集第2巻》より6-1番「収穫をする人びと」)


クープランの作曲した組曲は、当時の組曲のが舞曲にもとづくものが多かったこともあり、舞曲のリズムにもとづくものが多いです。クープランの組曲の特徴としては、多くの装飾音で飾られた繊細な旋律と、旋律の簡潔さと諧謔性にあると言われています。またこの音楽が、摂政時代フランスの典型的音楽だとも言われております。

当時のフランスでは、リュリに代表されるフランス音楽コレッリに代表されるイタリア音楽のどちらの様式が価値があるのかについての論争がありました。
クープランは、「フランス音楽とイタリア音楽の結合が完全な音楽をもたらす」と考えており、この理念に沿った楽曲だと言われているのが《パルナッソス山、あるいはコレッリ讃》と《リュリ讃》です。

(Youtube: クープラン《リュリ讃 "Apothéose de Lully"》)



その他にも、室内楽曲(トリオ・ソナタなど)オルガン楽曲も作曲しました。

(YouTube: クープラン《トリオ・ソナタ ト短調「アストレ "L'Astrée"」》)


ラヴェル《クープランの墓》
さて、最後に少し脱線して、クープランと言えば、ラヴェル《クープランの墓》を想像する方もいらっしゃるのではないでしょうか?
ラヴェル《クープランの墓》は1917年に完成した、ラヴェルの最後のピアノ表題音楽です。当時のフランスは印象派の時代。そんな中でも、この曲は古典的な形式と古典的な終止形をもつ楽曲です。それは、ラヴェル自身が古典的な形式を特に好んでいたからだとも言われております。
さらに脱線しますが、ラヴェルの印象主義的な曲としてはピアノ曲《水の戯れ》や管弦楽組曲《スペイン狂詩曲》、そしてバレエ《ダフニスとクロエ》が挙げられますね。


最後に

いかがでしたでしょうか?

このように歴史的背景を紐解くと、全然違う色を持つ二人。今後はこの色をもとに、二人の区別が捗ることを願います。

(私自身、これでもう間違えないようになると思います!良かった!)


なお、トップ画像は、ラヴェル《クープランの墓》の初版楽譜の表紙、でした!(Wikipediaより)

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