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ユニクロのCM「ヒートテック-あったかいは力だ。」は爽やかでも、CMソングの中島みゆき《ファイト!》はダークだった!?

ユニクロのCM「ヒートテック-あったかいは力だ。」で流れている中島みゆき《ファイト!》
みなさんは、この曲の歌詞をご存知でしょうか?
今回の記事では、歌詞を読み、ちょいちょいと歌詞にまつわる情報を挟みながら歌詞とこの曲を使ったユニクロのCMについて考えてみます。


(この記事は文字だけの、サクッとした読み物です。)

ユニクロのCM

まずはユニクロのCMをご覧ください。


とても爽やかなCMですね。
頑張る人にスポットが当たり、それを応援するユニクロのCM

流れている曲は中島みゆき《ファイト!》のサビの部分で、歌詞はこれです。

ファイト!闘う君の唄を
闘わない奴らが笑うだろう
ファイト!冷たい水の中を
ふるえながらのぼってゆけ

頑張る人を応援する、頑張ろうって思う、素敵な歌詞ですね。


では、中島みゆき《ファイト!》の冒頭をすぐに思い出せる方はいらっしゃるでしょうか?


中島みゆき《ファイト!》の冒頭

《ファイト!》は、今から37年前、1983年にリリースされました。
(1983年3月5日にリリースされた、アルバム「予感」に収録されていた曲です。2021年1月現在から、37年前のことです)

youtubeよりこの曲を載せます。
ぜひ冒頭のみでも聴いてみてください。

(youtubeより)


…どうでした?胸にがつんと来るものがありませんか?
なんせ歌詞の冒頭は「あたし中卒やからね仕事をもらわれへんのや」ですから…。

あたし中卒やからね仕事を
もらわれへんのやと書いた
女の子の手紙の
文字はとがりながらふるえている

無情でつめたく、理不尽で辛い、そんな世の中が描かれている。
そんな世の中を、苦しみながら生きている、そんな人たちが描かれている。それを語るように歌う…。

胸に来るものがある曲ですね…。


脱線1: 中卒の人口ってどのくらい?

この部分を聴いて、ふと思い、調べてみました。

以下の参照元より、小学校・中学校の項目を中卒と考えると、
20代~40代 …約5-6%
50代    …約11%
60代    …約26%
70代    …約42%
80代    …約54%
全体    …約19%

参照元はこちら
国勢調査における就業状態等基本集計結果をまとめたサイト(こちらのサイト)より、2010年時点での年齢階層別、最終卒業学校の種類別人口比率
(悲しくも国勢調査自体の中のどこにこの情報があるのか見つけられなかったので…)。

これを見ると、中卒の方は、現在は、全世代平均で約2割ですが、
30年前に30歳以上の人たち、つまり60-80年代の平均は約4割ですね。

《ファイト!》がリリースされた時の中卒の人の割合は、過半数よりちょっと少ないくらいだったのでしょう。

中島みゆき《ファイト!》の続き

話を戻して、先ほどの続きを見てみましょう。

ガキのくせにと頬を打たれ
少年たちの眼が年をとる
悔しさを握りしめすぎた
こぶしの中爪が突き刺さる

この曲がリリースされた頃は、今現在よりも体罰が許容されていたはず…。
そのため、「体罰だから」「しつけの一環で」といった言い訳での理不尽な暴力がなかったとは言えないでしょう。


脱線2: 体罰への規制は《ファイト!》リリース後

端的に、2点だけお伝えします。いづれも、《ファイト!》のリリースの後の出来事です。

1990年、子どもへの体罰禁止が盛り込まれた、国連の子どもの権利条約が発効された。

2020年4月、親などによる体罰の禁止を盛り込んだ「改正児童虐待防止法」と「改正児童福祉法」が施行された。


中島みゆき《ファイト!》の続きの続き

さて、その続きの続きからサビまで見ていきましょう。

私 本当は目撃したんです
昨日電車の駅階段で
ころがり落ちた子供と
つきとばした女のうす笑い
私驚いてしまって
助けもせず叫びもしなかった
ただ怖くて逃げました
私の敵は私です

なかなかにダークな内容…。

私たちはもし犯罪に似た何らかの出来事を目撃したとき、助けたり報告したりできるのでしょうか…。
自身を振り返り、考えさせられます…。



さて、ここまでダークな内容が続きました。

学歴によって仕事をもらえなかったり、理不尽に殴られたり、怖い場面に遭遇して思わず逃げてしまって後悔したり…。

ここでようやくサビになります。
そう、闘う君を応援してくれるところです。

ファイト!闘う君の唄を
闘わない奴らが笑うだろう

ファイト!冷たい水の中を
ふるえながらのぼってゆけ

このサビの後半の「冷たい水の中を、ふるえながらのぼってゆけ」は、実は2番の歌詞とリンクしています。

2番の冒頭の歌詞はこうです。

暗い水の流れに打たれながら 魚たちのぼってゆく
光っているのは傷ついて はがれかけた鱗が揺れるから
いっそ水の流れに身を任せ 流れ落ちてしまえば楽なのにね
やせこけて そんなにやせこけて 魚たちのぼってゆく

ここではじめて、サビの「冷たい水の中をふるえながらのぼってゆけ」という様子がわかるわけです。
魚が、暗く冷たい水の中、その水の流れに逆らい身を削りながらも、懸命にのぼってゆくのを描いていたのだと。

(これ、めちゃめちゃ面白い構成ですよね。すでに流れたサビの内容2番でようやく分かるとは)


この2番を知った後には、この歌詞の力強いメッセージをさらに感じ取れることでしょう。


2番のこの先と3番、4番の歌詞についてはこの記事では扱いません(著作権もあるし…)。
ぜひ、《ファイト!》を聴いてみてください。

(youtubeより)


ユニクロのCMを考える

一度《ファイト!》を聴いたなら、もうこの曲は爽やかには聴こえないはず。

辛く悲しい現実、理不尽に耐えなければならない現実、弱い自分に打ちのめされる現実…。
3番や4番の歌詞からは、地域による(?)理不尽さや、性による理不尽なども盛り込まれています。

37年前にリリースされたこの曲、この歌詞。
今現在もなお存在する理不尽と、今だからこそある理不尽と、すべての逆境に立ち向かう人への応援ソング。

きっとユニクロはそのような想いをCMに込めていたのではないか、私はそう思います。
コロナにきっと多くの人が苦しめられているから。それはどうしようもなく、自分のせいでも誰かのせいでもなく、生じてしまった苦しみ。
苦しくても辛くても立ち向かう、そんな人たちを応援しているのだ、と。


最後に

私は、この曲から、立ち向かう勇気をもらいました。
すべてのことに立ち向かい、生きていく、そんな覚悟をもらいました。

また、今から30年前の曲の歌詞に、体罰や学歴、性差による理不尽が登場するのを見て、今現在はどこまで改善しているのだろうか、逆に新たに登場した理不尽は何なのか、ということを考えさせられました。
そしてまた、30年後、どんな世の中になっていたいか、どんな自分になっていたいか、そんなことにも思いをはせることができました。


みなさんは、この曲に何を想うのでしょうか?



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音楽系大学院生による調査とその発信。芸術家の生年関係から、クラシック音楽と文化を視る。Twitterも@catcatus (URL:https://twitter.com/catcatus)